1 離婚慰謝料の相場
2 離婚原因と慰謝料の関係(参考)
3 夫・妻の有責性のバランス
4 離婚慰謝料の金額の算定要素
5 離婚慰謝料の相場は200〜500万円
6 和解・協議離婚における慰謝料の扱い(名目)
7 離婚に伴う高額の「和解金」の内容(参考)
8 離婚慰謝料の高額になる事情
9 高額の離婚慰謝料を定めた裁判例(不貞)
10 高額の離婚慰謝料を定めた裁判例(不貞以外)
11 離婚の慰謝料を目的としたローン(参考)
12 不貞相手の不貞慰謝料(参考)

1 離婚慰謝料の相場

協議離婚でも、裁判による離婚でも、離婚するに至った場合に必ず慰謝料(損害賠償責任)が発生するわけではありません。夫婦の一方に違法性のある行為(有責行為)があった場合だけです。有責行為の典型は、不貞行為(不倫・浮気)や暴力(DV)です。
夫婦の一方の有責行為で離婚に至ったケースでは、慰謝料の金額が問題となります。本記事では、夫婦の間の慰謝料の金額の相場を説明します。

2 離婚原因と慰謝料の関係(参考)

ところで、裁判上の離婚(離婚訴訟)では、離婚原因があるかどうかが審理されます。離婚原因を簡単にいうと、破綻の要因であり、代表的なものは不貞行為と暴力です。
詳しくはこちら|離婚原因の意味・法的位置付け
離婚慰謝料が発生する状況(要件)とほぼ同じといえます。

3 夫・妻の有責性のバランス

夫婦の仲が悪くなって離婚するに至ったケースでは、いずれか一方に全面的に責任があるケースもありますし、両方に責任があるというケースもあります。
夫・妻の両方に離婚の要因があるケースでは、慰謝料を打ち消し合うことになります。
過失相殺という考え方です(民法722条2項)。
たとえば、夫・妻の不当な行為が同等という場合は慰謝料はゼロということになります。

4 離婚慰謝料の金額の算定要素

離婚慰謝料の金額が決まる事情(要素)はとても多いです。
まず、どうして離婚に至ってしまったのかということが重要です。直接的な原因がどの程度悪質なのか、という視点です。不貞行為や暴力が長期間続いていると慰謝料は高くなります。加害者(有責者)の資産や収入が大きいほど、慰謝料は高くなる傾向があります。まだ養育中の子供がいるケースでは離婚による影響が大きいことから、慰謝料が高くなる傾向があります。これら以外にも細かい事情が慰謝料の金額に影響します。

離婚慰謝料の金額の算定要素

あ 離婚の要因の違法性、不当性の程度
い 違法、不当な行為のバランス
う 婚姻期間

長い場合は、高額となる傾向がある

え 資産、収入の状況

加害者の資産、収入が大きいと、慰謝料も高額となる傾向がある

お 年齢

年齢が高いと慰謝料が高額となる傾向がある

か 職業

社会的地位がある、収入が高い職種だと慰謝料が高額となる傾向がある

き 養育が必要な子供の数

未成熟子が多い場合、慰謝料が高額となる傾向がある

5 離婚慰謝料の相場は200〜500万円

以上のように、離婚慰謝料の金額は、個別的な事情によって大きく違ってきますが、平均的、統計的には200〜500万円のゾーンが多いです。これは、夫婦の一方だけが有責という前提です。
両方の有責性が同程度であれば、慰謝料はゼロになります。
また、一方だけに有責性があり、その有責行為が悪質であれば500万円に達することも少なくありません。

離婚慰謝料の相場

(離婚慰謝料について)
その場合の慰謝料額は、これまでの判例の動向からして、通常の場合は100万円から300万円くらい、大体200万円前後の金額で合意に達することが多いようです。
もちろん、ケースの多様性に応じて0円から500万円くらいまでの範囲のバラツキがあります。
※梶村太市著『離婚調停ガイドブック 第4版 』日本加除出版2013年p224

6 和解・協議離婚における慰謝料の扱い(名目)

裁判所の判決であれば、慰謝料の金額がはっきりと示されます。しかし、裁判所を通さないで協議離婚が成立した場合や、裁判所で和解や調停が成立したという場合には、「慰謝料」の金額を明示しないことが多いです。意図的に明示することもありますが、そのようなケースは少ないです。
慰謝料の金額を明示せずに、他の清算(財産分与)と合算で金額を定める、ということも多いです。この場合には、結果的に「慰謝料の金額」は分からないままとなります。

