【共有物分割訴訟における一括分割(複数の不動産・複数種類の財産を対象とする)】

1 共有物分割訴訟における一括分割

共有物分割訴訟では、複数の共有不動産、さらに、共有不動産とそれ以外の共有の財産をまとめて対象とすることができます。これにより、個々の不動産(財産)を2つ(以上)に分けることなく、現物分割(個別分割)をすることが可能になるという大きなメリットが生まれます。
現在では一括分割は当たり前のように認められていますが、実は、昔は否定されていたところ、少しずつ緩和する判例が続き、ようやく全面的に可能となった、という経緯があります。
本記事では、共有物分割訴訟における一括分割について説明します。

2 一団の建物+土地(敷地)の一括分割(個別分割)

まず、昭和45年最判は、複数の建物とその敷地について、一団の建物といえる場合に限り、一括分割を認めました。一団の建物の判定については、複数の建物が密接していることからこれを認めました。

一団の建物+土地(敷地)の一括分割(個別分割)

あ 一括分割(個別分割)を認める要件

・・・民法二五八条によつてなされる共有物のいわゆる現物分割は、本来は各個の共有物についての分割方法をいうものと解すべきであるが、数個の物であつても、たとえば、数個の建物が一筆の土地の上に建てられており外形上一団の建物とみられるときは、そのような数個の共有物を一括して、共有者がそれぞれその各個の物の単独所有権を取得する方法により分割することも現物分割の方法として許されるものと解するのを相当とする。

い 「一団の土地」の判定

そうだとすれば、本件分割の対象は、一筆の土地およびその地上に存在する三棟の建物であるところ、原審の確定した事実によれば、右は、三個の建物ではあるが、右一筆の土地上に互に相密接して建設された一群の建物であり、外形上一団の建物とみられるものであるから、このような数個の建物は一括して分割の対象とすることを妨げないものというべきである。
※最判昭和45年11月6日

う 具体的分割方法(原審・概要)

共有物分割の対象は1筆の土地と3個(棟)の建物であった
各共有者が「1個の建物+(分筆後の)敷地部分の土地」の単独所有権を取得する
詳しくはこちら|現物分割の全体像(典型例・価格賠償との組み合わせ・分割線の決定)

3 飛び地の一括分割(個別分割)

昭和45年最判は、あくまでも複数の不動産(建物)が外形上一団となっている場合に限定して一括分割を認めました。この判断は、昭和62年最判が変更しました。
昭和62年最判は、一団ではない場合でも、つまり離れた複数筆の土地(飛び地)でも、まとめて共有物分割の対象とすることができる、と認めたのです。

飛び地の一括分割(個別分割)

・・・分割の対象となる共有物が多数の不動産である場合には、これらの不動産が外形上一団とみられるときはもとより、数か所に分かれて存在するときでも、右不動産を一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも、現物分割の方法として許されるものというべきところ、・・・(最高裁昭和二八年(オ)第一六三号同三〇年五月三一日第三小法廷判決・民集九巻六号七九三頁、昭和四一年(オ)第六四八号同四五年一一月六日第二小法廷判決・民集二四巻一二号一八〇三頁は、右と抵触する限度において、これを改める。)。
※最判昭和62年4月22日

なお、昭和62年最判は、森林法が法令違憲であるという判断をした有名な判例です。そして、現物分割の結果、価値の過不足が生じた場合は金銭で調整する(賠償金の支払義務を負担させる)方法も認めています。
詳しくはこちら|部分的価格賠償の基本(昭和62年判例・法的性質・賠償金算定事例)

4 複数種類の財産の一括分割(平成9年最判・平成11年最判)

条文上、共有物分割の対象財産の種類は限定されていません。不動産の所有権、不動産の所有権以外の権利(賃借権など)、不動産以外の所有権など、財産(権利)が(準)共有となっていれば共有物分割の対象となります。
さらに、複数の共有の権利をまとめて共有物分割の対象とすること(一括分割)も認められます。実際によく使われるのは土地・建物・借地権(土地の賃借権)のうち2つ(や全部)の一括分割です。

複数種類の財産の一括分割(平成9年最判・平成11年最判)

あ 基本

共有である複数の財産をまとめて分割対象にできる

い 共有物分割の対象となる財産(権利)の具体例

ア 不動産イ 不動産以外の所有権ウ 所有権以外の権利(後記「う」) ※最判平成9年4月25日(建物+借地権)
※最判平成11年4月22日(土地+借地権)

う 準共有の意味(参考)

所有権以外の権利の共有を準共有と呼ぶ
詳しくはこちら|準共有の基本(具体例・民法と特別法の規定の適用関係)

5 複数の財産(権利)の一括分割の実例

実際に、借地権(賃借権)が、他の不動産(建物や土地)とセットになって共有物分割の対象となることはよくあります。前記の2つの判例の事案はどちらも借地権が分割対象の1つとなっていました。

複数の財産(権利)の一括分割の実例

あ 平成9年最判

ア 建物+借地権 X+Yの共有→原審は換価分割としたが最判はこれを破棄し差し戻した
※最判平成9年4月25日

い 平成11年最判

ア 土地 X公社+Yの共有→X公社の単独所有(最判が是認した)
イ 借地権 X町+Yの共有→X町に単独帰属(X町だけが賃借権者)(最判が是認した)
※最判平成11年4月22日

6 複数種類の財産の共有物分割の実例

実際の共有物分割訴訟は不動産(や不動産に関する権利)を対象とすることが多いですが、不動産とは関係ない権利が対象となることもあります。そして、不動産とともに不動産以外の権利もまとめて一括分割とする実例もあります。

複数種類の財産の共有物分割の実例

あ 基本的事項

複数の財産をまとめて共有物分割の対象とした

い 共有物分割の対象

ア 不動産イ 国債ウ 株式エ 金銭 ※東京地判平成27年11月26日

この裁判例の事案は、遺留分減殺請求の結果、物権共有となったため(遺産分割ではなく)共有物分割がなされたものです。
詳しくはこちら|遺留分減殺請求(平成30年改正前)の後の共有の性質と分割手続
現在では、法改正により遺留分侵害があった場合には、遺留分侵害額請求(金銭請求)ができる制度に変わっているため、物権共有となる(共有物分割をする)ことはなくなっています。
詳しくはこちら|遺留分の権利・効果の法的性質(平成30年改正による金銭債権化)

本記事では、共有物分割訴訟で複数の財産(不動産)を対象とする一括分割の方法について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に共有不動産(共有物)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【全面的価格賠償における賠償金支払に関するリスク(履行確保措置の必要性)】
【一物一権主義と区分所有(区分所有権の成立の基本と解消)】

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