1 ノーマル遺言の弱点→『遺言代用信託』のメリット
2 遺言代用信託|個別的な目的・機能を設定できる
3 『遺言による所有権移転』と『信託』の違い
4 遺言代用信託|受益者連続型信託を活用すると便利
5 遺言代用信託は長期化する→注意すべきことがある
6 『遺言信託』|ハードル・デメリット|『遺言代用信託』とは異なる
7 『後継ぎ遺贈型遺言』は無効とされている
8 『ペットへの相続』のような仕組みも信託で作れる

通常の遺言のデメリットを『遺言代用信託』を使って回避する方法を説明します。

1 ノーマル遺言の弱点→『遺言代用信託』のメリット

最初に,通常の遺言の『弱点』についてまとめます。

<通常の遺言の弱点>

あ 遺言者の認知症→財産デッドロック

遺言者が認知症となると『誰も財産を動かせない』状態となる
詳しくはこちら|認知症→財産デッド・ロック|基本|誰も財産を動かせない・解決・回避策

い 財産承継者の認知症→財産デッドロック

『認知症を発症した者』に財産が渡ってしまうケース
例;夫が遺言を作成する時点で『妻が認知症になる可能性』が高まっている

う 想定外の人に財産が渡る

『相続で財産を承継した者』が後で亡くなった場合
→財産が『想定外』の者に渡ってしまうケース

え 財産を承継した者が『想定外の使い方』をしてしまう

例;サポートが必要な者の『扶養』に資金を使ってくれない

それぞれの具体例については,その予防法とともに別記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺言代用信託|典型事例・スキーム|信託条項例

2 遺言代用信託|個別的な目的・機能を設定できる

『遺言』と同様の機能を『信託』を使って実現することができます。
『信託』として『亡くなった時の財産の承継先の指定』を設定するのです。
これを『遺言代用信託』と呼びます。
遺言や生前贈与では実現できない,個別的な設定・機能を実現できるのです。
当然ですが,個別的に最適化した設定・機能は『信託契約の内容』として構築します。
具体的には『信託契約書』の条項,として規定することになります。
信託だとどのようなことができるのか,については次に説明します。

3 『遺言による所有権移転』と『信託』の違い

『遺言代用信託』は『遺言』と似ているものですが,『遺言』より有利なことが多いです。
『遺言』の場合は,原則的に,単純な権利(所有権)の移転だけしか指定できません。
ここで『遺言=所有権(の移転)』と『信託』の違いをまとめておきます。

<『遺言=所有権移転』vs信託|信託だとできること>

あ 収益を受け取る権利と元本(を受け取る)の権利を分離
い 時間的制限

例;一定の条件による受益権消滅条項

う 譲渡禁止
え 特定の者による強制譲渡

例;受益権指定権者

お 亡くなった後に生じる相続コントロール

例;受益者連続型信託

4 遺言代用信託|受益者連続型信託を活用すると便利

遺言代用信託として『受益者連続型信託』という手法を活用すると便利です。
複数の『世代』の財産の承継方法を指定できるのです。税務的な扱いが特殊なので注意が必要です。
詳しくはこちら|受益者連続型信託|遺留分侵害回避・遺言代用信託での活用・活用事例

5 遺言代用信託は長期化する→注意すべきことがある

遺言代用信託や受益者連続型信託は,一般的に,長期間続きます。
長期間継続することから,将来的に生じることについて類型的に対策を取っておくと良いです。
典型的なものは『受託者が亡くなる』という想定です。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|子供に知らせずに生前贈与したい→信託の利用で実現できる

6 『遺言信託』|ハードル・デメリット|『遺言代用信託』とは異なる

『遺言代用信託』とは別に『遺言信託』というものもあります。
これは『遺言の中に信託の設定を記載しておく』というものです。
当然,相続時に信託がスタートする,ということになります。
詳しくはこちら|遺言による財産の承継の種類=相続分・遺産分割方法の指定・遺贈・信託

遺言の一環になります。
そのため,次のようなハードル,デメリットがあります。

<『遺言信託』のハードルやデメリット>

あ 厳格な様式の規定の適用がある

別項目;遺言は後から無効となることがある

い 財産の引き渡しには遺言執行者が必要

※民法1012条参照

う 家裁の検認手続が必要

ただし『公正証書遺言』の場合は検認不要である
※民法1004条参照

一方,『遺言代用信託』は,通常の形態は『信託契約』です。
上記のようなハードル,デメリットは該当しません。
また,信託契約の時点で信託がスタートします。
つまり『遺言者(に相当する方)』の生前にスタートします。
いずれにしても遺言信託と似ていますが違うところも多いのです。

7 『後継ぎ遺贈型遺言』は無効とされている

以上で説明した受益者連続型信託を単純化して遺言で同様の設定をすることが発想してあります。
通常の遺言は,遺言者が亡くなった時の承継者(受遺者)を指定するものです。
これに対して,その次の相続,での財産の承継先を指定するという発想です。
つまり,(1次的な)相続人や受遺者が亡くなった時に,誰が承継するか,までを指定するということです。
このような遺言を『後継ぎ遺贈型遺言』と呼びます。

<後継ぎ遺贈型遺言の条項例>

遺言者が所有する不動産甲について,遺言者が死亡した場合には長男に相続させる。
次に長男が死亡した場合にはその不動産を次男に相続させる。
さらに次男が死亡した場合にはその不動産を孫に相続させる。

後継ぎ遺贈型遺言の有効性については,いくつかの説がありますが,実務上は否定されています。
理由は,そもそも遺言は遺言者の相続時の承継先だけを拘束できる,という遺言一般の本質論です。
その先の承継内容については,遺言者の希望に過ぎず,拘束力はない,ということになります。
信託では可能でも,通常の遺言では『次の』相続については決められないという結論です。

8 『ペットへの相続』のような仕組みも信託で作れる

ペットを飼う方にとっては,亡くなった後のペットのケア,が心配事と言えます。
財産は十分にあっても,肝心の飼育・看護が行き届くかどうかは別問題です。
『より確実にペットが幸せになる』ための法的な仕組みはいくつかの方法があります。
その中で『信託』をうまく活用することもできます。
『飼い主死亡後のペットの幸せ』という意味では『ペットへの相続』のような仕組みとも言えます。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|飼い主死後のペットの幸せ|里親システム=里親+里親管理人+飼い主承継者