1 養育費・婚姻費用の金額の算定における親族(実家)からの援助の扱い
2 親族からの援助の収入としての扱い(否定)
3 祖父の資力の影響を否定した裁判例
4 潜在的稼働能力による収入の擬制(参考)

1 養育費・婚姻費用の金額の算定における親族(実家)からの援助の扱い

養育費や婚姻費用の金額を算定する際,(元)夫と妻の両方の収入を使います。
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金の請求の基本(家裁の手続・簡易算定表)
中には,親族(実家)から生活費の援助(仕送り)を受けている方もいます。
本記事では,このような親族からの援助の扱いについて説明します。

2 親族からの援助の収入としての扱い(否定)

結論としては,親族からの援助を収入とみなして,養育費・婚姻費用の金額の計算で使うことは実務では行われていません。
このような援助は好意による贈与です。援助する者(贈与者)の判断1つで打ち切られるものです。定期的に続くことが確実とはいえません。
経済状態によっては,扶養の性質を持つこともありますが,その場合でも,親子や夫婦の間の扶養よりも1ランク下のものです。
このような理論的な位置づけから,援助を(給与などと同じ)収入とみなす扱いにはなりません。

<親族からの援助の収入としての扱い(否定)>

あ 親族からの援助の法的位置づけ

親族(実家)からの援助について
例=親族から毎月10万円程度の援助を受けている
親族の好意に基づく贈与である
必ずしも永続するものではない
受贈者の利益のみを目的とする

い 複数の扶養義務の優劣

夫婦・親子間の婚姻費用・養育費の分担義務(生活保持義務)は,一般的な親族が負う扶助義務(生活扶助義務)に優先する

う 養育費・婚姻費用の算定への影響

婚姻費用・養育費の算定において
親族からの援助は,収入に加算しない
養育費・婚姻費用の算定にあたって考慮すべき特別事項とはならない
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p100
※森公任編著『簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集』新日本法規出版2015年p90,91(千葉家裁平成22年8月)

3 祖父の資力の影響を否定した裁判例

親子間の扶養請求で,親族の援助をカウントしない(資力をアテにしない)という判断をした裁判例があります。前記の理論的な扱いが適用されたものです。

<祖父の資力の影響を否定した裁判例>

子の父に対する扶養料請求において
祖父に資力があるとしても,父は子の扶養義務を免れない
※大阪高裁昭和33年2月25日

4 潜在的稼働能力による収入の擬制(参考)

実際に親族の援助に頼って生活している状況を別の角度から見ると,就労できるのにしていないといえることが多いです。
一般的に稼げるのに合理的な理由なく稼いでいない場合には,得られるはずの収入を推定(擬制)する扱いがなされます。

<潜在的稼働能力による収入の擬制(参考)>

親族の援助に頼って稼働(就労)していない場合
潜在的稼働能力があることを理由として収入の擬制を行うことはある
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用の算定における潜在的稼働能力による収入の擬制
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定−裁判官の視点にみる算定の実務−』新日本法規出版2018年p100
※東京・大阪養育費等研究会稿『簡易迅速な養育費等の算定を目指して〜養育費・婚姻費用の算定を目指して〜』/『判例タイムズ1111号』2003年4月1日p292
※森公任編著『簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集』新日本法規出版2015年p91

本記事では,養育費・婚姻費用の金額の計算での,親族(家族)からの援助の扱いについて説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
実際に養育費や婚姻費用の金額の計算に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。