1 養育費・婚姻費用を計算によって求める方法
2 養育費を算定する計算式
3 婚姻費用分担金を算定する計算式
4 給与所得者の基礎収入割合(従来)
5 給与所得者の基礎収入割合(平成27年データ)
6 事業所得者の基礎収入割合
7 生活費指数
8 養育費を計算する具体例
9 簡易算定表の利用(概要)
10 標準的算定方式(簡易算定表)の情報ソース
11 標準的算定方式への批判(日弁連新算定方式・参考)

1 養育費・婚姻費用を計算によって求める方法

養育費・婚姻費用分担金の金額を原理を元にして計算する方法は複雑です。
詳しくはこちら|総収入の認定と基礎収入の意味や計算方法(公租公課・職業費・特別費の控除)
そこで実務では,簡易算定表が使われることが多いです。
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金の金額算定の基本(簡易算定表と具体例)
この簡易算定表は,簡略化した計算方法(標準的算定方式)による計算結果を早見表にしたものです。
本記事では標準的算定方式を使って,計算によって養育費・婚姻費用の金額を出す具体的な方法を説明します。

2 養育費を算定する計算式

一般的な養育費の計算方法をまとめます。

<養育費を算定する計算式>

あ 基礎収入

義務者・権利者について
基礎収入
=総収入×『基礎収入割合(後記※1,2)』

い 代入

X=義務者の基礎収入
Y=権利者の基礎収入

う 子の生活費

子の生活費
=X ×(子の指数合計)/(義務者+子の指数合計)
※生活費指数については後記※3による

え 養育費分担額

義務者が支払う養育費分担額
=『子の生活費』× X/(X+Y)
※東京・大阪養育費等研究会稿『簡易迅速な養育費等の算定を目指して〜養育費・婚姻費用の算定を目指して〜』/『判例タイムズ1111号』2003年4月1日p291

3 婚姻費用分担金を算定する計算式

一般的な婚姻費用分担金の計算方法をまとめます。

<婚姻費用分担金を算定する計算式>

あ 基礎収入

養育費の計算と同じ

い 権利者の必要額

権利者の必要額Z
=(X+Y)× (権利者側の指数合計)/(全体の指数合計)

う 婚姻費用分担額

義務者が支払う婚姻費用分担額
=Z − Y

え 住居費の反映(概要)

義務者が権利者の住居費を負担している場合
→この負担額をさらに差し引くこともあり得る
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用の算定における住宅ローンの返済の扱い(基本)
※東京・大阪養育費等研究会稿『簡易迅速な養育費等の算定を目指して〜養育費・婚姻費用の算定を目指して〜』/『判例タイムズ1111号』2003年4月1日p293

以上の計算で使う係数などは,以下整理します。

4 給与所得者の基礎収入割合(従来)

給与所得者の基礎収入割合は,総収入に占める最低限の出費(公租公課・職業費・特別経費の合計額)の割合を100%から差し引いたものです。統計データを元にして計算します。計算結果を収入ゾーン別にまとめた表を挙げます。
なお,これは標準的算定方式が作られた平成15年(に近い時期)の統計データが元になっています。

<給与所得者の基礎収入割合(従来・※1)>

給与収入 基礎収入割合
〜2000万円 34%
〜1350万円 35%
〜850万円 36%
〜700万円 37%
〜500万円 38%
〜250万円 39%
〜150万円 40%
〜125万円 41%
〜100万円 42%

※松本哲泓稿『婚姻費用分担事件の審理−手続と裁判例の検討』/『家庭裁判月報 平成22年11月=62巻11号』最高裁判所事務総局p57

5 給与所得者の基礎収入割合(平成27年データ)

ところで,平成23〜27年(2011〜2015年)の統計データを元にして給与所得者の基礎収入割合をまとめたものもあります。前記の従来の基礎収入割合が作られた後,約15年の時代の流れで公租公課やそれ以外の出費金額(の統計データ)が変わってきています。総収入が200万円未満のゾーンを除いて,出費金額が下がっています。
詳しくはこちら|公租公課・職業費・特別経費の割合の統計データ(平成14年と平成27年)
このように前提となる出費金額が下がった結果,基礎収入割合はアップしています。

