【共有物分割|複数の財産・複数種類の財産を対象とする|一括分割】
1 一括分割|一団の建物+土地
2 一括分割|飛び地
3 共有物分割×複数種類の財産|基本
4 複数種類の財産の共有物分割の実例
5 共有建物と準共有借地権の共有物分割の実例
1 一括分割|一団の建物+土地
共有物分割では,複数の財産を対象とすることもできます。
多くの『複数財産の組み合わせ』が認められています。
まずは複数の建物と土地をまとめたケースを紹介します。
<一括分割|一団の建物+土地>
あ 一団の建物→一括分割
次の不動産を一括して共有物分割の対象にできる
ア 外形上一団の建物イ 『ア』の敷地=土地
い 分割内容
『あ』について次のような現物分割とした
各共有者が『1個の建物+敷地部分の土地』の単独所有権を取得する
※最高裁昭和45年11月6日
2 一括分割|飛び地
複数の土地もまとめて共有物分割の対象になります。
離れた複数の土地をまとめた判例があります。
<一括分割|飛び地>
あ 飛び地
複数の共有土地が数か所に分かれて存在する
い 分割内容
これらの土地を一括して分割の対象にする
分割により各不動産を各共有者の単独所有とする
※最高裁昭和62年4月22日
3 共有物分割×複数種類の財産|基本
条文上,共有物分割の対象財産の種類は限定されていません。共有物分割の対象財産は広いです。その上,組み合わせは幅広い範囲で認められています。
その意味で共有物分割の手続は柔軟なのです。認められる組み合わせについて整理します。
<共有物分割×複数種類の財産|全体>
あ 基本
共有である『複数の種類』の財産をまとめて分割対象にできる
い 複数種類|具体例
共有である『ア〜ウ』の中の複数の組み合わせ
ア 不動産イ 不動産以外の所有権ウ 所有権以外の権利(後記※1)
※最高裁平成11年4月22日
※最高裁平成9年4月25日
う 参考|準共有(※1)
所有権以外の権利の共有を『準共有』と呼ぶ
詳しくはこちら|準共有の基本(具体例・民法と特別法の規定の適用関係)
4 複数種類の財産の共有物分割の実例
複数の種類の財産をまとめて共有物分割の対象にした実例は多くあります。典型例の1つを紹介します。
<複数種類の財産の共有物分割の実例>
あ 基本的事項
複数の財産をまとめて共有物分割の対象とした
い 共有物分割の対象
ア 国債イ 株式ウ 金銭エ 不動産 ※東京地裁平成27年11月26日
う 補足説明
遺留分減殺請求がなされた
そのため,遺産共有ではなく物権共有となった
→遺産分割手続の対象ではなくなった
5 共有建物と準共有借地権の共有物分割の実例
建物と賃借権をまとめて共有物分割の対象としたケースです。
<共有建物と準共有借地権の共有物分割の実例>
あ 借地権付き建物
借地上の建物が共有となっていた
借地権が準共有となっていた
い 分割内容
建物・借地権をまとめて分割の対象にする
全面的価格賠償により1名の単独所有にする
※最高裁平成11年4月22日
※最高裁平成9年4月25日