1 仮想通貨の上場(金融庁への届出・事前相談・ホワイトリスト)
2 取り扱う仮想通貨の追加の法的手続
3 新コインの上場と仮想通貨の定義の関係
4 金融庁からの任意の要請
5 仮想通貨の適切性の要求とその理由
6 ホワイトリスト(上場済みコイン)の内容
7 仮想通貨の実質的な上場審査の項目
8 上場審査の判断基準の不明確性
9 外国の取引所での上場による実績の影響

1 仮想通貨の上場(金融庁への届出・事前相談・ホワイトリスト)

仮想通貨交換所ではビットコインを始めとして,いろいろなコイン(仮想通貨)の取引が行われています。
ところで,ハードフォークやICOによって新たなコインが誕生することがあります。
詳しくはこちら|ビットコインのハードフォーク・HFコインのリスクと仮想通貨交換業者による扱い
詳しくはこちら|ICO(新たな仮想通貨の発行・販売)に関する日本の法規制(全体)
そして,新たなコインが仮想通貨交換所で取引され始めることもあります。
このことを,証券取引所で株式の取引が始まることになぞらえて,上場と呼んでいます。
仮想通貨の上場については,資金決済法や金融庁の運用によって一定のハードルがあります。
本記事では,仮想通貨の上場について説明します。

2 取り扱う仮想通貨の追加の法的手続

仮想通貨交換業者に関するメインの規制である資金決済法には,新規コインの取引開始に関する手続が規定されています。
それは,登録上の『扱うコイン』に新コインを追加するという手続です。
これは,売買サービスの提供開始(上場後)に届出をするだけで足ります。
法律上は,事前に金融庁の審査が必要,というようなことはありません。

<取り扱う仮想通貨の追加の法的手続>

あ 登録事項という位置づけ

『取り扱う仮想通貨の名称』は仮想通貨交換業の登録の記載事項となっている
※資金決済法63条の3第1項7号

い 変更届出

登録の記載事項(あ)に変更があった場合
→仮想通貨交換業者は遅滞なく内閣総理大臣に届け出なければならない
※資金決済法63条の6

う 他の登録事項(参考)

『他に事業を行っているときは、その事業の種類』も登録事項となっている
※資金決済法63条の3第1項10号
新たに扱うHFコインが資金決済法の仮想通貨の定義に該当しない場合
(売買のサービスの提供を始める場合)
他に行う事業として内閣総理大臣に届け出なければならない
※資金決済法63条の6

3 新コインの上場と仮想通貨の定義の関係

理論的には,仮に新コイン(トークン)Xが仮想通貨の定義に該当しない場合は,『扱う仮想通貨』には該当しません。
詳しくはこちら|仮想通貨の定義と該当性判断の方法(改正資金決済法とガイドライン)
この場合,『新コインXの売買のサービス』は『仮想通貨交換ではないサービス』ということになります。『他に行う事業』として金融庁に届出をすることになります。
しかし現実には,交換所で扱うことを想定するようなトークンは,電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に該当します。そうすると,上場した時点で不特定の者による取引が行われるので(高い流動性),結局,仮想通貨の定義に該当するのが通常です。

4 金融庁からの任意の要請

前記のように,仮想通貨交換業者が新コインを扱うには,金融庁の審査や承諾を得ることは不要です。
しかし,現実には,金融庁は届出前に相談することを要請しています。

<金融庁からの任意の要請>

あ 法的な扱い

新たなコインの売買サービスの開始するには届出だけでよい
それ以上に規制することはない
形式が整っていない以外で受理しないということはない

い 任意の要請

金融庁としては,新コインの安全性を確認した後に届出をする(売買サービス提供を開始する)ことを推奨している

う 業界団体の取り組み

業界団体では,扱うコインを取り決めているはずである
この会員であれば各社が単独で判断することはないと思われる
※金融庁監督局金融会社室仮想通貨第1係ヒアリング平成29年12月

5 仮想通貨の適切性の要求とその理由

前記のように,仮想通貨の上場のためには,現実的に金融庁の審査が必要です。
この審査の法律的な理由は何でしょうか。
まず,新規の仮想通貨交換業者登録では,利用者保護などの判断材料として審査されるのは分かります。
登録済みの業者が後から扱いコインを追加するケースでは,形式的には届出で済むので金融庁はコインの審査をすることができません。しかし,適切でないコインを扱っている(上場した)場合,利用者保護の対策をとっていないことになり,金融庁が行政処分をすることは理論的にあり得ます。
結論として,事後的な扱いコインの追加(上場)についても実質的な金融庁の審査がなされるということになっているのです。
この実質的なコインの審査は,法律上の名称がないので,俗に『認可』と呼ぶこともあります。
また,『認可』されたコイン(のリスト)のことをホワイトリストと呼んでいます。

