中間省略登記というのは違法なのでしょうか。
転売の時のコストを下げたいと思っています。

1 中間省略登記だと手間,コストが下がるが適法性が問題となる
2 従前の中間省略登記は違法となる
3 適法な新中間省略登記は2種類ある
4 新中間省略登記による費用節約の実例

1 中間省略登記だと手間,コストが下がるが適法性が問題となる

<発想>

不動産が,A→B→Cと,順次売却(転売)された
中間のBを省略して,A→Cと直接所有権移転登記を行いたい
このようにして手間,コストを削減したい

不動産の転売において,原則では,登記を2回行うことになります。
この場合,登録免許税が2重にかかりますし,手続の手間が多いです。
登記を1回分で済ますことができれば,登録免許税の節約,手続のコスト削減を図ることができます。

<登記を2回行うことによるコスト>

・所有権移転登記を行う際の登録免許税
・不動産取得税
・登記手続自体のコスト
 司法書士の報酬などです。

なお,『2回分→1回分』という方針ではない節税方法は別にもあります。
<→別項目;不動産を信託受益権化→売却とすると節税になる

2 従前の中間省略登記は違法となる

20世紀には,契約書などは何も工夫せず,単に登記の時だけ強引に中間者を省略することが実務上ありました。
つまり単純に,『売買は2回だけど,登記上は1回省略する』というものです。
しかし,これは次のように違法と考えられます。
実際に最高裁が,違法という判断をしました(判例1)。

<従前の中間省略登記の違法性>

実際の不動産の権利移転状況と登記上の権利移転に食い違いが生じる

虚偽の登記(申請)である

公正証書原本不実記載等罪に該当する

3 適法な新中間省略登記は2種類ある

要するに,実際の権利の移転登記上の権利移転が一致していれば適法です。
ですから,実際の不動産の『権利移転』が中間者を経由しない状態にすれば,適法です。
虚偽の登記ではないので適法となります。
適法な中間省略登記の方法を新中間省略登記と言うこともあります。
法務局,税務署,裁判所ともに,認めている方法です。

(1)買主たる地位の譲渡方式

<買主たる地位の譲渡方式の概要>

・AがBに不動産を売却する。
・BがCに買主たる地位を売却する。
 契約上の地位の移転と言うものです。

BC間の契約は『不動産売買契約』ではなく『買主たる地位』を譲渡(売却)する,という形にします。
なお,この方法の場合,CがAB間の売買の代金を分かってしまうことになります。
ただし,2回売買方式よりは単純です。
必要な書類は少なくて済みます。

(2)2回売買方式

<2回売買方式の概要>

・AがBに不動産を売却します。
 所有権がAからCに移転するという特約を付けます。
・BはCに不動産を売却します。

AB間の売買,BC間の売買は別個の契約になります。
ですから,Cに,AB間の売買の代金額を知られないで済みます。
ただし,買主たる地位の譲渡方式よりも複雑になりますので,必要な書類は多くなります。

4 新中間省略登記による費用節約の実例

新中間省略登記は,手間,コストを大幅に削減できます。
以下,事例を紹介します。

(1)新中間省略登記の事例1

<新中間省略登記を行った事例>

あ 取引の概要

実質的な『移転』 A→B→C
対象=戸建住宅(土地・建物)

い 評価額,規模

土地,建物ともに固定資産評価額は1億円

う 1回の売買に要する費用
登録免許税(印紙代) 330万円
不動産所得税 約700万円
実費合計 約1030万円

<費用の比較>

あ ノーマル方式

合計約2060万円
Cに移転するまでに2回の一般的な売買契約を行った場合です。

い 新中間省略登記方式

合計約1030万円
AからCへの1回の移転登記,ということになります。
合計1回分だけの実費として約130万円で済みました。

う 差額

削減金額=約1030万円

(2)新中間省略登記の事例2

<新中間省略登記を行った事例>

あ 取引の概要

実質的な『移転』 A→B→C
対象=戸建住宅(土地・建物)

