1 養育費・婚姻費用の算定における住居費ゼロ(実家居住など)の扱い
2 住居費がゼロとなる状況
3 住居費ゼロの養育費・婚姻費用への影響
4 住居費ゼロと住宅ローン返済の組み合わせ(概要)

1 養育費・婚姻費用の算定における住居費ゼロ(実家居住など)の扱い

実務では,養育費や婚姻費用の金額を標準的算定方式で算定する(簡易算定表を使う)ことが多いです。
標準的算定方式では,(元)夫婦の両方が標準的な住居費を支出していることを前提としています。
詳しくはこちら|標準的算定方式による養育費・婚姻費用の算定(計算式・基礎収入割合・生活費指数)
ところで,別居中や離婚後には,(元)夫婦の一方が実家に住んでいて住居費(家賃)がかかっていないということもよくあります。
このように住居費の負担がない場合には,養育費や婚姻費用の金額に影響するかどうか,という問題があります。本記事ではこれについて説明します。

2 住居費がゼロとなる状況

住居費の負担をしていない状況とは,具体的には実家に住んでいるとか実家(親)の持ち家に住んでいるというようなケースが典型です。いずれにしても家賃や住宅ローンの返済のような住居の維持のための出費がないという状況のことです。

<住居費がゼロとなる状況>

あ 具体例

実家に居住している
実家の持ち家で居住している

い 経済的状況

当事者が現実に住居費を支払っていない(負担していない)

3 住居費ゼロの養育費・婚姻費用への影響

一般的な養育費や婚姻費用の算定方法(標準的算定方式)では,標準的(平均的)な住居費を支出していることを前提としています。
住居費がゼロということは,前提が違うので,計算方法や計算結果を修正する必要があるようにも思えます。
一方で,実家から家賃相当の利益をもらっていると考えることもできます。一般的に実家からの援助は養育費や婚姻費用では考慮しません。
結局,住居費の負担がないという事情を,養育費や婚姻費用の金額に反映させるかさせないかという問題について,統一的・画一的な見解はありません。多少の調整材料の1つにするという程度です。

<住居費ゼロの養育費・婚姻費用への影響>

あ 婚姻費用算定で考慮する方向性

婚姻費用の算定では標準的な住居費を支出していることが前提となっている
詳しくはこちら|標準的算定方式による養育費・婚姻費用の算定(計算式・基礎収入割合・生活費指数)
標準的な住居費分の修正(考慮)が必要である

い 婚姻費用算定で考慮しない方向性

実家から援助を受けているのと同じ状況である
→考慮しない
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用の金額の算定における親族(実家)からの援助の扱い

う 結論

簡易算定表の幅の範囲内で金額を調整する事情の1つと位置づける
※秋武憲一著『離婚調停 第3版』日本加除出版2018年p270,271

4 住居費ゼロと住宅ローン返済の組み合わせ(概要)

以上のように,住居費がかかっていない状況と,住宅ローンの返済の状況の組み合わせで,さらに複雑になることも多いです。
住宅ローンで購入した自宅(マイホーム)に権利者が居住し,権利者が住宅ローンを支払っているケースでは,原則的に住宅ローン返済を養育費や婚姻費用の算定で考慮しません。
しかし,義務者が実家に居住していて住居費がかかっていない場合には,経済的な負担のバランスが崩れるとも考えられるので,ある程度金額を調整する(考慮する)こともあります。

<住居費ゼロと住宅ローン返済の組み合わせ(概要)>

あ 権利者の状況

権利者が(住宅ローンで購入した)自宅に居住している
権利者が住宅ローンを返済(負担)している

い 義務者の状況

義務者が実家に無償で居住している
=義務者は住居費を要しない状況にある

う 婚姻費用への影響

婚姻費用の金額の算定において(『あ・い』の事情を)考慮することもある
※森公任編著『簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集』新日本法規出版2015年p164
詳しくはこちら|住宅ローン返済の扱いの居住者と返済者によるパターン分類

本記事では,養育費や婚姻費用の計算における住居費がかかっていないという事情の扱いについて説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に養育費や婚姻費用に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。