【不貞相手の不貞慰謝料の相場(200〜300万円)】

1 不貞行為の慰謝料の相場(不貞相手)

不倫(浮気・不貞行為)を行った配偶者や不貞相手は不法行為として損害賠償(慰謝料)を支払うことになります。
詳しくはこちら|不倫の慰謝料の理論(破綻後・既婚と知らないと責任なし・責任を制限する見解)
本記事では、不貞相手が支払う不貞慰謝料の相場を説明します。

2 不貞慰謝料の相場→200〜300万円程度

実際の慰謝料算定においては、多くの事情が影響します。
以下、個別的な特殊事情がない、標準的・平均的なケースを前提として、慰謝料の相場(目安)を説明します。
まず、不貞相手が支払う慰謝料は、200〜300万円というのが目安となります。
不貞があったことにより、夫婦の仲が悪くなって離婚に至っていれば、ダメージは大きいので300万円に寄り、離婚に至っていなければ200万円に寄る方向性です。

不貞慰謝料の相場

あ 不貞相手の不貞慰謝料の相場
状況 相場
離婚に至った場合 300万円
離婚には至っていない場合 200万円
い 不貞相手・配偶者の不貞慰謝料の裁判例の集計

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)

被告 平均請求額(万円) 平均認容額(万円) 平均認容率(%)
双方 638 183 28.7
配偶者 350 90 25.7
不貞相手 447 152 34.0
全体 470 153 32.6

※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p49
(これは離婚慰謝料(後記※1)とは異なる)

う 不貞相手の慰謝料との関係

(不貞行為による)配偶者の慰謝料不貞相手の慰謝料は、法律上不真正連帯債務とされる
慰謝料の金額自体は異なることもある

3 夫婦間の離婚慰謝料の相場→200〜500万円(参考)

不貞を行ったのは、配偶者(の一方)と不貞相手のふたりです。(不貞を行った)配偶者も慰謝料を支払う責任があります。
通常、配偶者への慰謝料請求が行われるのは、離婚が成立した時や、離婚請求と慰謝料請求がセットになるような状況です。
つまり、配偶者の慰謝料とは、通常、離婚に至ったことによるダメージの賠償という位置づけです。不貞行為自体によるダメージよりも大きいです。そこで、離婚の原因が一方に100%ある場合には、慰謝料の相場は200〜500万円程度となります。
細かい理論としては、配偶者に請求するのは離婚(自体)慰謝料、不貞相手に請求するのは不貞慰謝料というように性質が違います。そこで、理論的に金額に違いが出るという構造があるのです。

夫婦間の離婚慰謝料の相場(参考)(※1)

あ 現実的な状況

通常は離婚と一緒に慰謝料が請求される(離婚慰謝料
不貞行為そのものによる精神的苦痛(不貞慰謝料)とは異なる
詳しくはこちら|不貞により発生する2種類の慰謝料(不貞慰謝料と離婚慰謝料)・消滅時効の違い
離婚慰謝料では、精神的苦痛の要因として不貞以外の事情もあることが多い

い 配偶者の離婚慰謝料の相場

離婚全体に対する慰謝料(離婚慰謝料)の相場は、200〜500万円程度である
もちろん個別的な事情で大きく変わる
詳しくはこちら|離婚の慰謝料相場は200〜500万円、事情によってはもっと高額化

4 不貞慰謝料の金額に影響する事情(算定要素)(概要)

以上で説明した相場は、あくまでも標準的、平均的な事案で、このゾーンに収まることが多い、というものです。実際には、多くの細かい事情によって不貞慰謝料の金額は決まります。
どのような事情がどのように慰謝料の金額に影響するのか、ということについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|不貞慰謝料の金額に影響する事情(算定要素)

5 不貞行為における弁護士費用相当額の賠償請求

以上で説明したのは、慰謝料、つまり、精神的な損害(ダメージ)を金銭評価する、というものでした。
不貞行為があった場合の損害は、精神面だけではありません。訴訟手続を使うことになった場合、弁護士費用分の金額についても賠償請求が認められます。ただし、実際に弁護士報酬として支払った金額ではなく、被告(不貞相手)が支払うべきといえる範囲の金額です。
実務では、慰謝料の金額の10%程度と決められることが多いです。

