1 目隠しを設置する設備の種類
2 民法改正による条文の変更と趣旨
3 窓・縁側・ベランダの判断基準
4 サービスバルコニーへの目隠し設置(肯定裁判例)
5 通路への目隠し設置(否定裁判例)

1 目隠しを設置する設備の種類

境界から1メートル以内の窓やベランダには目隠しを設置する義務が課せられることがあります。
詳しくはこちら|境界から1m以内の窓・ベランダには目隠しを設置する義務がある
この点,目隠しを設置する対象となる建物の設備は『窓・縁側・ベランダ』と規定されています。
実際には,これらに該当するかどうかがはっきりしないこともよくあります。
本記事では,『窓・縁側・ベランダ』という設備の種類についての規定とその解釈について説明します。

2 民法改正による条文の変更と趣旨

目隠し設置義務は平成16年の民法改正で条文が変わりました。
この時,目隠しを設置する設備として『ベランダ』が追加されました。

<民法改正による条文の変更と趣旨(※1)>

あ 改正前の規定

平成16年の民法改正前において
『窓・縁側』だけが規定されていた
『ベランダ』は規定されていなかった

い 改正前の解釈

『縁側』にベランダが含まれる裁判例が支配的であった
※名古屋高裁昭和56年6月16日
※名古屋地裁昭和54年10月15日
※東京地裁平成5年3月5日;前提として

う 法改正

平成16年の民法改正によって
条文上『ベランダ』が含まれることが明示された
当時の建物の構造やその呼称の変化を受けた改正である
実質的な内容に変化はない
※東京地裁平成19年6月18日
※吉田徹『改正民法ハンドブック』ぎょうせいp26

3 窓・縁側・ベランダの判断基準

目隠し設置義務の対象となるのは,現在の条文上では『窓・縁側・ベランダ』と規定されています。
建物の内部とその延長がこれに該当すると解釈されています。

<窓・縁側・ベランダの判断基準>

あ 前提事情

ベランダ(など)に該当するかどうかが明確でない設備もある
→次の基準に該当する設備をベランダと同じように扱う

い 判断基準

建物の内部の延長というべき設備である
日常的・恒常的に他人の宅地を見通すことができる
外部に通じる通路ではない
客観的に判断する
※東京地裁平成19年6月18日

実際に『窓・縁側・ベランダ』に該当するかどうかが判断された具体例を以下説明します。

4 サービスバルコニーへの目隠し設置(肯定裁判例)

いわゆるサービスバルコニーについて『ベランダ』に該当すると判断された実例があります。
ただし,ごく一般的な『ベランダ』よりも人が立ち入る頻度が低いので,設置すべき目隠しのサイズは小さめで良いと判断されています。

<サービスバルコニーへの目隠し設置(肯定裁判例)>

あ 設備の状態

境界線から1メートル未満の距離に次の設備がある
通路状となっているバルコニーである
『サービスバルコニー』『室外機置場』と呼んでいる
エアコンの室外機置場として利用しているに過ぎない
日常的な利用を予定したものではない
出入口は高さ約150センチメートルの小さいものである

い 設備のサイズ

ア 幅
狭いところは約55センチメートル
広いところは1メートル以上
イ 長さ
3メートルを超える

う 裁判所の判断(『ベランダ』該当性)

一旦バルコニーに立ち入ればそこに滞留できる
共用の通路とは異なる
容易に隣地のマンションの室内を眺望できる
→『ベランダ』に該当する

え 裁判所の判断(設置する目隠しのサイズ)

設置義務の内容について
設置すべき目隠しの大きさはある程度小さいものとした
原告の主張よりも小さめの大きさの範囲で請求を認めた

お 目隠しの具体的内容

ア 目隠しのサイズ
3階のバルコニー
→手すり上部に1メートルの高さの範囲
4階・5階のバルコニー
→バルコニー床面から2メートルの高さの範囲
イ 目隠しの材質
中等の品質の材質をもって足りる
→アルミ形材と同等のもの
※東京地裁平成19年6月18日

5 通路への目隠し設置(否定裁判例)

建物の通路は目隠し設置義務の対象ではないと判断されます。

<通路への目隠し設置(否定裁判例)>

あ 設備の状態

境界線から1メートル未満の距離に次の設備がある
区分住宅(マンション)の共用の通路である
階段から各戸につながる通路である
各住宅の一部ではない

い 裁判所の判断

独立の通路である
居住空間の延長とみることはできない
通路は『縁側』には該当しない
※大阪地裁昭和55年11月17日

う 補足説明

判決当時は条文に『ベランダ』の規定がなかった
しかし当時も解釈上『ベランダ』は含まれていた
法改正による解釈の変更はないと言える(前記※1)

本記事では,目隠しを設置する設備の種類について説明しました。
実際には個別的な事情によって,判断が大きく変わることもあります。
実際に目隠し設置に関する問題に直面している方は,本記事の内容だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。