1 不貞慰謝料の金額に影響する事情(算定要素)
2 婚姻期間の影響→大
3 不貞行為当時の円満の程度の影響→大
4 不貞行為の期間→中
5 不貞行為の態様の悪質さ→内容による
6 婚姻共同生活の破壊の程度→大
7 不貞配偶者への請求宥恕→小
8 不貞関係の終了→中
9 不貞相手の受けた社会的制裁→大
10 未成熟子の存在→小
11 一部の支払受領の影響→あり
12 時効消滅の影響→あり
13 資産・収入の影響→小
14 男女による違い→結果的にあり
15 不貞慰謝料を認めた裁判例(集約・参考)

1 不貞慰謝料の金額に影響する事情(算定要素)

不貞行為(不倫)をすると、他の配偶者は精神的苦痛を受けるので、慰謝料が発生します。
詳しくはこちら|不倫の慰謝料の理論(破綻後・既婚と知らないと責任なし・責任を制限する見解)
実際には、慰謝料の金額について対立することがとても多いです。
本記事では、どのような事情がどのように不貞慰謝料の金額に影響するのか、ということを説明します。東京地裁で、実際に不貞慰謝料を判断した裁判例1年分の分析結果が公表されていますので、これをベースにして説明します。

2 婚姻期間の影響→大

不貞慰謝料の金額に影響する事情はとても多いですが、代表的な事情(算定要素)は婚姻期間です。不貞行為が、夫婦の婚姻関係にダメージを与えますが、長期間継続している婚姻関係を破壊すると、(短期間の婚姻関係と比べて)ダメージが大きいといえます。そこで、婚姻期間は慰謝料の金額に大きく影響します。

婚姻期間の影響→大

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
婚姻から不貞行為発覚までの年数と認容額の関係をみると、婚姻時から不貞行為までの年数がおおむね20年以上の事例は12例あり、その平均認容は約158万円である。
これに対し、婚姻時から不貞行為までの年数がおおむね3年以下の事例は15個あり、その平均容額は約137万円である。
この限りでは、婚姻時から不貞行為時までの経過年数が長いほど認容額が高くなるという傾向が見られる。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p50

3 不貞行為当時の円満の程度の影響→大

ところで、(形式的には)不貞行為があっても、その当時、すでに夫婦関係は破綻していて、戸籍上だけの関係になっていた、という場合には、慰謝料は発生しません。
詳しくはこちら|不倫の慰謝料の理論(破綻後・既婚と知らないと責任なし・責任を制限する見解)
破綻していなければもちろん、慰謝料が発生するのですが、破綻に近い状態であれば(ゼロではないけれど)慰謝料は低めになります。破綻から遠い、つまり夫婦が円満であればダメージは大きいので慰謝料は高めになります。

不貞行為当時の円満の程度の影響→大

あ 円満の程度

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
不貞行為当時の円満の程度については、必ずしも明確に示されているわけではないので、主観的判断が多少入ることになるが、
不貞行為当時又は特に言及なく通常の夫婦関係と思われる事例を円満度3、
必ずしも円満でないものの、破綻が近いとか破綻しかかっているというわけではない中間的なものを円満度2、
危機に瀕しているとか破綻しかかっているなど破綻に傾いているものを円満度1として分類すると、
円満度3の事例は52例あり平均認容額は、160万円である。
これに対し、
円満度2の事例17例あり平均認容額は、139万円である。
最後に
円満度1の事例は3例のみであり、平均容額は、90万円である。
不貞行為以前の関係が円満であるほど、その侵害に対する的損害が大きくなることを考えると、当然のことであるが、それが裁判例にもかなり具体的に反映されているということができる。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p50

い 不貞以外の破綻要因

夫婦関係が破綻した(信頼関係が危機状態に至った)要因として、不貞行為以外の事情もある場合、慰謝料の金額は減額される方向性となる
※東京地判平成4年12月10日

4 不貞行為の期間→中

不貞行為が長期間継続している場合は、他方の配偶者(被害者)に与える心理的ダメージは大きくなる傾向があります。特に不貞の期間が10年以上になると慰謝料は大きくなります。逆に、数年単位の場合はそれほど影響しない、正確には、他の事情の影響に隠れてしまう、ということもあります。

