1 親権者・監護権者の制度|概要
2 親権者・監護権者の変更|家裁だけが変更できる・協議での変更はNG
3 親権者・監護権者の変更|認められるハードルは高い
4 面会交流の妨害→親権者の変更を認めた事例|福岡家裁平成26年12月4日
5 親権者変更申立における『試行的面会交流』|福岡家裁平成26年12月4日
6 『監護親への忠誠心→別居親への拒否感』と認定・親権者を変更した|福岡家裁平成26年12月4日
7 面会交流妨害→子供を引き渡すという審判が出やすくなった|励起状態

1 親権者・監護権者の制度|概要

離婚時に親権者や監護権者を指定します。
協議や家裁の審判で決められるのです。
その後,事情によっては『変更』が認められることがあります。

<離婚後の親権者・監護権者変更>

手続 家庭裁判所の審判
要件 『(子の利益のために)必要がある』

※民法819条6項
※民法766条3項

2 親権者・監護権者の変更|家裁だけが変更できる・協議での変更はNG

このように『家裁の審判』が必要なのです。
逆に言えば,元夫・妻の協議で変更する,ということはできないのです。
『いったん決めた』ということから,その後の変更は一気にハードルが高いのです。

3 親権者・監護権者の変更|認められるハードルは高い

ハードルが高いのは『手続』だけではありません。
家裁が変更を認める基準,についても同じです。
条文上は『この利益のために必要がある』とだけ記載されています。
判断基準は,原則的に『親権者の指定』と同様です。
詳しくはこちら|親権者,監護権者の指定は『子の利益』により判断される
この点『変更』の場合は『事情が大きく代わって現状が不合理』という状態であることが必要です。

<親権者『変更』での判断の特徴>

あ 方向性

『監護の継続性』を重視する

い 個別事案

監護態勢・監護意思・親権者としての適格性に優劣はない
3歳児なので『監護の継続性』を重視する
→『維持』=親権者変更をしない
※札幌高裁昭和61年11月18日

4 面会交流の妨害→親権者の変更を認めた事例|福岡家裁平成26年12月4日

親権者の変更を認めたケースの中でも,その理由が『面会交流の妨害』というレアケースを紹介します。

<事案|離婚時の子供に関する合意内容>

あ 親権者

親権者は母親とする=母親が子供(小学生)を引き取る

い 面会交流

子供と父親との面会交流を月1回実施する

ここまではごく一般的な経緯です。
離婚後の面会交流でちょっと異常な状況となってきました。

<親権者変更の申立|経緯>

あ 面会交流の状況

子供が面会交流を拒否する態度をみせていた

い 父親の主張

母親が子供に,面会交流を拒絶するよう仕向けている
親として不適切である
親権者を変更すべきである

5 親権者変更申立における『試行的面会交流』|福岡家裁平成26年12月4日

親権者変更の手続では『子供の状況』が,判断のために重要となります。
試験的に『別に住む親』と子供の面会交流が行われることが多いです。

<家裁の審理>

あ 『試行的面会交流』

家裁内のプレイルームで面会交流を2回実施した
プレイルームには父親と子供だけが入る
この状況をマジックミラー越しに母親が見ている(立ち会う)

い 子供の状況変化
1回目 父親と2人で遊んだ
2回目 子供が面会交流を拒否した

詳しくはこちら|試行的面会交流|子供の意思×調査場所|同居親の誘導を見ぬいた判例
この事案では,1回目は『父親と仲良し』→2回目は『拒否』と,大きく変動しました。

6 『監護親への忠誠心→別居親への拒否感』と認定・親権者を変更した|福岡家裁平成26年12月4日

この事案では,裁判所は『子供の態度の変化』に着目しました。

<裁判所の判断>

あ 事実認定

試行的面会交流の1回目の後,母親が子供に『(マジックミラーで)ママ見てたよ』と言った
そのため,子供は1回目の交流に強い罪悪感を抱いた
そして『母親に対する忠誠心を示すため』に,父親に対する拒否感を強めた

い 裁判所の評価

父親と子供の関係はもともと良好だった
面会を実施できない主な原因は母親にある
円滑な面会交流実現のためには親権者変更以外に手段がない
子供を『葛藤状態から解放』すべき

う 裁判所の判断(結論)

親権を父親・監護権を母親へ分属させる
※福岡家裁平成26年12月4日

7 面会交流妨害→子供を引き渡すという審判が出やすくなった|励起状態

上記判例は,結果として『親権者を変更した』という画期的なものです。
しかし『監護権者は母親のまま』です。
『親権・監護権の分属』という方法です。
『父親は子供を引き取れない』ということです。
精神的な効果はありますが,実質的には父親が得るものはあまりありません。
詳しくはこちら|『親権』の細かい内容|親権・監護権の分属|誤解が多いので条項化の際は要注意
ただし『面会交流妨害』への対策として『親権者変更申立』が位置付けられる,という意義はあります。
つまり『分属』ではない『親権者変更』の可能性も見出だせるのです。
要するに『面会交流を妨害したら子供を引き渡す』という判断が出やすい状態になっていると言えます。