1 扶養義務者が複数いる場合,順序を定めることになる 
2 過去の立替扶養料の求償
3 扶養義務者間の求償の始期の見解の種類
4 過去の生活保持義務の始期の傾向
5 過去の生活扶助義務の始期の傾向
6 申立から5年前の時点を始期とした裁判例

1 扶養義務者が複数いる場合,順序を定めることになる 

扶養義務者は,民法上,一定の範囲が規定されています。また,扶養義務者が複数存在することも想定されています。
詳しくはこちら|一般的な扶養義務(全体・具体的義務内容の判断基準)
詳しくはこちら|親子と夫婦間の扶養義務の種類と内容(まとめ)
そして,扶養義務者間の順序については,当事者間で協議して定めることとされています。
さらに,この協議が成立しない場合は,家庭裁判所が非訟事件として扱うこととされています。
つまり,複数の扶養義務者が存在する場合,順序割合が定められるべきなのです。

2 過去の立替扶養料の求償

複数の扶養義務者がいるけれど,順序分担を決めていないということも多いです。
とりあえずその中の1人が負担して,後から求償するということになります。
これは,扶養料に関する家庭裁判所の調停・審判で決めることができます。

<過去の立替扶養料の求償>

あ 請求の可否(可能)

過去の扶養の負担について
複数の扶養義務者間で求償を請求することについて
→請求は認められる

い 裁判手続の種類

通常裁判所が判決手続で判断することはできない
家庭裁判所が審判で定める
※最高裁昭和42年2月17日

3 扶養義務者間の求償の始期の見解の種類

複数の扶養義務者同士で,立て替えた扶養料を請求する場合,いつの分まで遡れるのかという問題が生じます。
これは,一般的な扶養料の請求における問題と同じものです。
基準となる時点はいくつかあります。

<扶養義務者間の求償の始期の見解の種類>

あ 扶養義務者間の求償の始期

扶養義務者の求償における始期について
→扶養権利者からの扶養料請求の始期(い)と同様である

い 一般的な支払の始期の見解の種類

扶養権利者からの過去の扶養料請求の始期について
『ア〜カ』のような見解がある
ア 扶養要件具備の時点(必要発生時)
イ 扶養要件具備を知りえた時点
ウ (裁判外の)請求の時点
エ 調停・審判の申立から5年前の時点(後記※1)
オ 調停・審判申立の時点
カ 審判の時点
キ 審判確定の時点
※『判例タイムズ637号』p189
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金請求の支払の始期(いつまでさかのぼるか)

実際に始期として選択される時点の傾向について,次に説明します。

4 過去の生活保持義務の始期の傾向

一般的な過去の扶養料請求の始期として選ばれる時点には傾向があります。
まず,生活保持義務に該当する扶養料請求では,扶養要件具備の時点までさかのぼるという判断がなされる傾向があります。

<過去の生活保持義務の始期の傾向>

あ 生活保持義務の種類

ア 未成熟子扶養
イ 夫婦間の扶養

い 生活保持義務の具体例

養育費・婚姻費用分担

う 始期についての有力説

過去の生活保持義務の支払の始期について
扶養要件具備の時点とする見解が有力である
※『判例タイムズ637号』p189

5 過去の生活扶助義務の始期の傾向

生活扶助義務に該当する扶養料請求では,請求した時点までしかさかのぼらないという判断がなされる傾向があります。
もちろん,個別的事情によって,もっと前の時点までさかのぼることもあります。

<過去の生活扶助義務の始期の傾向>

あ 生活扶助義務の種類

親族扶養

い 始期についての通説

過去の生活扶助義務の支払の始期について
請求の時点とする見解が通説的である
※『判例タイムズ637号』p189

う 他の見解

『い』よりも前の時点までさかのぼる判断も多い
※東京高裁昭和61年9月10日(後記※1)
※最高裁昭和26年12月13日
※最高裁昭和40年6月30日
※最高裁昭和42年2月17日

6 申立から5年前の時点を始期とした裁判例

実際に,生活扶助義務に該当する兄弟姉妹間の扶養料(の求償)について,請求の時点よりも前までさかのぼって請求を認めた裁判例があります。
扶養要件具備の時点まではさかのぼっていません。

<立から5年前の時点を始期とした裁判例(※1)>

あ 裁判所の判断

兄弟姉妹間の過去の立替扶養料の求償について
調停申立時から5年前の時点を始期とした

い 始期の位置付け

扶養要件具備時と請求時の中間あたりである
定期給付債権の消滅時効の期間に合わせた結果となっている
※東京高裁昭和61年9月10日

本記事では,立て替えた過去の扶養料の求償の始期について説明しました。
実際には,個別的事情の主張や立証のしかたによって判断が大きく変わるということがあります。
現実に扶養料請求の問題に直面している方は,本記事の内容だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。