不貞行為の期間→中

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
不貞期間が1年以下と考えられる事例が38件あるが、その平均認容額は149万円である。
次に、3年以上5年以下の事例は12件あり、その平均認容額は141万円である。
これに対し、10年以上の事例は6件あり、その平均額は188万円である。
不貞行為の期間が10年以上になると、かなりはっきりと損害額の大きさが見られるが、1年以下の事柄3年から5年の事例とを比較すると、むしろ、1年以下の方が平均認容額が高くなっている。
いずれにしてもサンプル数が少ないので、統計的な有意差が出せないのであるが、不貞期間が相当長くなると慰謝料額も増えるということは言えるであろう。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p50

5 不貞行為の態様の悪質さ→内容による

はっきりと数値化できない悪質さも慰謝料の金額に影響することがあります。
まず、不貞行為をした2人(配偶者と不貞相手)の関与の程度(積極性の差)が慰謝料の金額に影響します。仮に関与が同程度であった場合には、配偶者が重く、不貞相手が軽く判断される傾向があります。
不貞行為の結果、子供が生まれた、ということはショッキングですが、集計したデータ(裁判例)では、あまり影響がみられない結果となっています。
実際のケースでよくあるのが、不貞が発覚して修羅場となり、不貞をした者が他の配偶者(被害者)に謝り、もう関係をやめると約束した、しかしその後不貞を再開したという経緯です。当然、被害者としては繰り返し裏切られた状況になるので、精神的ダメージは大きくなります。慰謝料が大きくなる事情といえます。
これもよくあるのですが、妻が妊娠中や病気の療養中で、精神的にもサポートが必要な状況の中で、不貞行為をした、というケースです。当然、精神的ダメージは大きくなるので、慰謝料が大きくなります。

不貞行為の態様の悪質さ→内容による

あ 配偶者の責任との比較→減額方向

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
不貞行為における被告の役割が不貞をした配偶者と比較して、副次的、二次的と判断をしている事例が4例あるが、その平認容額は155万円である。
不貞行為の相手方を被告とする認客事例の平均認容が152万円であるから、特に金額が下がっているわけではない
わずか4例なので、何とも言えないが、おそらく明記されていない事例でも不貞をした配偶者よりも、不貞行為の相手方の責任は低いと考えられる事例は相当含まれており、むしろ、それを明記した事例が平均的であるとすると、多くの裁判例は、基本的に配偶者の責任よりも軽いと意識されているのかもしれない。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p50、51

い 不貞行為への関与の程度→大

不貞関係に至り、また、これを継続する経緯において主導的であった場合、慰謝料が増額される傾向にある
※東京地判平成4年12月10日ほか

う 子供出産の影響→小

不貞行為の相手方が不貞をした配偶者の子を出産している場合はどうであろうか。
もし離婚前に不貞をした配偶者が亡くなれば、遺産の一部、場合によっては半分をその不貞相手の子が取得するのであるから、経済的な意味でも利害があることになる。
そこで、判決の中で、不貞行為の相手方が子を出産したケースを取り上げてみると、全部で4例あり、平均認容213万円となる。
確かに高いが、内訳を見ると、100万円が1件、150万円が1件、300万円が2件であり、半分は標準又は標準以下の金額である。
したがって、子の出産の有無は必ずしも増額理由となっているわけではなさそうである。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p51

え 発覚後中止約束→大

悪質と評価されるものに、1度、不貞関係を止めると約束をしたのにもかかわらず、その後も不貞行為を継続しているケースがある。
このような場合、不貞をされた者として裏切られたという思いが起こり、精神的損害が増えると考えることができる。
該当する事例は3例あり、平均認容額は200万円となる。
これも100万円、200万円、300万円の各ケースであり、それのみでは一律に増額事由だとまでは言い切れない。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p51