不貞行為における弁護士費用相当額の賠償請求

あ 裁判例の傾向

72例中、弁護士費用を請求している事案は、44(61%)であり、おおむね認容された金額の10%である。
認客額の10%を超える事例が3例、下回る事例が2例、本来の慰謝料額では下回るが、控除により認容される額では上回る事例が1例ある。
弁護士費用については、5、10、15、20というように5万円単位で認容されることが多いため、多少のずれが生じることになり、いずれもその範囲内である。
実際の弁護士費用からすれば、金額が低いほど割合が高く、金額が上がるほど割合は低くなるし、認容金額のいかんにかかわらず、最低限度の着手金相当額は訴訟をする以上発生するのだが、弁護士を依頼しなくても訴訟をすることは可能であることからすると、常に相当因果関係のある損害と言えるのかという問題もあり、慣行的に認容額の1割が弁護士費用の相場として定着しているようである。

い 請求漏れの実情

弁護士が代理人についても弁護士費用を請求している事例は、全体として半分以上ある・・・
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p55

う 一般的な不法行為損害賠償における弁護士費用(参考)

不貞慰謝料に限らず、不法行為による損害賠償請求訴訟において、認容額の10%程度が弁護士費用相当額として認められることが多い
詳しくはこちら|損害賠償として弁護士費用を請求することの可否(責任の種類による分類)

6 不貞行為における調査費用相当額の賠償請求

実際に不貞行為の慰謝料を請求する場面では、証拠が必要です。証拠にはいろいろなものがありますが、調査会社(探偵)に尾行を頼み、その調査報告書が決定的な証拠となることもよくあります。
この場合に、調査会社に支払った費用(調査費用)も、不貞相手が支払うべきだ、という発想はあります。では、調査費用分の損害賠償が認められるか、というとそうとは限りません。認められることもありますが、どちらかというと否定される傾向があります。

不貞行為における調査費用相当額の賠償請求

あ 裁判例の実情

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
不貞行為をした相手方のみを被告とした認容事例72回のうち、不貞行為の調査のためにかかった費用を請求しているのは8例である。
そのうち、調査費用を不貞行為と相当因果関係のある損害として全額認容している事例が1例、調査費用は不貞行為と相当因果関係のある損害として認められないが、慰謝料を算定する際の一つの事情として考慮するとした事例が1例ある。
残りの6例は、すべて調査費用は不貞行為と相当因果関係がないとして請求の趣旨に掲げているものは棄却し、慰謝料算定について考慮すべきだという主張については、これを排斥している。
その理由としては、このような調査費用を費やさなくても他の方法で立証が可能であるからとするもの、証拠を収集するための費用であり、弁護士費用に含まれる性質のものであるからとするものがある。
前者の理由の場合、もし興信所や探偵社に調査を依頼しなければ不貞行為の立証ができないというときは認容の可能性があることになるが、後者の理由の場合は、証拠収集費用の相当額の問題になってくるであろう。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p52、53

い 見解

ア 離婚慰謝料請求における調査費用の扱い(参考・前提) 実務上、不貞慰謝料が請求される事件において、不貞の調査費用が不貞行為と相当因果関係のある損害であるとして請求されることがあるが、本件(最判平成31年2月19日)は離婚慰謝料が請求された事件であるから、上記の請求ができるはずがなく、1審判決は、明示的に判断していないものの、これを否定したものと解される(Xからの控訴はないため、原審及び当審の審理対象外とされている。)。
イ 不貞慰謝料請求における調査費用の扱い なお、不貞慰謝料が請求される場合であっても、そもそも調査費用は不貞行為の証拠収集のために要した費用にすぎない上、不貞行為がされた場合に通常そのような依頼がされるという関係があるとも認め難く、相当因果関係があるとはいえないであろう。
まれに認めている裁判例があるが、実務上も否定する裁判例が多いと思われる。
※家原尚秀稿/『法曹時報73巻12号』法曹会2021年p198

7 不貞相手からの慰謝料請求(参考)

以上のように、不貞相手が支払う慰謝料の金額は個別的な事情によって大きく違ってきます。
この点、たとえば、形式的には不貞であっても、不貞相手が、「もうすぐ離婚が成立する」と言われて交際を始めた、というように、騙された経緯がある場合には、不貞相手から騙した者(配偶者)への慰謝料請求が認められることもあります。不貞相手は慰謝料請求を支払う側ではなく受け取る側になる、という特殊な状況です。
詳しくはこちら|既婚と知って交際した者からの慰謝料請求は事情によって認められる

本記事では、不倫の慰謝料の相場について説明しました。
実際には個別的な事情によって大きく金額の算定は変わってきます。
いずれにしても、実際の裁判での主張の組み立てや立証のやり方次第で結論が変わるということです。
実際に不貞(不倫)の問題に直面されている方は、本記事の内容だけで判断せず、弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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