1 区分所有権の客観的要件(区分建物の要件)
2 区分所有権の客観的要件(区分建物の要件)の基本
3 構造上の独立性の基本と判断基準
4 構造上の独立性の判断の具体例
5 利用上の独立性の基本
6 利用上の独立性の判断内容
7 利用上の独立性の判断における共同設備の不存在の扱い

1 区分所有権の客観的要件(区分建物の要件)

区分所有権が成立するためには,客観的要件主観的要件を満たす必要があります。
詳しくはこちら|一物一権主義と区分所有(区分所有権の成立の基本と解消)
本記事では,区分所有権の客観的要件について説明します。区分所有権の客観的要件は,区分建物の要件ともいえます。

2 区分所有権の客観的要件(区分建物の要件)の基本

区分所有権の客観的要件は,利用上の独立性構造上の独立性の2つを満たすことです。この2つの独立性の内容は後述します。

<区分所有権の客観的要件(区分建物の要件)の基本>

あ 条文規定

第一条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
※区分所有法1条

い 要件のまとめ

1棟の建物の部分が独立の所有権の目的となるための要件について
その部分が独立して建物としての用途に供することができること(利用上の独立性)と,『構造上区分された』部分であること(構造上の独立性)である
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p24
※大判大正5年11月29日;戸建住宅の増改築について(旧区分所有法制定前)

3 構造上の独立性の基本と判断基準

区分所有権の客観的要件のうち構造上の独立性とは,簡単にいうと,他の部分と隔離・遮断されているということです。具体的に隔離・遮断されているかどうかの判断基準については,用途によって違いがあります。

<構造上の独立性の基本と判断基準>

あ 基本

『構造上区分された』(区分所有法1条)とは
その建物部分を他の部分から隔離する設備が存在することである

い 判断基準

『ア・イ』の両方を満たすことが必要である
ア 遮蔽が可能な壁,扉,窓などの設備が存在する
イ その設備の位置が建物の本体部分との関係で固定している
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p24

う 判断の相対性

ア 車庫
車庫についての遮断性は緩和される
※最高裁昭和56年6月18日
イ 居住用住宅
居住を目的とする住宅については,より高い遮断性が求められる
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p25

4 構造上の独立性の判断の具体例

前記のように,構造上の独立性については,他の部分との隔離・遮断が一定のレベルに達していることです。隔離・遮断する物が,容易に動かせる場合は独立性は否定されます。しかし,シャッターで仕切られたエリアについて,構造上の独立性を肯定する見解もあります。

<構造上の独立性の判断の具体例>

あ ロッカー・ついたて

ロッカーやついたてなど移動可能な仕切りは隔離する設備とはいえない
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p24

い シャッター

シャッターの場合,常時閉まっていることは必要でない
巻き上げ式シャッターのように,必要に応じて閉めることができればよい
デパートやショッピングセンターに設置されているテナント式店舗については
このシャッター設備があれば,各店舗につき区分所有権の存在が認められる
※昭42.9.25民事甲第2454号民事局長回答(開閉及び取り外しのできるパネルフラッシュ戸について)

5 利用上の独立性の基本

区分所有権の成立要件のうち利用上の独立性とは,文字どおり,用途として他の部分から独立しているということです。当該部分(エリア)だけを利用することができる(当該部分で用途が完結する)という要件です。

<利用上の独立性の基本>

あ 条文規定の由来

『独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるもの』(区分所有法1条)について
従前の判例と同一である
※大判大正5年11月29日

い 例示列挙

『建物としての用途』として示されている『住居,店舗,事務所又は倉庫』は例示である
これ以外にもある

う 含まれる用途の例

講堂,劇場,医院,診療所,教会,教室,遊技場,駐車場など
→『建物としての用途』に含まれる
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p26

え 含まれない用途の例

廊下,階段室,エレベータ室について
『建物としての用途』を生かすためのもので,それ自体が独立の用途に供されるものではない
共用部分または区分建物の一部である
1個の区分建物とはなり得ない
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p26

6 利用上の独立性の判断内容

利用上の独立性の判断する際には,着目すべき点があります。当該部分に出入口があり,例えば住居であれば台所やトイレがあることが必要です。また,当該部分に共同設備が含まれていると独立して利用することにはなりません。ただし,これらは原則的なものであり,具体的な構造によってはある程度緩和して判断されます。

<利用上の独立性の判断内容>

あ 出入口の存在

区分建物には,独立の出入口があり,原則として,他の区分建物を通らないで外部に出られることが必要である
ただし,ある程度緩和するケースもある
※東京高裁昭和34年6月11日
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p26

い 内部設備の具備

区分建物の内部設備は,その使用目的に適している必要がある
外部から直接に出入りし,独立して利用できれば,建物部分の用途が台所,便所,洗面所などであっても,それ自体が区分所有権の目的となり得る
住居としての区分建物に台所,便所,洗面所などがなくても共同施設を利用できれば,住居としての独立性を認めることができる
※東京高裁昭和34年6月11日参照
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p26,27

う 共同設備の不存在(概要)

利用上の独立性が認められるためには,共同設備が存在していないことが必要である
ただし,具体的な状況によって判断基準が異なる(後記※1)

7 利用上の独立性の判断における共同設備の不存在の扱い

前記のように,当該部分に共同設備が含まれていると,原則として独立して利用することにはならないので,利用上の独立性が否定されます。
しかし,具体的な用途によっては,一定の範囲内で共同設備が含まれていても利用上の独立性が認められることもあります。例えば車庫や倉庫では,共同設備の管理のために人(管理人)が出入りするとしても独立性が認められる傾向があります。

<利用上の独立性の判断における共同設備の不存在の扱い(※1)>

あ 基本

区分建物というためには,内部に共用設備など他人が利用する設備があってはならない
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p27

い 車庫部分に存在する共同設備の扱い(※2)

ア 事案
当該建物(車庫)部分に占める共用設備の割合が僅少であった
イ 要件(理由)
当該建物部分の権利者の排他的使用が可能である
その他排他的使用によって共用設備の保存・利用に影響がない
ウ 判断
当該車庫を専有部分と判断した
※最高裁昭和56年6月18日
ウ 倉庫部分に存在する共同設備の扱い
管理人が倉庫内に1日3回程度立ち入るようなケースについて
上記※2(の判例の判断基準)によって,倉庫の利用上の独立性を認めた
=当該倉庫を専有部分と判断した
※最高裁昭和61年4月25日
ウ 注意点
上記※2(の判例の判断基準)は,車庫以外の通常の建物について一般化することはできない
※五十嵐徹著『改訂マンション登記法-区分建物に関する登記と規約-』日本加除出版2004年p27

本記事では,区分所有権の成立要件のうち,客観的要件(区分建物の要件)について説明しました。
実際には,個別的事情によって法的扱いは違ってきます。
実際に不動産を共同で所有や管理することについての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。