1 仮想通貨交換業者の登録申請の手続の流れ
2 金融庁仮想通貨モニタリングチームへの連絡(第1段階)
3 事前面談に必要な書類・資料を揃える(第2段階)
4 登録申請書への記入
5 審査事項のチェックリストの作成
6 作成する主な社内規則・マニュアルの種類
7 仮想通貨の該当性・適切性についての説明
8 財産的基礎についての説明
9 金銭・仮想通貨の分別管理についての説明
10 苦情処理・紛争解決の対処についての説明
11 金融庁担当者との事前面談(第3段階)
12 ドラフト書面の事前審査(第4段階)
13 正式な登録申請書の提出(第5段階)

1 仮想通貨交換業者の登録申請の手続の流れ

日本で仮想通貨の交換所サービスを提供するには,仮想通貨交換業者登録が必要です。
詳しくはこちら|仮想通貨交換所の規制(平成28年改正資金決済法)の全体像
また,ICOで新たなトークンを発行するために仮想通貨交換業者登録が必要となることもあります。
詳しくはこちら|ICO(新たな仮想通貨の発行)への資金決済法の仮想通貨交換業の規制
当事務所では,FinTech企業などの多くの事業者から仮想通貨交換業者登録に関する問い合わせやご依頼を受けております。
仮想通貨交換業者の登録手続の流れは,平成29年4月の改正資金決済法の施行の後から高頻度で変わってきています。
登録申請手続全体の平均的(標準的)な処理期間も,以前は半年程度でした。
詳しくはこちら|仮想通貨交換業者登録の申請件数や所要期間の実情(平成29年9月)
その後,特に本申請以前の事前の審査がしっかりなされるようになり,全体の処理期間は平均的に1年程度になっています。
本記事では,平成30年4月現在の手続の流れを説明します。

2 金融庁仮想通貨モニタリングチームへの連絡(第1段階)

最初に,財務局(金融庁)の担当部署に連絡します。そうすると,仮想通貨交換業者登録の手続の最初の段階として行うことを指摘されます。そして,チェックリストが交付されます(後記)。
なお,関東エリア以外では財務局の一定の部署が窓口となります。

<金融庁仮想通貨モニタリングチームへの連絡(第1段階)>

あ 登録に関する事前相談

仮想通貨交換業者登録を予定・検討していることについて
→事業者の所在地を管轄する財務局の窓口に連絡する

い 関東エリアを管轄する窓口

東京都その他近県の所在する事業者について
(関東財務局)金融庁監督局総務課 仮想通貨モニタリングチーム

3 事前面談に必要な書類・資料を揃える(第2段階)

前記の最初の金融庁への連絡の後は,金融庁の担当者との事前面談のために必要な書類を揃える作業を行います。
当初は事前面談のために必要な書類はとても少なかったのですが,現在では多くの書面・資料(情報)が必要となっています。これは,金融庁で登録申請の審査(処理)件数が増えるとともに,審査のノウハウができてきたので,重要項目の審査を前倒しして,本審査を効率化するというものです。

4 登録申請書への記入

事前面談に必要な書類の中の代表的なものは登録申請書そのものです。これは,フォーマットも含めて内閣府令で作られています。いろいろな記載項目がありますが,その中でも重要なものは後述します。

<登録申請書への記入>

あ 申請書・添付書類のひな形

内閣府令の中でひな形が示されている
外部サイト|金融庁|仮想通貨交換業者に関する内閣府令(p44〜)

い 申請書の記載項目(概要)

ア 仮想通貨交換業の業務運営態勢
イ 犯罪収益移転防止法の規制の遵守体制
取引時の本人確認・疑わしい取引の届出を行うための態勢
疑わしい取引の検出基準
詳しくはこちら|犯罪収益移転防止法による仮想通貨交換業者の取引時確認(本人確認)
詳しくはこちら|仮想通貨交換業者のマネーロンダリング対策義務(盗難コインチェック義務)
ウ 障害時対応
システム障害やサイバーセキュリティ事案への対応
エ 内部管理体制
詳しくはこちら|仮想通貨交換業者の体制の整備の登録審査と業務監督の着眼点

う 金融庁のガイドラインの参照

申請書の作成の際は,金融庁のガイドラインが参考になる
詳しくはこちら|仮想通貨交換所の規制(平成28年改正資金決済法)の全体像

5 審査事項のチェックリストの作成

金融庁の登録申請の実務の中で作られたチェックリストがあります。登録申請書の項目よりも細かい166項目がエクセルの表としてまとめてあります。
チェックリストの中には,説明の文章を記載するものが多いですが,記載とは別に社内規則やマニュアルを作る項目も20以上あります。

<審査事項のチェックリストの作成>

あ チェックリストの交付

仮想通貨交換業者登録申請の予定者に対して
金融庁がエクセルの表によるチェックリストを交付している

い リストの内容

166項目が示されている
基本的に申請書・添付書類の記載事項を詳しくした内容である
その中には社内規則・マニュアル(を作ること)も含まれている(後記※1)
(作るべき)社内規則は金融庁のガイドラインで示されている