え 被害者の要療養状態→大

悪質ではないが、原告が不貞行為のために精神的に特に打撃を受け、あるいは、がんなどに罹患をし、療養が必要な際に不貞行為がされたため、より多くの苦しみを感じているようなケースでは、事由とされてよいと考えられる。
そのようなケースは、7例あり、平均額は201万円である。
7例中5例が200万円であり、やはり原告の精神的損害の大きさが考慮されているということができる。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p51

6 婚姻共同生活の破壊の程度→大

不貞行為で慰謝料が発生するのは、婚姻関係を破壊する(ことで他方の配偶者に精神的ダメージを与える)というメカニズムがあるからです。
この点、悪質な不貞でも夫婦の絆が回復することもあれば、1回だけの不貞で離婚に至ることもあります。つまり、夫婦の共同生活の破壊の程度というのは、ある意味結果論ですが、原因が不貞であることは間違いないので、慰謝料の金額に影響します。離婚に至った方が慰謝料は高くなり、(夫婦が苦痛を乗り越えてた結果であっても)夫婦の関係が回復した場合は慰謝料は低くなる傾向があります。

婚姻共同生活の破壊の程度→大

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
当該不貞行為によって、どの程度の婚姻共同生活の破壊があったのかは、なかなか数量化しにくい部分であるが、離婚となり、あるいは、離婚訴訟中などで破綻が明らかなケースを3とし、相当な状態に戻っているケースを破壊度とし、その中間を破壊度2とすると、
破壊度1のケースは10例あり平均認容額は、97万円である。
破壊度2のケースは21例あり、平均認容は、130万円である。
破壊度3のケースは41例あり、平均認容は、171万円である。
大雑把に言えば、破壊度が低い場合は100万円程度、中程度の破壊度の場合130万円程度、離婚に至る程度に破壊をした場合は170万円程度が平均的な金額ということができる。
やはり、不貞行為による損害の最も大きなものは、共同生活の破壊・侵害であり、その破壊の程度に応じて慰謝料が増加するというのはごく自然なことであり、多くの裁判例は、全体としての金額の相当性は別として、破壊の程度に即した判断を行っているということができよう。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p51

7 不貞配偶者への請求宥恕→小

前述の、夫婦関係の破壊の程度、とも大きく関係しますが、破壊の程度が低いケース、つまり、離婚せず、夫婦関係が回復したというケースでは、被害者は不貞配偶者に対しては慰謝料を(請求できるのに)請求しないのが通常です。このように、不貞行為をした2人のうち片方への請求をしない、ということを、不貞行為を許したと読み取ることはできないでしょう。しかし、メインの責任があるべき者への請求をしないのであるから、サブの責任である不貞相手の責任を小さくする方向に働く、という考えもあります。

不貞配偶者への請求宥恕→小

婚姻関係破綻の危機により原告(被害者)が被った精神的苦痛に対しては、第一次的には配偶者相互間においてその回復が図られるべきであり、この意味でまずA(不貞配偶者)がその責に任ずるべきところ、原告(被害者)はこの点についてA(不貞配偶者)に対する請求を宥恕しているものと認められる・・・(慰謝料の金額を減額する事情とした)
※東京地判平成4年12月10日

8 不貞関係の終了→中

不貞行為が発覚した後にもなお不貞の関係を続けるケースもありますが、それと比べると、不貞の関係を終了させた、という方が慰謝料は小さくなる傾向にあります。特に、不貞相手が積極的に関係を断った、という事情があればその傾向は強くなります。

不貞関係の終了→中

あ 不貞を終了させる目的の達成

原告(被害者)が本件訴訟を提起した主たる目的は被告(不貞相手)とA(不貞配偶者)との不倫関係を解消させることにあったところ、本件訴訟提起の結果被告(不貞相手)とA(不貞配偶者)との関係は解消され、この点についての原告(被害者)の意図は奏功したものと認められる・・・(慰謝料の金額を減額する事情とした)
※東京地判平成4年12月10日

