【財産分与×課税|全体|原則=非課税・例外もある】

1 財産分与×課税|全体|実質的な移転ではない
2 財産分与×贈与税|原則非課税・課税される例外もある
3 財産分与×一般の所得税|非課税となる
4 財産分与×譲渡所得税|値上がりしている場合課税される
5 財産分与の不動産取得税(原則非課税)
6 財産分与の登記と登録免許税
7 『慰謝料的・扶養的』財産分与→実質に応じた課税となる

1 財産分与×課税|全体|実質的な移転ではない

離婚の際の財産分与に関する税金について説明します。

<財産分与×課税|全体>

あ 財産分与の対象財産の性格

本来,実質的に夫婦全体に属する財産であった
形式的に夫or妻の名義になっていた
→『財産分与』は実質的な『価値の移転』ではない

い 税務上の考え方

『財産価値の移転』を根拠とする課税はされない

う 具体的な課税関係

課税されるのは次の税目だけである
ア 登記時の登録免許税イ 譲渡所得税 『譲渡益』が生じた場合のみ

2 財産分与×贈与税|原則非課税・課税される例外もある

財産分与では,代金などの『対価』がなく,所有権が移転します。
『対価なし』というところを考えると『贈与』に近いです。
しかし,実質面を考慮して課税されません(前述)
ただし,これを悪用したり,バランスがおかしい場合には例外的扱いとなります。

<財産分与×贈与税>

あ 原則

贈与税は課税されない

い 例外

次のいずれかに該当する場合
→贈与税が課税される
ア 分与された財産の額が『多過ぎる』 個別的な事情全体を考慮して判断する
イ 贈与税・相続税を免れるために離婚をした この場合『離婚』の効力自体は肯定される傾向にある
詳しくはこちら|離婚意思の内容(形式的意思)と離婚意思が必要な時点(離婚届の作成・提出時)
※通達;相基通9-8、所基通33-1の4

3 財産分与×一般の所得税|非課税となる

財産分与の性格は『形式的な名義を実質に合わせる』というものです。
つまり,利益・所得という概念とは無縁なのです。
そこで一般的な所得税は課せられません。

4 財産分与×譲渡所得税|値上がりしている場合課税される

不動産の『売買』の時には値上がり分が『譲渡所得』となります。
これについて譲渡所得税が生じます。
離婚の際の『財産分与』でも『売買』と同様の扱いとなります。

<財産分与×譲渡所得税|判例>

あ 原則論

財産分与は『譲渡所得税』の課税対象となる

い 譲渡益の算定

『財産分与時の評価額』−『取得価格+取得費用』
※最高裁昭和50年5月27日

譲渡所得税に関して,実情や工夫・注意点をまとめます。

<財産分与×譲渡所得税|実情・工夫>

あ 実情

『値下がり』していることが多い
→実際には課税義務が生じないことが多い

い 明確化・工夫

離婚協議書に評価額を記載しておく
税務上の『評価額』がこれに決まるわけではない
当事者が,調印時・事後的に理解・確認しやすくなる

う 将来への影響

対象不動産を将来売却する場合
→『財産分与時の評価額』を『取得費』として扱う

5 財産分与の不動産取得税(原則非課税)

元々,不動産取得税は『所有権が移動した』ことについて課税されます。
通常の財産分与は,実質的には,所有権の移動はない,という考え方です。
売買や贈与といった取引とは違うのです。
そこで,原則として不動産取得税は課税されません。
しかし例外もあります。
所有権(共有持分)の移転の結果,潜在的持分とは違う状態になったようなケースです。
例えば,もともと夫婦で共有持分が2分の1ずつであり,財産分与として夫の持分(2分の1)を妻に移転することなどです。

6 財産分与の登記と登録免許税

登録免許税は,非常に形式的なもので,登記をする,ということの対価です。
財産分与の登記についても課税されます。

<財産分与の登記と登録免許税>

あ 課税対象

財産分与として不動産の所有権移転登記を申請する場合
→登録免許税が課税される

い 納税方法

登記申請書に収入印紙を貼付する

う 課税額算定

固定資産税評価額×2%

7 『慰謝料的・扶養的』財産分与→実質に応じた課税となる

一般的な『財産分与』は『清算的財産分与』です。
逆に慰謝料将来の扶養を便宜的に『財産分与』に含めて算定することもあります。
詳しくはこちら|財産分与の基本(3つの分類・典型的な対立の要因)
このような場合『慰謝料・扶養』として金銭が払われた,として税務上は扱われます。
詳しくはこちら|慰謝料への課税は基本的にないが例外もある
詳しくはこちら|扶養に対する課税はないが,扶養的財産分与は高額→贈与認定リスクあり

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