6 作成する主な社内規則・マニュアルの種類

事前面談のために必要な書類の中に20種類以上の社内規則やマニュアルがあります。これらは金融庁のガイドラインで作成が要求されているものです。
当然,後の審査ではガイドラインに沿っているかどうかを確認されます。作成にあたってはガイドラインが役立ちます。

<作成する主な社内規則・マニュアルの種類(※1)>

社内規則・マニュアルの種類 ガイドラインの項目
倫理規程,コンプライアンス・マニュアル II-2−1−1
取引時確認の措置マニュアル II-2-1-2-2(1)
疑わしい顧客や取引の検出・監視・分析のマニュアル II-2-1-2-2(2)
利用者保護措置の規則 II−2−2-1
反社会的勢力への対応マニュアル II-2-1-3
金銭・仮想通貨の分別管理に関する社内規則 II-2-2-2
帳簿書類に関する社内規則 II-2−2−3
利用者の情報管理に関する社内規則 II-2-2−4
苦情への対処に関する社内規則 II-2-2-5−2
金融ADR制度への対応に関する社内規則 II-2−2−5-3
システムリスク管理に関する社内規則 II-2-3-1
外部委託に関する社内規則 II-2-3−3

7 仮想通貨の該当性・適切性についての説明

取り扱う仮想通貨は登録される項目の1つです。当然,登録申請書の内容の1つです。実質的にも,ある仮想通貨を扱ってよいかどうか,については,金融庁はしっかりと審査しています。
そこで,(申請書の記載項目の1つとして)扱う予定の仮想通貨について,仮想通貨の該当性や適切性を説明する文章を記載することになります。
既に『認可』済みの仮想通貨(メジャーなコイン)については,説明は不要だとも思えますが,実際には,記載の省略は認められていません。例えば,ビットコインについてはブロックチェーンの仕組みの概要の記載が求められます。ただし,Satoshi Nakamotoの論文の添付までは不要です。

<仮想通貨の該当性・適切性についての説明>

あ 取り扱う仮想通貨の特定(前提)

取り扱う仮想通貨は登録事項の1つである
→登録申請では取り扱う予定の仮想通貨を特定する必要がある

い 仮想通貨の『認可』ハードル

取り扱う仮想通貨は『ア・イ』の2つに該当する必要がある
俗に『認可』と呼ばれるものである
ア 仮想通貨の定義に該当する
イ 適切性が認められる
詳しくはこちら|仮想通貨の上場(金融庁への届出・実質的な審査・ホワイトリスト)

う 仮想通貨の説明書への記載

『い』の見解(仮想通貨の定義に該当する+適切性が認められる)を書面に記載する

え ホワイトリストとの関係

認可』済みのトークン(ホワイトリストに含まれる)であれば問題はない
認可』未了のトークン(ホワイトリストに含まれない)については,詳細な説明が必要となり,審査に時間を要する

8 財産的基礎についての説明

ところで,仮想通貨交換業者の収支が悪化すると事業を中止することとなり,ユーザーへの迷惑や仮想通貨の市場へのマイナス効果が生じますし,また,倒産(破産)となるようなことがあればもっと大きな悪影響が生じます。
詳しくはこちら|MTGOX破産手続におけるビットコインと返還請求権の法的扱い
そこで,登録申請の審査事項の1つとして財産的基礎があります。
申請書の記載事項としては,形式的には3年間の収支見込です。実際には,実質的に,ある程度の長期にわたって持続する見込みがあるといえるような説明を記載する必要があります。

<財産的基礎についての説明>

あ 収支計画書面の作成

3事業年度の収支見込を書面に記載する

い 収支見込の判断の内容

環境の悪化(競合者の参入,システムの陳腐化)に伴う対応方策が確立している
その場合でも一定の収益を見込めるような計画となっている
仮想通貨交換業における損失が生じた場合に,それ以外の事業の収益によって補填がなされることによる仮想通貨交換業の継続の可能性も考慮する
※仮想通貨交換業ガイドライン『III-2-1(2)①ハ』
詳しくはこちら|仮想通貨交換業登録における財産的基礎の審査方法と判断基準

9 金銭・仮想通貨の分別管理についての説明

利用者の財産を保全するために,分別管理は非常に重要ですし,だからこそ義務付けられています。
登録申請(事前面談)でもしっかりした分別管理方法が確立できるかということを審査されます。分別管理についての説明は具体的な管理方法を詳細に記載することが求められます。

<金銭・仮想通貨の分別管理についての説明>

あ 分別管理義務(前提)

