1 未成年の子供から不貞(不倫)相手への慰謝料請求
2 未成年の子から不貞相手への慰謝料請求の発想
3 未成年の子から不貞相手への慰謝料請求の可否
4 家庭の崩壊に不法行為を持ち込むことの妥当性
5 不貞慰謝料請求における子供の存在の影響(概要)

1 未成年の子供から不貞(不倫)相手への慰謝料請求

不貞行為(不倫)が発覚した場合、通常は、配偶者を寝取られた者が被害者として慰謝料を請求します。
詳しくはこちら|不倫の慰謝料の理論(破綻後・既婚と知らないと責任なし・責任を制限する見解)
ところで、不貞行為によってダメージを受けるのは夫または妻だけではありません。両親(夫婦)に育てられている子供もダメージを受けます。
本記事では、未成年の子供から不貞相手に対する慰謝料請求について説明します。

2 未成年の子から不貞相手への慰謝料請求の発想

前述のように、不貞行為が発覚すると、夫婦間の関係が壊れ、その結果、育てられている子供(未成年の子・未成熟子)にも悪影響が及びます。たとえばが、父以外の男性(不貞相手)と不貞行為をした場合、子供としては、母の愛情を奪われたような状況になります。そこで、子供から不貞相手に対する慰謝料請求を認めるべき、という発想も出てきます。

未成年の子から不貞相手への慰謝料請求の発想

あ 事案

妻と婚外男性が不貞を行った
妻と婚外男性は同棲するに至った

い 子供からの慰謝料請求(主張)

不貞行為により、未成年の子が円満な家庭・環境を奪われた
具体的には、日常生活において母親から愛情を注がれることや、母親の監護・教育を受けることが不十分となった
→精神的苦痛を受けた
→婚外男性に対して慰謝料を請求する

3 未成年の子から不貞相手への慰謝料請求の可否

前述の発想のとおりに慰謝料請求が認められるかというと、そう簡単ではありません。最高裁は、原則として否定します。簡単にいえば、母から子供への愛情が少なくなったとしても、それは母の判断が原因であって、不貞相手の行為は間接的に影響したにすぎない、という考え方です。
逆に、不貞相手が子供を含む家庭を壊す目的で積極的に母が子供の世話をすることを阻止したというような事情がある場合には、間接的ではなく直接的な影響を与えます。このような特殊事情があれば、例外的に子供から不貞相手への慰謝料請求は認められることになります。

未成年の子から不貞相手への慰謝料請求の可否

しかし、夫及び未成年の子のある女性と肉体関係を持つた男性が夫や子のもとを去つた右女性と同棲するに至つた結果、その子が日常生活において母親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなつたとしても、その男性が害意をもつて母親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右男性の行為は、未成年の子に対して不法行為を構成するものではない。
けだし、母親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の男性と同棲するかどうかにかかわりなく、母親自らの意思によつて行うことができるのであるから、他の男性との同棲の結果、未成年の子が事実上母親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被つたとしても、そのことと右男性の行為との間には相当因果関係がないものといわなければならない・・・
※最判昭和54年3月30日・1267事件
※最判昭和54年3月30日・328事件(男女が逆)

4 家庭の崩壊に不法行為を持ち込むことの妥当性

以上で紹介した最高裁の判断は、唯一の正解というわけではありません。つまり、家族・家庭とはどうあるべきか、という価値観によって判断が大きく変わってくるテーマです。理屈では、家庭の問題に不法行為(慰謝料)を持ち込むのはおかしいともいえる一方で、慰謝料は一切発生しない、ということを納得できない感情もあります。そこで、最高裁が出した、原則否定、例外的事情があれば肯定、という結論は理屈と感情の妥協点である、という指摘もなされています。

家庭の崩壊に不法行為を持ち込むことの妥当性

あ 不法行為を否定する理論(前提)

(「親が自由意思で婚姻共同生活を棄てた場合に、その動機を不貞行為が与えていたとしても、それはあくまでも親子の間の問題であって、親の行動によって子が事実上不利益を受けたというにとどまり、子が不貞行為の相手方に慰謝料請求権を持つとすべきではない」という見解について)
その背後には、家庭の崩壊という問題の中に不法行為法を持ち込むこと自体に対する否定的評価があり、子の不利益を最小限におさえるためには、不法行為法ではなく、扶養料の取り決めや離婚に際しての子の利益の保護などをむしろ重視すべきだという。

い 不法行為を肯定する感情

説得的な議論だと思うが、他方で、裏切られた配偶者が不法行為訴訟にこだわる心理も理解できないものではない。
そこには合理的な理屈を超えた不法行為法の存在理由を見ることができるかもしれない。
そのような意味で、最高裁のとった結論(最判昭和54年3月30日(2事件))は、理屈と感情の妥協点ともいえそうである。
※内田貴著『民法Ⅳ 補訂版』東京大学出版会2004年p25

5 不貞慰謝料請求における子供の存在の影響(概要)

以上のように、子供からの慰謝料請求は否定される傾向が強いですが、夫または母(被害者となった配偶者)から不貞相手に対する慰謝料請求は認められます。
このような通常の不貞慰謝料の請求で、未成年の子供(未成熟子)がいる方がダメージが大きいので、慰謝料が大きくなるという発想がありますが、裁判の実情としては、あまり影響しない傾向があります。
詳しくはこちら|不貞慰謝料の金額に影響する事情(算定要素)
もちろん、個別的な事情によって、また、主張・立証のやり方次第で判断は違ってきます。未成年の子供の存在が慰謝料の金額に影響することもあり得ます。

本記事では、不貞行為(不倫)があった場合に、子供がダメージを受けたことの賠償として慰謝料請求ができるか、という問題について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に不貞行為に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。