1 協議による現物分割と区分所有
2 区分所有の成立要件(概要)
3 区分所有とする現物分割の可否(まとめ)
4 区分所有とする現物分割(肯定裁判例)
5 区分所有とする現物分割(否定裁判例)
6 区分所有とする現物分割を否定した理由の分析

1 協議による現物分割と区分所有

共有物分割の分割類型の1つに現物分割があります。
一般的に建物の現物分割は物理的に困難です。
しかし『区分所有』と組み合わせることで可能となります。
基本的なケースとして協議による現物分割についてまとめます。

<協議による現物分割と区分所有>

あ 共有建物×共有物分割協議

1棟の建物甲が共有であった
共有者A・B・Cで協議を行った
次の内容で合意に至った

い 現物分割×区分所有

ア 甲を区分所有建物にする
イ 各専有部分をA・B・Cの単独所有とする

う 区分所有の要件

区分所有の成立要件を満たす必要がある(後記※1)

え 法的扱い

協議による共有物分割に該当する

2 区分所有の成立要件(概要)

現物分割には協議のほかに訴訟・判決によるものもあります。
いずれの場合でも区分所有の成立要件を満たす必要があります。
実際にはこの成立要件が大きなハードルとなります。
現物分割と区分所有の成立要件の関係を整理します。

<区分所有の成立要件(概要;※1)>

あ 基本

区分所有とする現物分割について
→区分所有の成立要件を満たす必要がある

い 主観的要件

区分所有の意思表明が必要である
ア 協議による分割
共有者間の合意が『意思表明』に該当する
イ 判決による分割(※2)
判決による表示について
→意思表明に代わると思われる

う 客観的要件

構造上・利用上の独立性が必要である
※五十嵐徹『改訂 マンション登記法』日本加除出版2004年p28
詳しくはこちら|一物一権主義・区分所有|一般論・基本

3 区分所有とする現物分割の可否(まとめ)

区分所有の成立要件とは別に,現物分割との組み合わせを認める見解と認めない見解があります。
両方の結論の裁判例を紹介します。

<区分所有とする現物分割の可否(まとめ)>

あ 肯定する裁判例

区分所有にすることを伴う現物分割について
→判決で認めた
敷地への敷地権設定も行った
※東京地裁平成19年2月27日(後記※3)
※東京地裁平成4年5月6日

い 個別事情により否定した裁判例

当事者が建物図面の提供に協力しない
→区分所有とすることが事実上困難である
→区分所有とすることを伴う現物分割を否定した
※東京地裁平成20年5月27日(後記※4)

4 区分所有とする現物分割(肯定裁判例)

区分所有にすることを伴う現物分割を認めた裁判例の事例の内容を紹介します。
敷地権の設定も含めて判決の中で処理が示されています。

<区分所有とする現物分割の(肯定裁判例;※3)>

あ 基本的な考え方

建物は13の居室ごとに区分所有建物とすることができる
現物分割することが可能である
土地については,これをすべて本件建物の敷地とする
種類を所有権とする敷地権を設定する
敷地権の対象とする
→建物と一体のものとして扱う
※不動産登記法44条1項9号

い 建物の具体的分割内容

ア 105号室の専有部分
Aの所有とする
イ 102号室の専有部分
Bの所有とする
ウ 残余の専有部分
C・Dの各2分の1の共有とする

う 土地の具体的分割内容

敷地権として当事者の共有とする
共有持分割合について
取得する専有部分の床面積の割合(い)と同じにする
※東京地裁平成19年2月27日

5 区分所有とする現物分割(否定裁判例)

区分所有にすることを伴う現物分割を認めなかった裁判例の内容を紹介します。

<区分所有とする現物分割(否定裁判例;※4)>

あ 前提事情

被告が共有物分割に反対,抵抗していた
被告が『建物の図面』を提出しなかった

い 現物分割・判断

区分所有登記ができない
→現物分割は事実上困難である
→『不可能』と言える
→区分所有にする現物分割は選択できない
※東京地裁平成20年5月27日

6 区分所有とする現物分割を否定した理由の分析

前記の裁判例では結論として区分所有とすることを伴う現物分割を否定しています。
しかし,一般化して否定しているというわけではありません。
裁判例の内容を分析してみます。

<区分所有とする現物分割を否定した理由の分析>

あ 表面的な結論

前記※4の判決について
→結果としては否定している

い 否定の理由

否定した理由は『建物図面の提出がない』ことである
→一般的に否定したものとは思えない

う 一般化→肯定方向

一般論としては肯定されることが前提となっているとも思われる

結論として,実務では現物分割と区分所有の組み合わせ自体は可能であるというのが一般的な見解です。