和解・協議離婚における慰謝料の扱い(名目)

あ 慰謝料の内容・金額を明示しない方法

離婚調停においては、財産分与の中に慰謝料を含めて総額でいくらと定めているのが多く、その場合には調停条項において、「包括的な財産分与として」とか「財産分与(慰謝料を含む)」などとして、支払額の法的性質を表現しているのが通常だと思われます。
この方法は、慰謝料という表現だと、どうしても相手方の有責行為を追及するという意味合いが出てくるために、そのような側面をできるだけ弱めたいと考えるときなどに用いられます。
丁度、慰謝料ということばの代わりに「解決金」「和解金」「調停金」などと表現するのと同様の手法です。

い 慰謝料の内容・金額を明記する方法

これに対して、ケースの中には、むしろ相手の不貞行為の事実を明確に表現して慰謝料として支払ってほしいと主張されることも多く、この際、後日の紛争再燃を防ぐためにもそのほうが妥当と判断したときは、双方が合意するかぎり、たとえば「相手方が何某と不貞行為をしたことに基づく慰謝料として」とか「相手方が度重なる暴力により申立人に傷害を負わせたことによる慰謝料として」などと表現することもあります。
※梶村太市著『離婚調停ガイドブック 第4版 』日本加除出版2013年p224

7 離婚に伴う高額の「和解金」の内容(参考)

実際には、離婚に伴って、「和解金」や「解決金」として数千万円を支払うケースもあります。この場合、「和解金」の実質的な中身は、将来の生活費がほとんどです。扶養的財産分与と呼ばれるものや、離婚を認める対価として、交渉の駆け引きで設定される金額です。これらについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|離婚後の生活費の支払(保障)が認められることもある(扶養的財産分与)
詳しくはこちら|収入大→離婚時の清算が大きくなる;婚費地獄,結婚債権評価額算定式
なお、有名人の離婚のケースでは、「慰謝料1億円を支払った」というような報道がなされることがありますが、これは法的な「慰謝料」ではなく、財産分与や将来の婚姻費用相当額(離婚に応じる対価)のことです。一般の方に馴染みのある「慰謝料」という用語を使っただけで、法的に正確な用法ではありません。

8 離婚慰謝料の高額になる事情

前述の、離婚慰謝料の相場は、あくまでも平均的、統計的な金額です。個別的な事情によっては、これよりも大きい金額となることもあります。
どのような事情があると一般的な相場よりも高額になるかということを整理します。
まず、婚姻期間が20年を超えている、不貞行為が長期間続いていた、不貞行為が悪質であった、有責者の資産や収入が大きい、被害者が高齢、というような事情です。これらの事情が重なったことにより、慰謝料の金額が1000万円を超えたという実例もあります(後述)。

離婚慰謝料の高額になる事情

あ 婚姻期間が長い

婚姻期間が20年を超えるケースでは、婚姻期間が数年程度のケースよりも慰謝料が高くなる傾向がある

い 不貞行為の期間・悪質性

(不貞行為により破綻した場合)次のような事情があると慰謝料が高くなる傾向がある
・不貞行為が長い
・不貞相手との同居していた
・不貞相手との間に子供が誕生した
・不貞をやめると約束した後に不貞行為を継続した
・被害者の療養が必要な時期に不貞行為があった
・夫婦の間にまだ養育中の子供がいる(未成熟子)

う (有責者の)資産・収入

有責行為をした者(加害者)の資産や収入が多いと慰謝料が高くなる傾向がある

え 被害者が高齢

被害者が高齢だと、離婚後の生活費の確保が不十分となることがある
これを保護するため、離婚の際、有責者が支払う金額が大きくなる傾向がある
ただし、法的には慰謝料ではなく、扶養的財産分与である

9 高額の離婚慰謝料を定めた裁判例(不貞)

実際に、前述の、離婚慰謝料の相場から比べて高い慰謝料の金額を裁判所が定めた実例を紹介します。まずは、不貞行為によって離婚に至ったというケースについての裁判例をまとめました。
個々の事案で、多くの個別的事情が反映されています。ここでは要点だけを示します。実際に1500万円や1200万円という金額が慰謝料として決められることもある、ということが分かると思います。

高額の離婚慰謝料を定めた裁判例(不貞)

