1 登記手続のおける共同申請の原則(概要)
2 一般的な登記請求権の行使(前提)
3 登記引取請求権の理論と行使する現実的理由
4 登記引取請求権|解釈・判例

1 登記手続のおける共同申請の原則(概要)

本記事では移転登記を要求する請求権について説明します。
この請求は,『共同申請の原則』というルールと密接に関係しています。
共同申請の原則の概要をまとめます。

<登記手続における共同申請の原則(概要)>

あ 登記手続|共同申請の原則

所有権移転登記は共同申請の必要がある
※不動産登記法60条

い 登記申請|当事者
登記義務者 登記上権利を失う者=渡す者
登記権利者 登記上権利を得る者=受け取る者
う 例外=判決による単独申請

『移転登記請求』を認める確定判決がある場合
→一方の当事者だけの申請ができる
※不動産登記法63条1項
詳しくはこちら|登記は共同申請が原則だが判決や相続では単独申請ができる

2 一般的な登記請求権の行使(前提)

移転登記に関するトラブルの典型的な構造・背景をまとめます。

<一般的な登記請求権の行使(前提)>

あ 共同申請主義による申請不能

登記移転の申請に登記義務者(元の所有者など)が協力しない場合
登記権利者(新たな所有者など)は共同申請ができない

い 理論的な登記請求権

物権(所有権など)を取得した者は登記請求権を有する
詳しくはこちら|登記請求権の基本(物権の効力・判決による単独申請)

う 判決による単独申請

登記権利者登記請求訴訟を提起する
→(確定)判決を獲得すれば単独申請ができる

3 登記引取請求権の理論と行使する現実的理由

移転登記のトラブルには,通常と逆方向のものもあります。
つまり『登記を引き取ってくれ』と要求するタイプです。
典型的な事情をまとめます。

<登記引取請求権の理論と行使する現実的理由>

あ 登記が残ることによる不利益

ア 固定資産税の負担
登記が残っていると固定資産税の納税義務を負う(残る)
詳しくはこちら|固定資産税|課税|賦課期日・新築の基準時点・台帳課税主義
イ 土地工作物責任
登記が残っていると土地工作物責任を負う可能性がある
詳しくはこちら|土地工作物責任の全体像(条文規定・登記との関係・共同責任)

い 登記の引取による不利益解消

現在の登記名義人は
相手に登記を引き取らせることにより『あ』の不利益が解消できる

う 共同申請主義による登記申請の不能

登記権利者が登記手続に協力をしない場合
共同申請ができない
登記引取請求を認める判決があれば単独申請ができる

4 登記引取請求権|解釈・判例

登記引取請求は,普通の逆と言えます(前記)。
法律上も,これを認めるような条文・規定はありません。
これについては判例で認められるに至りました。

<登記引取請求権の解釈(判例)>

あ 法律上の根拠

登記引取請求の法的根拠について
→法律の条文上は規定がない

い 登記請求権|解釈|一般論

真実の権利関係に合致しない登記がある場合
→登記を真実に合致させる登記請求権がある

う 登記請求権|解釈|双方向性

登記請求権について
→『登記権利者・登記義務者』の双方向で認める

え 登記引取請求権

登記義務者からの登記請求を認めた
『登記引取請求』と呼ぶ
※最高裁昭和36年11月24日

本記事では,登記引取請求がなされる現実的な理由や,登記引取請求の理論について説明しました。
実際には,細かい事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に登記の移転に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。