1 遺留分減殺請求(平成30年改正前民法)の後の共有の性質と分割手続
2 遺留分減殺請求の後の共有の性質と分割手続
3 共有者の相続における遺留分減殺請求の事案
4 遺留分減殺請求の後の共有の性質と分割手続
5 平成30年改正民法施行後の遺留分侵害額請求(概要)

1 遺留分減殺請求(平成30年改正前民法)の後の共有の性質と分割手続

遺言によって遺産の承継の内容が定められていれば,遺産分割協議や調停は不要となります。
しかし,遺言の内容が不公平である場合,遺留分によって是正されます。
令和元年7月1日より前に開始した相続については,平成30年改正前の民法が適用されるので,遺留分減殺請求が可能であり,これによって例えば不動産は共有となります。
詳しくはこちら|遺留分減殺請求によって減殺(返還)される財産とその順序
この共有を解消する手続は,遺産分割ではなく共有物分割となります。
令和元年7月1日より後に開始した相続については改正民法が適用されるので共有の状態自体が生じません。
本記事では,遺留分減殺請求の後の共有の性質と,この共有を解消する手続について説明します。

2 遺留分減殺請求の後の共有の性質と分割手続

遺留分減殺請求をした後は共有が生じます(前記)。この共有の法的性質と解消方法をまとめます。

<遺留分減殺請求の後の共有の性質と分割手続>

あ 一部減殺

遺留分減殺請求が行われた
減殺の対象が特定の遺贈or贈与の一部であった

い 遺留分減殺請求後の共有の法的性質

『あ』の後の共有の性質について
→『物権共有』である

う 分割手続の種類

共有を解消する手続について
→『共有物分割』によるべきである
『遺産分割』はできない
※最高裁昭和50年11月7日
※梶村太市ほか『家事事件手続法 第2版』有斐閣p494
※岡口基一『要件事実マニュアル 第5巻 家事事件・人事訴訟・DV 第3版』ぎょうせいp410

3 共有者の相続における遺留分減殺請求の事案

共有持分が遺言により遺贈されたケースがあります。
そして遺留分減殺請求がなされました。
もともとの共有と遺留分による共有が混ざった状態です。
このようなケースについての分割についての判例があります。
ちょっと複雑なので,まずは事案内容だけを整理します。

<共有者の相続における遺留分減殺請求の事案(※1)>

あ 相続開始

不動産の共有者はA・Bであった
Aが亡くなった
相続人=B・C
A持分は遺言によりBに承継された

い 遺留分減殺請求

Cは遺留分減殺請求を行った
Cは『8分の1』の共有持分を得るに至った

う 共有持分割合

この時点で次の共有持分割合となった
B=8分の7
C=8分の1

え 分割請求

CがBに対して分割請求を求めた
共有の解消をすることである
※最判平成8年1月26日

4 遺留分減殺請求の後の共有の性質と分割手続

前記事案についての判例の解釈を整理します。

<遺留分減殺請求の後の共有の性質と分割手続>

あ 事案

前記※1の事案を前提とする

い 共有の性質

『遺留分減殺請求により取得した共有持分』について
→確定的な移転である
物権共有である
※最判平成8年1月26日

う 分割手続の種類

物権共有なので,分割手続は共有物分割である
詳しくはこちら|遺産共有と物権共有の比較(法的性質・分割類型・分割手続の種類)

5 平成30年改正民法施行後の遺留分侵害額請求(概要)

令和元年7月1日より後に開始した相続については改正民法が適用されます。遺留分侵害を受けている相続人が請求する内容は遺留分侵害額請求となりました(民法1046条1項)。つまり金銭の請求です。
不動産その他の遺産が共有の状態となること自体が生じません。当然,その後の共有を解消する手続も必要ありません。むしろ,従前は遺留分の問題を解決した後に共有を解消するという解決がさらに必要になっていたので,このような2段階の解決を必要としないように法改正が行われたのです。

本記事では,(民法改正前の)遺留分減殺請求の後の共有の性質とこれを解消する手続について説明しました。
実際には個別的な事情によって最適な手段は違ってきます。
実際に相続や共有に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。