い 評価額,規模

土地,建物ともに固定資産評価額は2500万円
土地面積・建物床面積はともに50平方メートル程

う 1回の売買に要する費用
登録免許税(印紙代) 82.5万円
不動産所得税 約50万円
実費合計 約130万円

<費用の比較>

あ ノーマル方式

合計約260万円
Cに移転するまでに2回の一般的な売買契約を行った場合です。

い 新中間省略登記方式

合計約130万円
AからCへの1回の移転登記,ということになります。
合計1回分だけの実費として約130万円で済みました。

う 差額

削減金額=約130万円

判例・参考情報

(判例1)
[最高裁判所 平成20年3月27日]
 1 争点1(本件処分の適法性)について
   控訴人は,本件の申請情報は,登記権利者である控訴人が,平成17年7月13日売買により本件建物の所有権を取得したことを理由として登記義務者であるAから所有権の移転登記を求めるという内容であり,他方,本件の登記原因証明情報は,本件建物の所有権がAからB,Bから控訴人にそれぞれ売買により移転し,Aから控訴人に移転登記をすることをBが承諾したことにより,控訴人が適法な登記権利者,Aが登記義務者に当たることを示す内容のものであること,これによれば,本件の申請情報と登記原因証明情報は合致しており,不動産登記法第25条第8号所定の登記の申請の却下事由は存在しないというべきであること,以上のとおり主張し,これを理由に,本件処分は違法である旨主張しているので,以下にはこの点について検討をする。
   ところで,不動産登記法第18条は,「登記の申請は,次に掲げる方法のいずれかにより,不動産を識別するために必要な事項,申請人の氏名又は名称,登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)を登記所に提供しなければならない。」と規定し,不動産登記令は,申請情報として,第3条第6号で「登記原因及びその日付」を掲げている。同法第59条第3号は,権利に関する登記の登記事項として,「登記原因及びその日付」を掲げ,同法第60条は,「権利に関する登記の申請は,法令に別段の定めがある場合を除き,登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。」と規定している。そして,同法第5条第2項ただし書は,登記原因について,「登記の原因となる事実又は法律行為をいう。」と定義している。また,同法第61条は,「権利に関する登記を申請する場合には,申請人は,法令に別段の定めがある場合を除き,その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。」と規定し,同法第25条において「登記官は,次に掲げる場合には,理由を付した決定で,登記の申請を却下しなければならない。」として,第8号は,「申請情報の内容が第61条に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。」と規定している。不動産登記法及び不動産登記令の上記の各規定の文言及び趣旨にかんがみれば,上記法令は,権利に関する登記については,申請情報に係る登記義務者と登記権利者の間の「登記原因及びその日付」を登記事項とし,もって,当該申請に係る権利に関する登記に係る登記義務者と登記権利者の間の登記原因及びその日付を公示することとし,他方,権利に関する登記を申請する場合には,申請人は,法令に別段の定めがある場合を除き,その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならないこととして,申請人に対し,当該申請に係る権利に関する登記に係る登記義務者と登記権利者の間の登記原因及びその日付を証する情報を提供することを義務付け,これにより,権利に関する登記の登記事項である登記原因及びその日付が客観的な裏付けのあるものであることを確保し,もって,不動産の物権変動を公示するため権利の変動に逐一対応する登記をすることとし,申請情報と登記原因証明情報とを合致させて登記内容に物権変動の過程を正確に反映させようとすることを制度の趣旨とするものであると解するのが相当である。
