1 共有持分放棄の登記
2 共有持分放棄による対抗関係
3 共有持分放棄による固定資産税からの解放
4 共有持分放棄による土地工作物責任からの解放(概要)
5 共有持分放棄の後の登記引取請求
6 共有持分放棄に関する課税(みなし贈与)

1 共有持分放棄の登記

共有者は,共有持分の放棄によって,共有持分をなくすことができます。
詳しくはこちら|共有持分放棄|基本|典型例・通知方法・法律構成
共有持分放棄によって比較的手間の少ない手続で,確実に共有関係から離脱することができるのです。実際には共有持分放棄の後に他の共有者に登記の引取を請求することが多いです。
本記事では,共有持分放棄に関する登記について説明します。

2 共有持分放棄による対抗関係

共有持分放棄によって生じる法的効果は,原始取得です。
詳しくはこちら|共有持分放棄|基本|典型例・通知方法・法律構成
しかし,行う登記は,理論に整合したものではありません。

<共有持分放棄による対抗関係(※1)>

あ 前提事情

不動産の共有持分の放棄が行われた

い 登記手続|基本

登記手続は共有持分の『移転』とする
登記引取請求が可能である
放棄者の共有持分登記の『抹消登記』はできない
※大決大正3年11月3日
※最高裁昭和44年3月27日
※名古屋高裁平成9年1月30日
※川島武宣ほか『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p464
※末弘厳太郎『物権法 上』有斐閣 大正10年p420

え 対抗関係

次の2つは対抗関係となる
ア 持分放棄による『原始』取得
イ 持分の譲渡
※最高裁昭和44年3月27日

原則論では『原始取得』では『対抗関係』は適用されません。
共有持分放棄はこの点で例外的な扱いと言えます。

3 共有持分放棄による固定資産税からの解放

共有持分放棄は税務上の扱いにも注意が必要です。
民法の規定と税務上の扱いにずれがあるのです。

<共有持分放棄による固定資産税からの解放>

あ 前提事情

共有者=A・B・C
Aが『共有持分放棄』の通知をB・Cに出した
B・Cが『持分移転登記』に協力してくれない
登記上は『共有者A・B・C』の状態のままである

い 民法上の効果

Aは共有持分を持たない状態となった

う 固定資産税

固定資産税は『台帳課税主義』となっている
※地方税法343条2項
→Aも固定資産税納付義務を負う
民法上の効果とは別の扱いとなる
詳しくはこちら|固定資産税|課税|賦課期日・新築の基準時点・台帳課税主義

4 共有持分放棄による土地工作物責任からの解放(概要)

ところで,土地の所有者は,土地工作物責任を負います。そこで,土地の共有者も土地工作物責任を負います。ただし,生じた損害のうち共有持分割合だけの責任で済まず,損害全体についての責任を負うという解釈もあり得ます。
もちろん,共有持分放棄によって共有持分権を失ったのであれば土地工作物責任からも解放されるはずです。しかし,登記が残っている以上は土地工作物責任も負うという見解もあります。
詳しくはこちら|土地工作物責任の全体像(条文規定・登記との関係・共同責任)
共有持分放棄の後に,共有持分の登記を他の共有者に移転させるまでは法的責任を負担する可能性があるのです。

5 共有持分放棄の後の登記引取請求

共有持分放棄をしても登記が残っていると納税義務があります。
他の共有者が協力してくれない場合は移転登記ができません。
このようなケースでは登記引取請求が活用できます。

<共有持分放棄の後の登記引取請求>

あ 前提事情

共有持分放棄を行った
AがB・Cへの持分移転登記を望んでいる
B・Cがこれに協力しない

い 登記引取請求|理論

AはB・Cに対して『登記引取請求』ができる

う 登記引取請求|方法

登記引取請求の訴訟を提起する
訴訟では立証事項が少ない
→比較的短期間で完了する小規模な訴訟で済む
詳しくはこちら|登記引取請求権の理論と典型的背景(固定資産税・土地工作物責任の負担)

6 共有持分放棄に関する課税(みなし贈与)

共有持分放棄は『みなし贈与』の課税に注意が必要です。

<共有持分放棄に関する課税(みなし贈与)>

あ 民法的解釈

共有持分放棄を行った
民法的解釈では『移転』ではない

い 税務的扱い

贈与と同じ扱いとなる
『みなし贈与』と呼ばれる
※相続税法9条
※相続税基本通達9−12

う 贈与税|納付義務者

『財産を取得した者』に贈与税が課税される
『財産を譲渡した者=共有持分放棄を行った者』について
→連帯納付義務を負う
※相続税法34条4項

本記事では,共有持分放棄の登記について説明しました。
実際には,細かい事情によって違う判断もあります。また最適な解決手段も違ってきます。
実際に共有持分に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。