【相続承認と相続放棄|承認には単純承認と限定承認がある|熟慮期間・伸長の手続】

1 『相続人』という地位を受け入れるか否かの選択;承認or相続放棄
2 相続を受け入れるのは2種類ある;単純承認限定承認
3 相続放棄/承認を考える期間は『相続を知ってから3か月』;熟慮期間
4 熟慮期間を延長する家裁の手続がある;熟慮期間伸長

1 『相続人』という地位を受け入れるか否かの選択;承認or相続放棄

『相続人』は,被相続人との親族関係によって明確に法律上規定されています。
詳しくはこちら|相続人の範囲|法定相続人・廃除・欠格|廃除の活用例

しかし,『相続人という地位自体を否定する』ということも可能です。
相続放棄という手続です(民法938条,939条)。
詳しくはこちら|相続放棄により相続人ではない扱いとなる(相続放棄の全体像)

2 相続を受け入れるのは2種類ある;単純承認限定承認

逆に,相続人として遺産の相続(承継)を受けるのが法律上の原則です。
『承認』と言います。
相続の承認には2種類あります。

(1)単純承認

単純承認は全ての財産を相続する無条件に相続する方法です(民法920条)。
特に何らかの手続が必要なわけではありません。
むしろ,一定の行為があると,自動的に『単純承認したとみなされる』こととされています(民法921条)。
これを法定単純承認と言います。

(2)限定承認

限定承認は借金などのマイナス財産はプラス財産の範囲内に限定して相続するという手続です。
要はトータルでプラスになることはあってもマイナスにはならない,というものです。
一種の清算が行われることになります。
限定承認は,相続人全員で行う必要があります。
また,家庭裁判所の手続が必要です。
詳しくは別記事で説明しています。
詳しくはこちら|限定承認|基本|活用場面・対象財産・相続債権者の請求訴訟・相殺

3 相続放棄/承認を考える期間は『相続を知ってから3か月』;熟慮期間

相続人は,相続を承認するのか,相続放棄をするのかを選択することになります。
この選択する期間は相続開始を知ってから3か月と規定されています(民法915条)。
これを熟慮期間と呼ぶこともあります。
実務では『相続開始を知った時期』についてが問題になることがあります。
相続放棄の起算点は,救済的に繰り下げられることもあるのです。
詳しくはこちら|相続放棄の熟慮期間の起算点とその繰り下げ(限定説と非限定説)

4 熟慮期間を延長する家裁の手続がある;熟慮期間伸長

相続財産の状況によっては,承認するか相続放棄をするか迷うこともあります。
この考慮期間として3か月よりも長めに余裕が欲しい場合『熟慮期間伸長』の手続ができます。

<熟慮期間伸長の申立>

あ 申立ができる期間

相続開始があったことを知ってから3か月
→『相続放棄』ができる期間と同一

い 家裁の決定

相続の承認/相続放棄の『期限』を延長する
実務上,原則的に3〜6か月程度の延長(伸長)が認められる
家裁の審判は別表第1事件として分類されている
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

う 複数回の『延長』

法律上『回数』の制限はない
合理的な延長の必要性があれば,複数回の『延長』が認められる
実例;6か月×3回の延長が認められたケースがある
※民法915条1項

弁護士法人 みずほ中央法律事務所 弁護士・司法書士 三平聡史

2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分

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