【登記は共同申請が原則だが判決や相続では単独申請ができる】
1 不動産登記は共同申請が原則
不動産の登記申請は、原則的に当事者全員が申請する必要があります。
売買による所有権移転登記であれば、売主と買主です。
これを共同申請の原則と呼んでいます。
実際には、当事者全員が司法書士へ委任する委任状に調印して、具体的な手続は司法書士が行うケースがほとんどです。
登記手続における共同申請の原則
あ 共同申請の原則
権利に関する登記の申請について
→登記権利者と登記義務者が共同して行う
※不動産登記法60条
い 登記申請の当事者
| 登記義務者 | 登記上権利を失う者=渡す者 |
| 登記権利者 | 登記上権利を得る者=受け取る者 |
2 判決による登記は単独申請が可能
共同申請をすべき当事者の一部が登記申請に協力してくれない場合もあり得ます。
このような場合は、訴訟を提起して、判決を獲得すれば単独で登記申請ができます。
これは強制執行の1種です。
判決による単独申請
あ 判決による単独申請
確定判決による登記申請について
当事者の一方のみが単独で行うことができる
※不動産登記法63条1項
い 単独申請可能な判決の種類
『登記義務者』に対する『給付判決』
=登記申請人の一方(登記義務者)に対して『登記手続を命じる』判決
=『・・・登記手続をせよ』という表記の判決
う 対象外の判決の種類
確認判決・形成判決について
→単独申請はできない
え 単独申請の理論的構造
登記義務者の登記意思は判決により擬制される
→登記権利者のみで申請できる
※民事執行法174条
3 判決以外の債務名義でも単独申請が可能
判決以外にも、判決と同じ扱いがなされるものがいくつかあります。
これらを債務名義と呼びます。
いずれであっても、単独申請が可能となります。
単独申請が可能な債務名義の種類
あ 確定判決
い 認諾調書
被告が請求を全面的に認めたケースで作成される
う 和解調書
訴訟上、和解が成立した場合に作成される
え 調停調書
調停において、和解した場合(調停成立)に作成される
お 訴え提起前の和解調書
当事者で合意ができている場合
→裁判所に和解調書を作成してもらう
詳しくはこちら|債務名義の種類は確定判決・和解調書・公正証書(執行証書)などがある
なお、公正証書(執行証書)による単独申請はできません。
公正証書が執行力を持つのは金銭と有価証券のみが対象とされているからです。
4 判決などの内容は給付を命じるものに限られる
単独申請をするためには、判決などの内容が給付を命じる形式になっている必要があります。
具体的には判決主文が『登記手続をせよ』という表記になっているということです。
単独申請が可能な債務名義の内容(形式)
| 判決など形式 | 単独申請の可否 | 内容 | 具体例 |
| 給付(判決) | ◯ | ダイレクトに登記手続をすることを命じる形式 | 『・・・登記手続をせよ』 |
| 確認(判決) | ☓ | 権利関係の確認をするもの | 『・・・登記義務があることを確認する』 |
| 形成(判決) | ☓ | 権利関係の発生を認めるもの | (登記関係で該当するものはない) |
5 事前に処分禁止の仮処分の登記を行う方法もある
妨害的に登記を別の人に移転されそうだ、という時は、登記を不正に動かせないよう『処分禁止の仮処分』という登記を入れる方法もあります。
その場合、訴訟本体とは別に、裁判所に保全の申立を行うことになります。
詳しくはこちら|民事保全(仮差押・仮処分)の基本|種類と要件|保全の必要性
6 登記義務者の単独申請もある(登記引取請求権・概要)
通常は『登記を得る』側が登記手続を請求します。
しかし逆に『登記を渡す』側(登記義務者)から請求するケースもあります。
法律上の規定はありませんが、判例で認められています。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|登記引取請求権の理論と典型的背景(固定資産税・土地工作物責任の負担)
7 不備のある判決を救済するケースもある(概要)
判決を獲得して、ようやく単独申請をしようとした段階で判決主文に不備があることが発覚するケースもあります。
弁護士も裁判官も、登記手続の細かい内容には詳しくない傾向があるのです。
実際には、本来は不備のある判決でも、登記所(法務局)が救済的に受け付けて登記を進めることもあるのです。
登記原因と原因日付が必要だがこれを欠く判決や和解の救済もある
8 相続人のうち1人で単独申請ができる(概要)
複数の相続人(共同相続人)が法定相続登記をする場合、原則としては、相続人全員が申請人となります。
しかし、共同申請の例外として、相続人1人だけで単独申請ができます。
相続人の1人による法定相続登記(概要)
あ 登記申請は可能
共同相続人の1人による法定相続登記の申請ができる
※明治33年12月18日民刑第1611号民刑局長回答
い 申請人1人の持分だけの登記はできない
登記申請の内容は相続人全員への所有権移転登記である
※昭和30年10月15日民事甲第2216号民事局長回答
詳しくはこちら|相続に関する登記申請|非協力者の存在×証書真否確認訴訟・給付訴訟
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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