あ 1500万円認容・平成元年東京高判

妻が夫に慰謝料を請求した(以下すべて同じ)
婚姻期間48年
夫婦間に子供なし
夫=複数の会社経営
夫は妻以外の女性と交際→同居36年→子供2人出産→認知済
慰謝料の認容額=1500万円
※東京高判平成元年11月22日

い 1200万円認容・昭和58年大阪地判

婚姻期間2年
妻=専業主婦
夫=医師
慰謝料の認容額=1200万円
※大阪地判昭和58年11月21日

う 1000万円認容・昭和63年東京高判

婚姻期間55年
妻=専業主婦
別居期間=17年
夫=会社経営者(社長)
夫は妻以外の女性と交際→同居17年→子供出産→認知済
慰謝料の認容額=1000万円
※東京高判昭和63年6月7日

え 500万円認容・昭和52年東京高判

婚姻期間5年
夫・妻=音楽家
慰謝料の認容額=500万円
※東京高判昭和52年2月28日

お 500万円・昭和55年東京地判

婚姻期間40年
妻=美容院経営
夫=金属製造業
慰謝料の認容額=500万円
※東京地判昭和55年11月21日

10 高額の離婚慰謝料を定めた裁判例(不貞以外)

不貞行為だけで離婚に至ったわけではなく、暴力など、他の事情が(も)離婚の要因となっていたケースについての裁判例を紹介します。慰謝料が2000万円を超えたものもありますが、500万円と定められたものも多いです。

高額の離婚慰謝料を定めた裁判例(不貞以外)

あ 2063万円・平成12年大阪高判

妻が夫に慰謝料を請求した(以下すべて同じ)
婚姻期間24年
妻=専業主婦
夫=会社員
慰謝料の認容額=2063万円
※大阪高判平成12年3月8日

い 500万円(請求額満額)・昭和60年浦和地判

婚姻期間6年
妻=専業主婦
夫=会社員
慰謝料の認容額=500万円(請求額満額)
※浦和地判昭和60年9月10日

う 500万円(請求額満額)・昭和62年宇都宮地真岡支判

婚姻期間10年
妻=専業主婦
夫=会社員
慰謝料の認容額=500万円(請求額満額)
※宇都宮地真岡支判昭和62年5月25日

え 慰謝料500万円・昭和54年東京高判

婚姻期間6か月
妻=公社勤務
夫=会社員
不貞行為の疑いといやがらせ
慰謝料の認容額=500万円
※東京高判昭和54年1月29日

お 500万円・昭和59年大阪地判

妻=専業主婦
夫=会社員
慰謝料の認容額=500万円
※大阪地判昭和59年3月29日

か 500万円・昭和60年東京地判

婚姻期間15年
妻=専業主婦
夫=(元)会社員
慰謝料の認容額=500万円
※東京地判昭和60年3月19日

き 500万円・平成2年京都地判

婚姻期間2か月
妻=専業主婦
夫=会社員
夫は性交渉の意欲を欠いていた
慰謝料の認容額=500万円
※京都地判平成2年6月14日

く 300万円・平成16年東京地判

妻はフランス人、夫は日本人であった
フランスに移住後、長男が生まれたが、夫の暴力で妻が傷害を受けた
妻は子とともに日本に帰国した
日本の裁判所に国際裁判管轄が認められた
慰謝料の認容額=300万円
※東京地判平成16年1月30日

11 離婚の慰謝料を目的としたローン(参考)

ところで、離婚の際の金銭の清算をサポートする、銀行のローンがあります。
外部サイト|大垣共立銀行|離婚関連専用ローン・ライフプラン”Re”
支払う側が使う金融商品(ローン)ですが、支払ってもらう側が、相手(加害者)にこのローンを活用することを推奨する(すぐに支払ってくれるよう要請する)、という状況もあり得ます。

12 不貞相手の不貞慰謝料(参考)

以上で説明したのは、夫婦の一方の有責行為により離婚に至った、という状況で、夫婦間で請求する慰謝料の金額です。
この点、たとえば夫と(妻以外の)女性の不貞行為が原因で離婚に至った場合、妻は(夫だけではなく)不貞相手(女性)に対して慰謝料を請求することもできます。この不貞慰謝料の金額の相場は、本記事で説明した離婚慰謝料よりも低めになっています。
詳しくはこちら|不貞相手の不貞慰謝料の相場(200〜300万円)

本記事では、夫婦間の離婚慰謝料の金額の相場について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に離婚や不貞(不倫)など、夫婦の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。