い 不貞関係終了の要因(関与の程度)

被告(不貞相手)とA(不貞配偶者)との関係解消は、A(不貞配偶者)の反省によるというよりも、むしろ被告(不貞相手)の主体的な行動により実現されたものであって、被告(不貞相手)が勤務先を退職して岩手県の実家に帰ったことによって最終的な関係解消が達成された・・・(慰謝料の金額を減額する事情とした)
※東京地判平成4年12月10日

9 不貞相手の受けた社会的制裁→大

実際には、不貞が発覚したことでいろいろな影響が生じることがあります。たとえば、よくある職場の関係者の不貞では、一方または両方が会社を辞める結果となることもあります。不貞相手が退職し、かつ、近隣で転職することもあきらめ、地方の実家に戻った、というケースでは、慰謝料を減額する事情として考慮されました。

不貞相手の受けた社会的制裁→大

被告自身も一郎との不倫関係については相応に悩んでいたものであって、一郎との関係解消に当たって、勤務先を退職し、意図していた東京における転職も断念して岩手県の実家に帰ったことで、相応の社会的制裁を受けていること・・・(慰謝料の金額を減額する事情とした)
※東京地判平成4年12月10日

10 未成熟子の存在→小

夫婦の間に養育中の子供がいる場合には、いない場合と比べて、不貞行為によるショックは大きいように思えます。しかし、実務では、慰謝料の金額に違いが出ない、という傾向があります。
これに関連して、子供自身から不貞相手に対する慰謝料請求を認めるべきだ、という考えもありますが、判例は原則的に否定しています。このような状況について、「子供の権利や利益を軽視(無視)している」という批判もあります。

未成熟子の存在→小

あ 裁判例の実情

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
未成熟子がいる事例は、34例あり、その平均容額は153万円である。
これに対し、未成熟子がいない事例は、38件あり、その平均認容額は150万円であり、わずかながら未成熟子がいる事例の方が認額が大きいが、むしろ、ほとんど変わらないと言った方がよいであろう。
判決文の中では、考慮要素として未成熟子がいることを挙げている例が一定数見られるが、実際のところでは、大きなファクターとしては考慮されていないのではないかと思われる。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p51

い 未成熟子からの慰謝料請求(参考)

不貞行為によって、未成熟子自身の生活(利益)が被害を受けたと考えられる
しかし、未成熟子からの慰謝料請求は、原則として否定されている
詳しくはこちら|未成年の子供から不貞(不倫)相手への慰謝料請求

11 一部の支払受領の影響→あり

ところで、不貞行為をした者は2人いるので、被害者は両方に慰謝料を請求できます。たとえば、最初に配偶者に請求し、配偶者が慰謝料を支払った後に、不貞相手への請求をした場合、既に被害者が配偶者から受領した慰謝料額は、差し引くことになります。

一部の支払受領の影響→あり

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
慰謝料額について、一部支払を受けていると評価できる場合、相当とされる慰謝料額からその金額を控除することになる。
相手方のみを被告とする場合、既に配偶者との間で離婚が成立していれば、通常、慰謝料の支払を受けており、不真正連帯債務であるとすると重複する問題が生じるので、相当数の事例が控除対象になるのではないかと推測されたのだが、実際には、調査した2例中、控除が問題となった事例は2件のみであり、実際に控除した金額を認容したのは1個のみであった。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p51

12 時効消滅の影響→あり

不貞慰謝料の消滅時効は(被害者が)不貞行為を知った時から3年で完成します。時効の援用があると慰謝料は消滅します。ただし、消滅するのは、知ってから3年経過した部分です。つまり、知ってから3年が経過しても、直近の3年間部分(の不貞行為)については慰謝料を請求できることになっています。
たとえば6年間の不貞行為のうち古い方の3年分が時効で消滅してしまい、直近3年分だけを請求できる、というケースでは、本来の慰謝料額の半額だけが認められる、ということになります(単純計算)。