仮想通貨交換業者は,利用者から預かる金銭・仮想通貨を,自社の金銭・仮想通貨を分別して管理する義務がある

い 申請書への記載

分別管理の具体的な方法・内容を申請書に記載する

う 分別管理の方法の典型例

残高を営業日ごとに確認する
秘密鍵の保管場所を明確に区分する
可能な限り暗号鍵を外部ネットワークに接続されていない環境で管理する(コールドウォレット)
※仮想通貨交換業ガイドライン『II-2-2-2』

10 苦情処理・紛争解決の対処についての説明

現実に,仮想通貨の交換サービスの中で,ユーザーの問い合わせや苦情が多数生じることが想定されます。そこで苦情や相談への対応や紛争となった場合の解決フローが作られてることが求められます。
申請書の項目の中の1つとして,具体的な説明を記載する必要があります。

<苦情処理・紛争解決の対処についての説明>

あ 苦情処理・紛争解決の措置の義務(前提)

仮想通貨交換業者は,利用者からの苦情と紛争について適切な態勢を整備することが必要である

い 申請書への記載

利用者からの苦情・相談の窓口や紛争解決の方法を申請書に記載する
※仮想通貨交換業ガイドライン『II-2-2-5』

11 金融庁担当者との事前面談(第3段階)

以上のように,登録申請書とチェックリストを中心として,記載や資料の準備が整ったら,金融庁の担当者との登録申請の事前の面談を行います。(関東エリア以外では財務局の担当者です)
内容は,要するに,申請書やチェックリストの補足説明です。
金融庁の担当者が書面からでは分からない内容やもっと詳しく知りたい内容を質問し,事業者側が回答するということになります。金融庁のガイドラインに沿った質問がほとんどです。その場のコメントで終わるものもありますし,また,後日説明の書面や資料を提出することになるもの(後述のドラフト審査)も多いです。
当然,実質的な審査内容に踏み込んだ協議(質疑)なので,平均的に2〜3時間を要しています。

<金融庁担当者との事前面談(第3段階)>

あ 面談実施の準備

事前に書類や資料(前記)を提出する
申請書のドラフト(下書き)として扱う
面談実施日時の予約を取る

い 面談の内容と所要時間

提出済の書類・資料を元にして質問・確認がなされる
質問事項は登録審査の内容(項目)が中心となる(う)
平均的に2〜3時間程度を要する

う 主な質問事項

仮想通貨交換業を始める(参入する)経緯や理由
組織の内容(内部管理・内部監査を行う部署や部門)
外部監査の具体的な方法・内容
金銭・仮想通貨の分別管理の方法
反社会的勢力のチェックの方法
取引時の本人確認・疑わしい取引の検査の方法
苦情処理や紛争解決の具体的な方法(苦情受付からの処理フロー)

12 ドラフト書面の事前審査(第4段階)

前記の事前面談が終わった段階でも,まだ正式な申請・本審査にはなりません。
あくまでも申請書のドラフト(下書き)として非公式な審査という扱いがなされます。細かい審査事項についての質問と回答が必要になります。事前面談とは違って,メールなどでの連絡でのやり取りが中心となります。
事前面談よりもさらに細かい項目の審査に入ってきますので,ドラフトの審査は3か月以上かかることが多いです。もちろん,事業者側でのレスポンスやここまでの準備の状況(完成度)によってこのスピードは大きく変わってきます。

<ドラフト書面の事前審査(第4段階)>

あ ドラフト書面の審査開始

事前面談の前に提出したドラフト書面について
金融庁(財務局)で審査が行われる

い 金融庁からの質問の連絡

金融庁から質問・確認事項についてメールなどで連絡がくる

う 質問・回答の所要期間

質問と回答が複数回繰り返されることが多い
短くても3か月以上を要する傾向がある
ドラフト書面の完成度や質問への回答のスピードによって大きく変わる

13 正式な登録申請書の提出(第5段階)

ドラフトの審査が終わると,ようやく,正式な登録申請に進みます。この時点では,ドラフトの申請書にはいろいろな修正が行われて完成度の高いものになっています。
とはいっても,本審査事前の審査よりも更に精度が高いです。平均的に3〜6か月程度がかかっていますが,個別的な事情(交換サービス内容)によって違ってきます。

<正式な登録申請書の提出(第5段階)>

あ 事前審査の終了

ドラフト書面の審査が完了した時点で
→正式な登録申請書の提出(本申請)ができる

い 本審査の所要期間

平均的に3〜6か月程度を要する
申請内容や申請の混み具合によって大きく異なる
ホワイトリスト外のコインが入っていると長くなる傾向が強い
詳しくはこちら|仮想通貨の上場(金融庁への届出・実質的な審査・ホワイトリスト)
最近は審査の所要期間が全体的に長くなる傾向がある

本記事では,仮想通貨交換業者登録の申請手続の具体的な流れを説明しました。
今後,金融庁(財務局)での運用が変わっていくことも十分ありえます。
また,個別的なサービス内容や,組織編成や申請の準備のやり方によっても所要時間や手続の進み方は違ってきます。
仮想通貨交換業者の登録申請を検討・予定されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。