【日本国内居住者向け仮想通貨交換サービス(日本での営業)の判断基準】

1 日本国内居住者向け仮想通貨交換サービスの判断基準
2 日本の仮想通貨交換業の規制の適用地域
3 交換サービスの場所(日本での営業)の判断の金融庁見解
4 日本国内居住者向け『勧誘』の判断基準(参考)
5 外国の交換所が日本からのアクセスを拒否する必要性
6 全世界の国・地域の規制を把握する必要性
7 クロスボーダーの法規制の執行の問題

1 日本国内居住者向け仮想通貨交換サービスの判断基準

仮想通貨交換所のサービスは,性質上,オンラインで完結するものです。
実際のサービスでもユーザーに書面を郵送するとかユーザーと事業者のスタッフが面会するというプロセスが存在しないものがあります。
そして,外国に拠点のある仮想通貨交換所に日本国内居住者がアクセスすることは容易です。実際に多くの日本人が日本から,海外にあるサーバーで行われている交換サービスを利用しています。
ところでこのような場合,仮想通貨交換所には日本の資金決済法が適用されるかどうか,という問題があります。
適用されるとすれば日本の仮想通貨交換所の登録が必要になります。
本記事では,外国に拠点のある仮想通貨交換所を念頭に,日本の資金決済法が適用されるかどうかという問題について説明します。
クロスボーダー取引への法の適用の問題ということもできます。

2 日本の仮想通貨交換業の規制の適用地域

最初に,日本の仮想通貨交換所を規制する資金決済法には,規制対象となるサービスの地域についての規定はありません。
一般的な理論に戻って,サービスの遂行される場所が日本国内であれば日本法が適用されるということになります。

<日本の仮想通貨交換業の規制の適用地域>

あ 資金決済法の規定

資金決済法には適用される地域(範囲)に関する規定はない

い 属地主義

仮想通貨交換業が遂行される場所が日本であれば資金決済法が適用される
※刑法1条1項
詳しくはこちら|刑法の適用範囲|準拠法|条例の適用範囲→属地主義が原則

う 仮想通貨交換サービスの場所による判定

交換サービスが行われる場所が日本であれば資金決済法が適用される
日本での営業といえれば適用される)

3 交換サービスの場所(日本での営業)の判断の金融庁見解

外国にサーバーがあって,日本国内にいるユーザーがインターネット回線を通してアクセスしているような状況だとしましょう。
仮想通貨交換サービスが行われる場所がどこか,という判断は単純ではありません。
違う言い方をすると,日本での営業といえるかどうか,ということになります。
金融庁の見解(ヒアリング)の内容を紹介します。

<交換サービスの場所(日本での営業)の判断の金融庁見解>

あ 保護法益論

日本国内にある人(居住者)を対象にサービスを提供するならば
日本の資金決済法の規制による保護(保護法益)を及ぼすべきである

い 日本での営業の判断材料

次のような事情によって総合的に判断する
ア 日本居住者のユーザーの割合イ 日本語表記の有無ウ 日本円の扱いの有無エ 日本国内向けの広告の有無 ※金融庁ヒアリング平成29年12月

なお,似ている解釈論として,海外サーバーにあるわいせつな画像・映像に日本のわいせつ物陳列罪が適用されるか,とか,海外サーバーで行われるギャンブルに日本の賭博罪が適用されるかという問題もあります。
詳しくはこちら|国内犯|解釈論・基本|インターネッツ経由の賭博系・表現系犯罪
仮想通貨交換業の規制はこれらの解釈と同じというわけではありません。ここでは他の問題についてはこれ以上触れません。

4 日本国内居住者向け『勧誘』の判断基準(参考)

前記のように,日本国内居住者向けのサービス(日本での営業)といえるかどうかは,確実にハッキリ判断できるわけではありません。
なお,これとは別に,日本国内居住者向けの勧誘の判断基準について,金融庁のガイドラインが公表されています。
別の概念の解釈ですが,実質的には重複しているところも大きいです。
詳しくはこちら|日本国内居住者向け『勧誘』の判断基準(外国仮想通貨交換業者)

5 外国の交換所が日本からのアクセスを拒否する必要性

以上の解釈を前提とすると,外国に拠点のある仮想通貨交換所は日本国内居住者向けサービスに該当しないように配慮する必要が出てきます。
つまり,ユーザーの居所の申告や公的資料の提出を求め,居所が日本であると思われる場合にはサービスの利用を拒否しないと日本の資金決済法上の無登録の仮想通貨交換業として違法(日本の刑事罰の対象)となってしまう可能性があるのです。
(もちろん日本の仮想通貨交換業者登録をすれば適法となる)

6 全世界の国・地域の規制を把握する必要性

さらに,インターネット上で仮想通貨交換サービスを提供する事業者は,(日本も含めて)インターネットでのアクセスが可能な国・地域すべての法規制を把握する必要があることになってしまいます。
最低限のリスクヘッジとして例えば,一律に新規ユーザーに,『私の居住する国・地域の法規では仮想通貨交換サービスの法規制はありません』の宣言を利用の条件にする,などの方法が考えられます。
ただし,仮に法規制のある国に居住するユーザーがサービスを利用した場合,このような形式的なユーザーの自己申告によって確実に違法性が回避されるわけではありません。
確実な方法は,各国の規制を把握し,規制がある国にはサービス提供をしない措置を取るか,その国のライセンスを取得するかのどちらかで対応するしかないでしょう。

7 クロスボーダーの法規制の執行の問題

以上の説明は,日本の法律が適用されるかというものでした。
仮に日本の法律(資金決済法)が適用される,つまり違法な無登録営業に該当するサービスがあったとします。次の問題が出てきます。
どうやって日本の政府(金融庁)が調査や検挙をするか,という問題です。
捜査権限の問題ともいえます。
結局,国家間のテリトリー(主権)という点から,日本の政府は調査や捜査の協力を求めることができるにとどまります。
つまり,相手国の態度によって,現実的に手が出せないということもあるのです。

<クロスボーダーの法規制の執行の問題>

あ 法適用の有無と執行の別

法規制の適用の有無と執行(調査・捜査・起訴・公判)は別の問題である

い 国外の事業者への法の執行

外国に拠点のある事業者が日本の資金決済法に違反している(ことが疑われる)場合
実際には,現地の(金融庁に相当する)行政庁と協力しつつ問い合わせをするところから始まる
現地の行政庁が日本と協力的ではないと調査や検挙ができない
※金融庁ヒアリング平成29年12月

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【諸外国の仮想通貨に対する法規制の状況(平成29年12月)】

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