男女の交際を終えて別れる場合,法的な責任が生じるのでしょうか。

1 交際自体は『自由恋愛』なので,法的拘束力とは関係ない
2 妊娠金銭貸し借りがあると責任(清算)が生じる
3 交際解消の手切金への課税

1 交際自体は『自由恋愛』なので,法的拘束力とは関係ない

単純に『交際期間が長い』とか『子供ができた』ということだけから結婚する義務が生じるわけではありません。
逆に,結婚する約束をしている(=婚約),とか,夫婦という意識で共同生活をしている(=内縁)という場合は,一定の法的な責任があります。
婚約成立や内縁の状態から,一方的に関係を解消すると,違法性があるとして慰謝料が生じます。
別項目;結婚するかどうかは自由だけど婚約成立後は法的責任が生じる
別項目;内縁関係に適用される規定;基本
コラム;価値観の強要を避ける裁判所の本心は恋愛の自由

結局は,婚約(成立)でもなく,内縁関係でもない,という場合は,一方的な事情で別れることになっても,法的には慰謝料などの責任は発生しないことになります(後掲判例1)。

これはあくまでも法的な解釈論です。
気持ちとして,一定の責任を取ることは自由です。
現実に,気持ちとして責任を感じて,一定の金銭の支払がなされることはあります。
一般的には手切金と呼んでいます。
これは法的な言葉ではありません。

なお,手切金の支払は自由ではありますが,税務上は自由にはならないことがあります(後記『3』)。

2 妊娠金銭貸し借りがあると責任(清算)が生じる

交際終了自体ではなく,これに伴う一定の行為に関して法的責任が認められることがあります。

(1)出産して子供がいる場合は,認知扶養料請求

仮に交際相手との間に子供が生まれていれば,扶養(料)の請求が可能です。
この場合,認知されていることが前提になります。
自発的に任意認知をしない場合は,強制認知という手段もあります。
詳しくはこちら|強制認知|家裁の調停・訴訟|協力しない『父』への認知請求
詳しくはこちら|認知の効果|扶養|時間制限・金額決定の家裁の手続・算定方法

(2)妊娠→中絶,となった場合は,身心のダメージを分担,という趣旨の慰謝料が生じる

妊娠が発覚し,2人で考えた結果,中絶する,というケースもあります。
この場合,女性だけが身心のダメージを受けます。
この部分については,お互いに負担を分担する,という考え方になります。
慰謝料が認められます。
ただ,責任としては男女双方にあるので,折半とされることが多いです。
別項目;中絶;の意向が異なる場合

(3)生活費の分担を清算する義務

共同生活の費用を一方的に立替えている場合も,一定割合で返還請求が認められる可能性もあります。
これは2人で負担を分けるという約束をしたことが前提になります。

とは言っても,明確に文書にしてないとダメ,ということではありません。
2人の経済状況を総合的に考えて,一時的に立替えた後で清算する趣旨だったと認められる状況であれば,返還請求が認められるでしょう。

(4)不倫関係などの違法性があると清算不要となる

男女交際に,不倫などの違法・不当な背景があると,清算しなくて良いこともあります。
不法原因給付という特殊なルールがあるのです。
これは別に説明しています。
別項目;男女交際における『民事的違法』;公序良俗違反,不法原因給付,慰謝料

3 交際解消の手切金への課税

交際解消に伴って手切金が支払われた場合に,課税の対象となる場合があります。

手切金は,法律的な意味のある言葉ではありません。
その内容・法的な意味によって課税上の扱いが変わってきます。

(1)慰謝料については課税されない

婚約破棄や内縁破棄(解消)であれば,その事情によっては,違法性あり→慰謝料が成立,ということになります。
慰謝料については,基本的に非課税です。
別項目;慰謝料への課税は基本的にない

(2)生活費の分担の清算については課税されない

例えば,交際中に同居していた賃貸マンションの家賃やその他の共通の費用を一方が立て替えていたような場合,返還として,非課税となります。
正確には,貸金の返還または不当利得金の返還ということになります。

(3)子供の扶養料については課税されない

一方,子供ができていたような場合には,養育費(扶養料)の前払い金という扱いとも考えられます。
相当の金額の範囲内であれば,非課税となりましょう。
別項目;扶養料,養育費への贈与税課税;基本,一括払い,認知未了

(4)法的根拠がない,純粋な手切金については贈与税の対象となる

(純粋な)交際の解消では,違法性なし→慰謝料が成立しない,ということになります。
そうすると,基本的に,手切金→法的な意味の付けられないお金の動き→贈与(とみなす),ということになります。
このような解釈となれば,手切金には贈与税が課せられる,ということになります。

判例・参考情報

(判例1)
[最高裁判所第1小法廷平成15年(受)第1943号損害賠償請求事件平成16年11月18日]
前記の事実関係によれば,上告人と被上告人との関係は,昭和60年から平成13年に至るまでの約16年間にわたるものであり,両者の間には2人の子供が生まれ,時には,仕事の面で相互に協力をしたり,一緒に旅行をすることもあったこと,しかしながら,上記の期間中,両者は,その住居を異にしており,共同生活をしたことは全くなく,それぞれが自己の生計を維持管理しており,共有する財産もなかったこと,被上告人は上告人との間に2人の子供を出産したが,子供の養育の負担を免れたいとの被上告人の要望に基づく両者の事前の取決め等に従い,被上告人は2人の子供の養育には一切かかわりを持っていないこと,そして,被上告人は,出産の際には,上告人側から出産費用等として相当額の金員をその都度受領していること,上告人と被上告人は,出産の際に婚姻の届出をし,出産後に協議離婚の届出をすることを繰り返しているが,これは,生まれてくる子供が法律上不利益を受けることがないようにとの配慮等によるものであって,昭和61年3月に両者が婚約を解消して以降,両者の間に民法所定の婚姻をする旨の意思の合致が存したことはなく,かえって,両者は意図的に婚姻を回避していること,上告人と被上告人との間において,上記の関係に関し,その一方が相手方に無断で相手方以外の者と婚姻をするなどして上記の関係から離脱してはならない旨の関係存続に関する合意がされた形跡はないことが明らかである。
 以上の諸点に照らすと,上告人と被上告人との間の上記関係については,婚姻及びこれに準ずるものと同様の存続の保障を認める余地がないことはもとより,上記関係の存続に関し,上告人が被上告人に対して何らかの法的な義務を負うものと解することはできず,被上告人が上記関係の存続に関する法的な権利ないし利益を有するものとはいえない。そうすると,上告人が長年続いた被上告人との上記関係を前記のような方法で突然かつ一方的に解消し,他の女性と婚姻するに至ったことについて被上告人が不満を抱くことは理解し得ないではないが,上告人の上記行為をもって,慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することはできないものというべきである。