1 オーバーローン×形式的競売・消除主義
2 オーバーローン×形式的競売・引受主義
3 オーバーローン・引受主義×入札リスク
4 オーバーローン×形式的競売|選択肢全体
5 担保権者の同意|現実的傾向
6 オーバーローン×換価分割判決|意義

1 オーバーローン×形式的競売・消除主義

形式的競売における担保権の処理は2とおりの方法があります。
消除主義・引受主義の2つです。
詳しくはこちら|形式的競売×担保権の処理|基本|消除/引受主義・判断権者
対象不動産がオーバーローンの場合はより複雑になります。
まずは消除主義の場合の形式的競売についてまとめます。

<オーバーローン×形式的競売・消除主義>

あ 消除主義|概要

担保権者に配当する
担保権は消滅する

い オーバーローン×消除主義

オーバーローンの場合
→被担保債権全額の弁済・配当ができない
→共有者への配当はなされない
→換価分割の意味がない

う 無剰余取消|原則

『競売の申立人=共有者』への配当がなされない
→無剰余取消の対象となる
※民事執行法63条

え 無剰余取消|例外

先順位担保権者の同意を得た場合
→無剰余取消の規定は適用されない
※民事執行法63条2項但書

2 オーバーローン×形式的競売・引受主義

形式的競売で引受主義が採用された場合の処理をまとめます。

<オーバーローン×形式的競売・引受主義>

あ 引受主義|概要

担保権者に配当・弁済しない
担保権は存続する

い オーバーローン×引受主義

売却代金の全額を共有者に配当する
手続費用だけは控除される

う 無剰余取消|基本

共有者への配当がなくなることはない
→無剰余取消の対象とはならない

3 オーバーローン・引受主義×入札リスク

引受主義の場合,入札することのリスクが大きいです。
オーバーローンの場合は特にリスクが大きいと言えます。

<オーバーローン・引受主義×入札リスク>

あ 入札リスク

オーバーローン+引受主義が採用された場合
→落札者は担保権の負担がついたまま入手する
→担保権が実行されると所有権を失う
→剰余が生じない
→剰余金を受け取ることもない
→実質的なメリットがない

い 入札見込み|原則

一般的には入札する人はいない

う 入札見込み|例外

共有者の1人が入札することはあり得る
ほぼゼロの負担で単独所有にすることができる
ただし,担保権実行のリスクは継続する

4 オーバーローン×形式的競売|選択肢全体

オーバーローン不動産の形式的競売は問題が多いです(前記)。
消除主義・引受主義それぞれの問題点を整理します。

<オーバーローン×形式的競売|選択肢全体>

あ 消除主義+担保権者同意なし

ア 前提事情
執行裁判所が『消除主義』を採用する
担保権者の同意なし
イ 結果
無剰余取消の対象となる
→競売手続が終了する
※民事執行法63条

い 消除主義+担保権者同意あり

ア 前提事情
執行裁判所が『消除主義』を採用する
担保権者の同意あり
イ 結果
競売手続は遂行される
しかし,売却代金は全額が担保権者の配当に回る
共有者の手元には配当・剰余金交付がなされない
→意味がない状態である

う 引受主義

執行裁判所が『引受主義』を採用した場合
→競売手続は遂行される
しかし,買受人は担保の負担を引き受ける前提である
→入札者が現れない可能性が高い

5 担保権者の同意|現実的傾向

オーバーローン不動産の形式的競売では担保権者の意向が重要です。
競売手続について同意するかどうか,ということです(前記)。
担保権者の意向に関する現実的な傾向をまとめます。

<担保権者の同意|現実的傾向>

あ 担保権者の同意|一般的傾向

もともと,担保権実行のタイミングは自由に選べる
→担保権者が競売に同意することは少ない

い 同意しない理由|典型例

ア 担保割れ確定回避
担保割れ確定の不利益を避けたい
イ 約定弁済への期待
滞納していない時点において
→約定弁済が継続する可能性が高い

6 オーバーローン×換価分割判決|意義

オーバーローン不動産の形式的競売は以上のように複雑です。
これを前提にすると換価分割の判決を得ること自体が問題です。
しかし,単純に無駄とは言い切れません。

<オーバーローン×換価分割判決|意義>

あ 前提事情

オーバーローンの不動産について
換価分割の判決を得た

い 原則|無意味

担保権者が同意しない場合
→結果的に競売手続が完結することはない
→『換価分割の判決』自体がほぼ意味のないものになる

う 例外|将来の活用

将来,被担保債権の弁済が進む
→残債務額が不動産の価値を下回る
=オーバーローンの状態を脱した状態となる
この時点での形式的競売について
→無剰余取消は適用されない
ただし『剰余部分』が少ないと配当も少ない

え 判決×有効期限|一般論

判決には有効期限はない

お まとめ

将来,形式的競売を申し立てる準備にはなる