<給与所得者の基礎収入割合(平成27年データ)>

総収入 基礎収入割合
1022万2000円〜 38.19%
〜1022万2000円 39.19%
〜837万0000円 39.49%
〜726万4000円 39.75%
〜634万8000円 40.72%
〜559万0000円 41.05%
〜488万2000円 40.73%
〜419万6000円 41.26%
〜352万0000円 43.07%
〜266万0000円 40.41%

※日弁連新算定方式提言p22『別表2』(2011〜2015年・現算定方式・給与所得者)
詳しくはこちら|日弁連が提唱する養育費・婚姻費用の新算定方式と実務的な評価(運用状況)

6 事業所得者の基礎収入割合

事業所得者の基礎収入割合を収入ゾーン別にまとめた表です(平成15年当時の従来のものです)。

<事業所得者の基礎収入割合(※2)>

事業所得 基礎収入割合
〜1409万円 47%
〜1144万円 48%
〜975万円 49%
〜870万円 50%
〜526万円 51%
〜421万円 52%

※松本哲泓稿『婚姻費用分担事件の審理−手続と裁判例の検討』/『家庭裁判月報 平成22年11月=62巻11号』最高裁判所事務総局p57

7 生活費指数

基礎収入の算定の後の分担のプロセスで使う生活費指数は,統計上のデータを元に2種類に分けて整理されています。

<生活費指数(※3)>

あ 生活費指数|表
立場 年齢など 指数
0〜14歳 55
15〜19歳 90
それぞれ1人につき 100

※東京・大阪養育費等研究会稿『簡易迅速な養育費等の算定を目指して〜養育費・婚姻費用の算定を目指して〜』/『判例タイムズ1111号』2003年4月1日p290

い 子の生活費指数|注意

子が複数の場合
→それぞれの子について指数を出す

8 養育費を計算する具体例

実際に計算をする状況をサンプルで説明します。
養育費を実際に計算してみます。

<養育費を計算する具体例>

あ 前提事情

15歳・10歳の子どもがいる
2人とも母=権利者が引き取った
権利者は給与収入300万円である
父=義務者は給与収入900万円である

い 基礎収入

ア 義務者
900万円×35%
=315万円
イ 権利者
300万円×38%
=114万円

う 子の生活費

315万円×(55+90)/(100+55+90)
=186.4万円

え 養育費分担金

186.4万円×315万円/(315万円+114万円)
=136.9万円
これを12で割った11.4万円が月額となる

9 簡易算定表の利用(概要)

以上の標準的算定方式は,原理的な計算方法(実額方式)を簡略化したものです。それでも実際に計算すると手間がかかります。
そこで,実務では,標準的算定方式の計算結果を早見表としてまとめたものがよく使われます。簡易算定表と呼ばれるものです。
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金の金額算定の基本(簡易算定表と具体例)

10 標準的算定方式(簡易算定表)の情報ソース

以上で説明した標準的算定方式による養育費・婚姻費用の計算方法は,裁判官を中心とするグループが提唱(公表)したものです。作成したグループや公表した掲載誌をまとめておきます。

<標準的算定方式(簡易算定表)の情報ソース>

あ 作成者

東京・大阪養育費等研究会

い 研究員(構成員)

判事6名
東京高裁,大阪高裁,東京地裁,大阪地裁,東京家裁,大阪家裁

う オブザーバー

東京家裁次席家裁調査官
大阪家裁次席家裁調査官

え タイトル

『簡易迅速な養育費等の算定を目指して〜養育費・婚姻費用の算定を目指して〜』

お 掲載誌

『判例タイムズ1111号』2003年4月1日

11 標準的算定方式への批判(日弁連新算定方式・参考)

以上で説明した標準的算定方式に対して,日弁連は批判し,改良した算定方式を提唱しています。
しかし,日弁連新算定方式は実務でそのまま使われる状況にはなっていません。ただし,標準的算定方式の中で使っている統計データが古いので,新しいデータを使うと出費金額が下がり,基礎収入割合が上がることが多いです(前述)。
日弁連新算定方式については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|日弁連が提唱する養育費・婚姻費用の新算定方式と実務的な評価(運用状況)

本記事では,養育費・婚姻費用を計算によって算定する具体的な方法(算定式)を説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証によって結論が違ってくることもあります。
実際に養育費や婚姻費用の金額の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。