<仮想通貨の適切性の要求とその理由>

あ 仮想通貨ガイドラインの規定

(新規の仮想通貨交換業者登録の審査に関して)
このため,取り扱おうとするものが仮想通貨に該当し,又は当該仮想通貨の取扱いが仮想通貨交換業に係る取引に形式的に該当するとしても,利用者保護ないし公益性の観点から,仮想通貨交換業者が取り扱うことが必ずしも適切でないものもあり得る
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2』・p4,5
詳しくはこちら|仮想通貨や取引の『適切性』の判断方法(事務ガイドライン)

い 実質的な金融庁の審査(俗称=認可)

登録済みの仮想通貨交換業者が新たに適切でない仮想通貨を取り扱った場合
利用者保護措置などの不備といえることがある
詳しくはこちら|資金決済法63条の10(利用者保護措置)と内閣府令・ガイドラインの条文規定
→金融庁による行政処分や行政指導の対象となる
→実質的には金融庁が『認可』したトークンだけしか上場できない

う ホワイトリスト

仮想通貨交換業者が既に扱っているコインについて
→金融庁が実質的に『認可』したものである
俗にホワイトリストと呼ばれている(後記※1)

6 ホワイトリスト(上場済みコイン)の内容

金融庁が,『認可』したコインは,登録済みの仮想通貨交換業者の一覧の中の『取り扱う仮想通貨』の欄に記載されているものということになります。

<ホワイトリスト(上場済みコイン)の内容(※1)>

レターコード 日本語表記
BTC ビットコイン
ETH イーサリウム
BCH ビットコインキャッシュ
ETC イーサリウムクラシック
LTC ライトコイン
XRP リップル
MONA モナコイン
FSCC フィスココイン
NCXC ネクスコイン
CICC カイカコイン
XCP カウンターパーティー
ZAIF ザイフ
BCY ビットクリスタル
SJCX ストレージコインエックス
PEPECASH ぺぺキャッシュ
ZEN ゼン
XEM/NEM ゼム/ネム
QASH キャッシュ

※平成30年4月10日時点

7 仮想通貨の実質的な上場審査の項目

前記のホワイトリストに入っているコインは,既にコインとしては金融庁が認めているものです。
そして,ホワイトリストに入っていないトークンについては,新たに金融庁が審査して『認可』してはじめてホワイトリストに入る(上場できる)のです。
金融庁がホワイトリストに入れる審査の内容(項目)を整理します。
まず,仮想通貨の定義に該当することは大前提です。その上で,前記のような適切性を審査します。ガイドラインで審査の項目が示されています。要するにユーザー(ホルダー)が不当な損失を受けることがないようなものであると判断できる必要があるのです。

<仮想通貨の実質的な上場審査の項目>

あ 仮想通貨該当性

資金決済法上の仮想通貨の定義に該当する
詳しくはこちら|仮想通貨の定義と該当性判断の方法(改正資金決済法とガイドライン)

い 仮想通貨の適切性

『ア〜エ』などの事情から,取り扱う仮想通貨として適切である
ア 仮想通貨の仕組み
イ 想定される用途
ウ 流通状況
エ 内在するリスク
例=プログラムのバグ
※仮想通貨交換業ガイドライン『Ⅰ−1−2(注3)』・p5
詳しくはこちら|仮想通貨や取引の『適切性』の判断方法(事務ガイドライン)

8 上場審査の判断基準の不明確性

前記のように,新たなコインの上場の判断について,ガイドラインで審査項目自体は示されています。
しかし,最終的に適切かどうか,つまり利用者保護に欠けることがないか,という判断がはっきりできるとは限りません。むしろ,数多くの種類の仮想通貨について,適切かどうかを明確に判断できないものがほとんどだと思います。
このような事情があるので,前記のように,金融庁としても,極力,業界団体として検討して統一的な判断をすることを希望しているのでしょう。
いずれにしても,ホワイトリストにない新規コインの上場の際は,金融庁にしっかりした資料を揃えて適切性が認められるような説明をする必要があります。

9 外国の取引所での上場による実績の影響

以上のような金融庁の上場審査というハードルが課せられるのは日本の交換所への上場の場合です。
日本以外の国(エリア)の交換所では,その国の法令(規制)が適用されます。
実務的には,上場しやすい国で先に新コインを上場する手法をとることもよくあります。外国での取引の実績が作られれば,その後日本の交換所で上場する場合には『認可』される方向に大きく働きます。
なお,海外の交換所で上場した際に,多くの日本国内の居住者が新規コインを購入するようなことがあると,新規コインの販売や交換サービスの提供が日本の資金決済法違反となる可能性もあります。
詳しくはこちら|日本国内居住者向け仮想通貨交換サービス(日本での営業)の判断基準
その後の日本での上場審査ではいろいろな意味でマイナス方向に働くことになってしまいます。

本記事では,仮想通貨の上場に関する法的問題を説明しました。
実際には,仮想通貨の上場の審査には不明確なところがあり,また,上場させる方法にもいろいろな工夫があります。
実際に仮想通貨の上場(ICOなど)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。