時効消滅の影響→あり

あ 不貞行為慰謝料の消滅時効(前提)

不貞行為慰謝料は、被害者が不貞行為を知った時から3年間で消滅時効が完成する
消滅するのは、請求時から3年前よりも前の期間に行われた不貞行為(だけ)である
請求時から過去に3年間分だけのゾーンが請求できる
詳しくはこちら|不貞により発生する2種類の慰謝料(不貞慰謝料と離婚慰謝料)・消滅時効の違い

い 裁判例の実情

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
不貞行為の相手方に対する慰謝料請求事例72例のうち、消滅時効が問題となったのは2件である。
1件は、不貞行為を確実に知った時から3年以内に権利を行使しているから時効消滅しないとしたもの、もう1件は不貞行為を知ってから3年以上経過した不貞行為部分については一部時効により消滅するとした事例である。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p52

13 資産・収入の影響→小

不貞行為をした者の資産や収入が大きい場合は、その者が支払う慰謝料は大きくなるでしょうか。不貞慰謝料に関してはこのようなことは影響しない方向性です。
ただし、夫婦間の慰謝料では、加害者の資産や収入が影響することもあります。特に、離婚に至った場合(この場合は離婚慰謝料)には、加害者の収入が大きいと、慰謝料も相場を大きく離れて1000万円に達する、という実例もあるくらいです。不貞慰謝料ではそこまで大きく影響しないと考えられます。

資産・収入の影響→小

あ 裁判例の実情

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
不貞行為をした配偶者と不貞行為の相手方の双方を被告とした事例でも、それぞれ別々に被告とした事例でも、慰謝料額の算定において、その資産・収入について、これを慰謝料額算定の理由として明記したものはなく、また、判決文中で認定された事実の中にもほとんど出てこない。
不貞行為の相手方の資産・収入がたまたま大きかったとしても、それは慰謝料増額の理由にはならないのは当然のことだが、
配偶者の資産・収入が大きい場合には、通常の慰謝料額では精神的な損害は十分に回復されないであろうと予測される。
ただ、今回の調査事例では、配偶者のみを被告とした事例は5つしかなく、いずれも特に高収入・高資産をうかがわせる記載もなく、これを増額事由とすべき主張もされていないので、触れられていないものと思われる。
実際、高額の収入のある配偶者の場合には、その精神的損害を慰謝するに足りる金額もある程度高額にならざるを得ないように思われる。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p52

い 離婚慰謝料における資産・収入の影響(参考)

夫婦間の離婚慰謝料(離婚に至ったことによる精神的苦痛の賠償)においては、加害者(有責配偶者)の資産・収入が慰謝料の金額に影響を与える
詳しくはこちら|離婚の慰謝料相場は200〜500万円、事情によってはもっと高額化

14 男女による違い→結果的にあり

被告が男性か女性かによって、慰謝料の金額の傾向が違う、という指摘があります。しかしその理由は、男性が不貞行為に主導的であるケースが多い、かつ、男性の方が資力が大きいことが多い、ということが反映された結果だと思われます。単に性別で違いがある(差別している)わけではないはずです。

男女による違い→結果的にあり

被告が男性である場合の方が、女性である場合よりも慰謝料額が高い傾向があるのは、これまでは男性の方が主導的役割を果たしている場合が多く、男性の方が一般に資力があり、相手方が女性の場合には、非婚で子をもうけて生活に困窮している場合もある、などの事情による。
※二宮周平ほか著『離婚判例ガイド 第3版』有斐閣2015年p164、165

15 不貞慰謝料を認めた裁判例(集約・参考)

以上のように、不貞慰謝料の金額は、多くの細かい事情が影響します。実際に裁判所が慰謝料の金額を定めた多くの判例を別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|不倫(不貞)の慰謝料として50〜500万円を認めた裁判例

本記事では、不貞慰謝料の金額に影響を与える事情を説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に不貞(不倫)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。