【賃借権(借地権)の準共有の全体像(明渡請求・分割請求)】

1 賃借権(借地権)の準共有の全体像(明渡請求・分割請求)

所有権以外についての共有も認められます。準共有と呼びます。
詳しくはこちら|準共有の基本(具体例・民法と特別法の規定の適用関係)
土地の賃借権(借地権)が典型例です。賃借権の準共有については、基本的に一般的な共有の規定が適用されます。
本記事では、賃借権の準共有の法的扱いを全体的に説明します。

2 土地賃借権への準共有の適用(基本)

まず最初に、土地の賃借権は準共有となる、つまり一般的な共有と同じ扱いになる、ということは判例で確立しています。

土地賃借権への準共有の適用(基本)

土地賃借権について
→準共有を認める
※大判大正11年2月26日
※大判昭和8年11月22日

3 共有者の1人による準共有賃借権の占有扱い

共有者の1名が共有物を単独占有するケースでは、原則として、他の共有者が明渡請求をすることはできません(後記※1)。
土地賃借権の準共有にも、この理論がそのままあてはまります。

共有者の1人による準共有賃借権の占有扱い

あ 賃借権の準共有・単独占有

土地の賃借権をA・Bが準共有している
土地上の建物はBが単独所有している
=土地をBが単独で占有している

い 明渡請求

AがBに対して建物収去土地明渡を請求した

う 判例法の準用

一般の共有に関する判例(後記※1)を準用した
→Aの請求を認めなかった
※東京地裁昭和60年12月18日
※東京高裁平成元年1月31日

4 準共有者の1人が使用を許諾した第三者に対する明渡請求

土地賃借権の準共有者の1人が第三者に、建物・借地を占有(使用)することを承諾したケースがあります。これは、一般的な(所有権の)共有において、共有者の1人が第三者に共有物の使用を承諾したケースと同じ扱いとなります。つまり、他の共有者は明渡請求をすることができません。

準共有者の1人が使用を許諾した第三者に対する明渡請求

あ 賃借権の準共有

土地の賃借権をA・Bが準共有している
Aが転借人Cに土地を転貸している

い 明渡請求|通常

一般の共有に関する判例(後記※1)を準用した
→AはB・Cに対して明渡を請求できない
『代位行使』でも同様である

う 明渡請求|代位行使

ア 前提=土地所有者の立場 貸主=土地所有者Dとの間では
→賃借人はAのみとなっている
Dの立場からは、Cは形式的に占有権原がない
DからCへの明渡請求という可能性がある
イ 代位行使→否定 AがDに代位してCに対して明渡請求する方法について
→結果的には認められない
※最高裁昭和52年3月31日

5 共有者の1人に対する明渡請求を否定する理論(前提・概要)

前記の判例は一般的な共有における判例を準用しています。
元となっている判例の概要をまとめます。

共有者の1人に対する明渡請求を否定する理論(前提・概要)(※1)

共有者は共有物全体を使用する権限がある
共有持分割合による制限はある
結局、他の共有者による明渡請求は認められない
※最高裁昭和41年5月19日
※最高裁平成8年12月17日
詳しくはこちら|共有物を使用する共有者に対する明渡請求(昭和41年最判)

6 土地賃借権の共有物分割(概要)

土地賃借権(借地権)の準共有は、前述のように一般的な共有として扱うため、共有物分割をすることもできるはずです。実際には地主との関係などの問題が生じるので、否定する発想もありますが、実務では肯定するのが一般的です。この問題については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地権の共有物分割(現物分割・換価分割に伴う問題)

本記事では、賃借権の準共有の法的問題の全体像を説明しました。
実際には、個別的事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地人(賃借人)が複数人いるケースで、具体的な問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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