1 共有不動産×共有持分放棄|典型例
2 共有持分放棄×法律構成・基本
3 共有持分放棄|通知方法
4 共有持分放棄|登記・課税|概要
5 共有持分放棄と担保物権の負担
6 共有持分放棄と農地法の許可
7 共有持分放棄→通謀虚偽表示の類推適用
8 持分買取権・持分放棄・共有物分割|比較

1 共有不動産×共有持分放棄|典型例

共有持分の放棄という制度があります。
最初に,これを活用する典型例を紹介します。

<共有不動産×共有持分放棄|典型例>

あ 典型例

土地がA・B・Cの共有になっている
一部は貸地になっている
→少しは地代収入があるが
しかし,共有地の大部分は荒れ地である
結局,固定資産税と収入が同じくらいである
共有から抜けたい

い 共有持分放棄|概要

『共有持分を放棄する』という通知を出す
→放棄した者の共有持分は消える
その分,他の共有者の持分が追加される

2 共有持分放棄×法律構成・基本

共有持分放棄は詳細な法律構成がちょっと難しいです。
基本的部分をまとめます。

<共有持分放棄×法律構成・基本>

あ 前提事情

不動産の共有者が共有持分の放棄を行った
→この共有持分は他の共有者に帰属する
※民法255条

い 意思表示・法的性質

共有持分権の放棄について
→相手方のない意思表示である(※1)
=単独行為である
※最高裁昭和42年6月22日

う 実体法・解釈

実体法上は『原始取得』である
※最高裁昭和44年3月27日
※川島武宣ほか『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p464
※林良平『物権法』有斐閣1951年p135

3 共有持分放棄|通知方法

共有持分放棄の通知方法をまとめます。

<共有持分放棄|通知方法>

あ 理論

共有持分放棄の『相手方』は不要である(前記※1)
『他の共有者に知らせる』ことについて
→法律上は不要である

い 実務

他の共有者への権利帰属が生じる
登記手続を行う必要性が生じる
→他の共有者に対して通知を行う

う 通知方法

『放棄した』ことを記録・証拠として残す
→内容証明郵便で通知することが望ましい

4 共有持分放棄|登記・課税|概要

共有持分放棄の法律構成は『原始取得』です。
『譲渡』という扱いではない,という意味です。
しかし登記では『譲渡』と同じ方式が使われます。
さらに課税の面でも『譲渡』と同じ扱いとなります。
登記や税務上の扱いについては別に説明しています。
詳しくはこちら|共有持分放棄|登記・対抗関係|課税・登記引取請求
実務での解決手段の選択では,これらへの配慮も必須です。

5 共有持分放棄と担保物権の負担

共有持分放棄は原始取得ではあるけれど,これと整合しない扱いは登記以外にもあります。
担保物権の負担に関する解釈です。

<共有持分放棄と担保物権の負担>

あ 原始取得の原則論

一般的な原始取得について
担保物権の負担は承継しない

い 共有持分放棄の特別扱い

担保物権の負担のある共有持分について
共有持分放棄がなされた場合
→担保物権の負担は承継される
※川島武宣ほか『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p464
※林良平『物権法』有斐閣1951年p135

6 共有持分放棄と農地法の許可

農地の譲渡については農地法の許可が必要です。
この点一般的に,共有持分放棄では農地法の許可は不要と解釈されています。
『原始取得』という性格がストレートに反映した解釈です。
実務では登記申請の添付書類として許可の証明書が不要ということになります。

<共有持分放棄と農地法の許可>

あ 農地法の許可の原則論

農地の所有権移転について
農業委員会の許可が必要である
効力要件とされている
※農地法3条

い 過去の裁判例

農地調整法の許可に関して
持分放棄の登記において許可は不要である
※福岡高裁昭和29年10月29日

う 現行法の解釈

現在の農地法の許可について
『い』と同様に許可は不要である
※川島武宣ほか『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p464
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p245

7 共有持分放棄→通謀虚偽表示の類推適用

共有持分放棄は理論的には意思表示の相手は存在しません。
この特徴と『通謀虚偽表示』の関係についての判例を紹介します。

<共有持分放棄→通謀虚偽表示の類推適用>

あ 法的性質論

共有持分権の放棄について
→相手方のない意思表示である

い 実務的方法

放棄によって他の共有者が直接利益を受ける
→他の共有者に対する意思表示も可能である

う 通謀虚偽表示

次の2者が通謀して虚偽の意思表示がなされた場合
→意思表示は無効となる
ア 放棄の意思表示を行った者
イ 放棄の意思表示を受領した者
※民法94条類推適用
※最高裁昭和42年6月22日

8 持分買取権・持分放棄・共有物分割|比較

共有関係の解消につながる制度はいくつかあります。
実務では,複数の選択肢があるということが多いです。
それぞれの手続をしっかり検討すると良いのです。
これによって最適手段の選択・判断につながります。
3つの手続の比較については別に説明しています。
詳しくはこちら|持分買取権・持分放棄・共有物分割|3つの制度の比較