   これを本件についてみるに,本件申請において,控訴人が登記所に提供した不動産登記法第61条所定の登記原因証明情報の内容は,前記のとおり,本件建物については,AからBに対し,平成17年7月12日に売却され,本件建物の所有権がAからBに移転したこと,次いで,Bから控訴人に対し,同月13日に売却され,本件建物の所有権がBから控訴人に移転したというものである。これに対して,控訴人が登記所に提供した同法第18条所定の申請情報は,平成17年7月13日に本件建物をAから控訴人が買い受けてその所有権を取得したというものである。以上によれば,本件申請における不動産登記法第18条所定の申請情報は,本件建物の所有権が平成17年7月13日にAから控訴人に売買により移転したというものであり,同法第61条所定の登記原因証明情報は,本件建物の所有権が平成17年7月12日AからBに移転し,次いで同月13日Bから控訴人に移転したというものである。したがって,本件においては,申請情報と登記原因証明情報が合致しないことは明らかであるから,不動産登記法第25条第8号所定の登記の申請を却下するべき事由があることは明らかといわざるを得ない。控訴人は,本件の登記原因証明情報には,上記の他に,A,B及び控訴人は,登記権利者を控訴人,登記義務者をA,登記原因を平成17年7月13日売買として登記することに異議なく同意した旨の記載があること,したがって,上記の登記原因証明情報は,控訴人が適法な登記権利者,Aが適法な登記義務者であることを明らかにするものであって,結局本件における申請情報と登記原因証明情報は合致している旨主張するが,本件の事実関係に照らすと,確かに,本件建物の所有権は,AからBに,次いでBから控訴人に順次移転しているから,本件建物所有権の移転について,控訴人が結果として適法な登記権利者となり,また,Aが登記義務者となることは否めないが,そのことから,本件建物所有権が,順次AからBに,また,Bから控訴人に移転したという事実が変容を受けて,本件建物所有権がAから控訴人に直接移転したことになるはずのものではないし,また,本件の登記原因証明情報に控訴人の指摘する上記のA,B及び控訴人は,登記権利者を控訴人,登記義務者をA,登記原因を平成17年7月13日売買として登記することに異議なく同意した旨の記載があるとしても,そのことから,真実は,上記のとおり,本件建物所有権がAからB,Bから控訴人へと順次移転したのに,これがAから控訴人に直接移転したことになるはずもないのであって,控訴人の主張するような理由で,仮に,前者と後者,すなわち,本件建物所有権がAからB,Bから控訴人へと順次移転したこととこれがAから控訴人に直接移転したこととを同一視するならば,本件における申請情報が真実を示している登記原因証明情報と異なることを是認することとなるのであって,このことは,不動産登記法第25条第8号が申請情報と登記原因証明情報が合致しないときは申請を却下するべきであるとして,不動産の物権変動を公示するため権利の変動に逐一対応する登記をすることとし,申請情報と登記原因証明情報とを合致させて,登記内容に物権変動の過程を正確に反映させようとする不動産登記法及び不動産登記令の前記の趣旨に反することになることは明らかである。
   なお,控訴人は,平成17年法律第29号による改正前の不動産登記法(以下「旧法」という。)においては,控訴人の主張するような登記は,中間省略登記として登記実務上認められていたかのように主張することろ,登記を申請するには,旧法においても,第35条第1項第2号で「登記原因ヲ証スル書面」を提出する必要があるとされ,第49条は,「登記官ハ,左ノ場合ニ限リ理由ヲ附シタル決定ヲ以テ申請ヲ却下スルコトヲ要ス」として,第7号は,「申請書ニ掲ケタル事項カ登記原因ヲ証スル書面ト符合セサルトキ」と規定していたから,旧法下においても,本件と同内容の登記申請がされ,登記原因を証する書面として本件における登記原因証明情報と同内容の書面が登記所に提出された場合には,上記第49条第7号に該当するものとして登記申請が却下されるべきであったのであり,このことは現行の不動産登記法の上記規定の場合と同様であって,不動産登記法が現行法に改正される前と後とで,登記原因と異なる登記申請は却下するという基本的な考え方は何ら変更がないことは,上記の旧法及び現行法の不動産登記法の上記各規定の内容に照らして,明らかである。確かに旧法においては,その第40条で「登記原因ヲ証スル書面カ初ヨリ存在セス又ハ之ヲ提出スルコト能ハサルトキハ申請書ノ副本ヲ提出スルコトヲ要ス」と規定していたことから,旧法第35条第1項第2号所定の登記原因を証する書面に代えて登記申請書の副本を提出した場合には,形式的審査権しかない登記官としては,登記申請に掲げられた事項と真実の登記原因が合致しないことを知ることができないまま,提出された登記申請書の副本に基づいて登記申請を受理する結果となり得ることがあったことはうかがわれるものの,それは結局登記原因が事実と異なるにもかかわらず,旧法第40条が登記原因を証する書面に代えて登記申請書の副本の提出を認めていたことにより,虚偽の内容の申請を結果的に排除できなかったというに過ぎないものであって,このことから,旧法下でも,控訴人の主張するような中間省略登記が登記所において正当なものとして受理されていたことにはならないことは明らかである。