【不動産譲渡所得税の基本|譲渡所得額・取得費・譲渡費用の内容・税率】

1 不動産譲渡所得税の基本

不動産を売却すると譲渡所得税が課税されます。その不動産を取得した時より値上がりした分について課税されるので、値下がりした(損した)ケースでは課税なしとなります。いわゆるキャピタルゲイン課税です。
本記事では、不動産譲渡所得税の基本的事項を説明します。

2 不動産譲渡所得の対象財産

まずは不動産譲渡所得の対象となる財産をまとめておきます。文字どおり不動産、つまり土地と建物が含まれるのは当然として、借地権や、(土地・建物・借地権の)共有持分も含みます。

不動産譲渡所得の対象財産

あ 土地

『借地権』『底地(権)』も含む

い 建物
う 共有持分

『あ』『い』の(準)共有持分も含む

3 不動産譲渡所得税の対象となる取引

(1)不動産譲渡所得税の対象となる取引の例

不動産譲渡所得税は、広く譲渡が対象となります。具体的には、売買が典型例ですが、それ以外にも多くの所有権を移転する取引が含まれます。

不動産譲渡所得税の対象となる取引の例

ア 売買イ 交換(後述)ウ 共有物分割 実質的には『ア・イ』に該当する
エ 競売・公売オ 代物弁済カ 財産分与(離婚時)キ 収用ク 法人に対する現物出資

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(2)相続・遺贈・贈与→譲渡所得税課税なし

不動産の所有権が移転しても譲渡所得税が非課税となるものとして、相続・遺贈・贈与があります(みなし贈与となるケースも含みます)。要するに、対価なし、無償で所有権が移転した場合は課税されないのです。ただ、取得した者(新たな所有者)が将来売却などをした場合にかかる譲渡所得税の計算では、元の所有者(被相続人や贈与者)が取得した時の金額が取得費となります。要するに、無償での所有権移転の時は含み益のままで所有者が変わる、課税の繰り延べとなる、ということです。

相続・遺贈・贈与→譲渡所得税課税なし

(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
・・・
十七 相続遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)
※所得税法9条1項17号

4 借地権設定・明渡→民法上は譲渡ではなくても税法上譲渡とみなされる

純粋な譲渡以外の取引も譲渡所得税の対象となるものがあります。
<譲渡(所得)とみなされる取引>

あ 借地権の設定+権利金の授受

地上権設定・土地賃貸借契約のこと
権利金の金額が『土地の時価の2分の1を超える』場合が対象

い 地役権の設定設定+権利金の授受

権利金の範囲については『あ』と同様

う 借地権消滅(借地契約終了)+明渡料・補償金の授受

〜〜〜

これらは民法の扱いでは賃借権などの権利が『発生』したり『消滅』するというものです。
しかし『権利と対価(金銭)』という『対応』があります。
経済的には『譲渡』と同じ構造なのです。
そこで税務上は『譲渡所得』として扱われます。
実際には多くの細かいルール・特例などがあります。

5 不動産譲渡所得は値上がり幅である|取得費・譲渡費用を控除する

課税の対象である『譲渡所得金額』の計算式は次のとおりです。

『譲渡所得金額』の算定式

あ 基本

課税譲渡所得金額 = 収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

い 主な控除額

ア 取得費 対象となる不動産を、元々入手した段階で要した費用
イ 譲渡費用 対象となる不動産を、(今回)譲渡するに際して、直接要した費用

簡単に言えば『値上がり幅』が課税対象となる、ということです。
控除の内容の詳細は次に説明します。

6 譲渡所得税|『取得費』は入手時の購入代金や借地の権利金など

譲渡所得の計算では所得費を控除します。
所得費の具体例と建物の取得費の計算で減価償却を反映させる計算をまとめます。

取得費の内容

あ 取得費の具体例

(ア)元々入手した際の購入代金や建築代金、購入手数料(イ)借地設定時に支払った権利金(ウ)設置した設備の費用、リノベーション(改良)に要した費用

い 建物の取得費における減価償却

『所得費』=『購入代金・建築代金』 − 『減価償却費相当額』

このように建物については『所得費』の計算で減価償却分を差し引くのです。

7 譲渡所得税|『譲渡費用』は今回の譲渡のコスト

『譲渡所得』を計算する時には『今回の譲渡手続のコスト』を控除します。
これを『譲渡費用』と呼びます。

主な『譲渡費用』

・対象不動産売却時に支払った仲介手数料
・印紙税のうち売主が負担したもの
・貸家を売る前提として、借家人に支払った明渡料
・対象土地上に存在した建物を取り壊した場合の取壊費用+建物の損失額
・既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売却するために支払った違約金
・借地権を売る時に地主に支払った承諾料、名義書換料など

8 不動産譲渡所得の税率|住民税もセットになっている|長期・短期で違う

不動産譲渡所得税の税率は次のとおりです。
譲渡所得税とともに、住民税も課税されます。

不動産譲渡所得の税率

譲渡取得の分類 長期譲渡所得 短期譲渡所得 譲渡した年の1月1日における所有期間 5年を超える場合 5年以下 譲渡所得の税率 15% 30% 住民税率 5% 9% 合計 20% 39%

9 譲渡所得税には特例・特別控除がいろいろある

譲渡所得税には例外的なルールがいくつもあります。
課税繰り延べや非課税となる特例や特別控除などです。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|不動産譲渡所得税|特別控除・買換特例
詳しくはこちら|不動産譲渡所得税・贈与税|交換契約・借地と底地の交換・借地明渡

本記事では、不動産譲渡所得税の基本的事項について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に不動産の取引や紛争における税金に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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