1 国際的な法律問題の概観|準拠法・国際裁判管轄・内容証明・強制執行
2 民法はどの国の法律が適用されるか|準拠法
3 家族法(夫婦・相続)はどの国の法律が適用されるか|準拠法
4 国際裁判管轄|原則=被告の居住国
5 国際裁判管轄|『被告が日本国外』でも日本に管轄が認められることも多い
6 日本国外への送達(概要)
7 日本国外への『内容証明』の通知|『受取通知』付郵便

1 国際的な法律問題の概観|準拠法・国際裁判管轄・内容証明・強制執行

取引や家族に関するトラブルにおいて,『国際的な扱い』が問題になることがあります。

<国際的な問題が生じる具体例>

ア 日本人と外国人の取引
イ 日本の会社と外国の会社の取引
ウ 日本人と外国人の家族関係(相続・結婚・離婚)
エ 『日本に居住する日本人』と『外国に居住する日本人』の裁判

この場合に『問題になること』自体が多くて複雑です。
問題別に法的なルール・解釈があります。
『問題を整理する(混同しない)』ということが,まずは重要です。

<国際的な法的問題の概観|整理>

準拠法 どの国の法律が『適用』されるのか 後記※1
国際裁判管轄 どの国の裁判所に申し立てることができるのか 後記※2
外国への『送達』 日本の裁判所から外国の被告に『送達』する方法 後記※3
外国への『内容証明』の通知 日本から外国に居る相手に『内容証明』を出す方法 後記※4
外国の財産の差押 日本の裁判所の判決で外国所在の財産を差し押さえる方法 ↓記載の別項目
外国の判決を使って日本で差押 外国の裁判所の判決で日本国内の財産を差し押さえる方法 ↓記載の別項目

別項目|外国の判決→日本の財産差押|日本の判決→外国の財産差押

2 民法はどの国の法律が適用されるか|準拠法

国際的な取引や身分行為については,『どこの国の法律が適用されるのか』という問題があります。
『準拠法』と言います。
これについては,かつて『法例』という古い規定がありましたが,平成18年に新たな法律にリニューアルされました。
『法の適用に関する通則法』です。法適用通則法と呼ばれます。
対象となるテーマごとに,『準拠法』が決められています。

<『法律行為』の準拠法(※1)>

準拠法の選択 法適用通則法
当事者が選択した地の法律 7条
当該法律行為に最も密接な関係がある地の法律 8条1項

『法律行為』のうち特定の類型は別のルールがあります。

<『法律行為』の特例>

対象 法適用通則法
消費者契約 11条
労働契約 12条

<『物権等』の準拠法>

対象 準拠法の選択 法適用通則法
物権・登記すべき権利 目的物の所在地の法律 13条1項

<『債権』の準拠法>

対象 準拠法の選択 法適用通則法
事務管理・不当利得によって生じる債権 原因となる事実が発生した地の法律 14条
不法行為によって生じる債権 加害行為の結果が発生した地の法律 17条

『債権』に関わるマターでも特定の類型は別のルールがあります。

<『債権』の特例>

対象 法適用通則法
生産物責任 18条
名誉・信用毀損 19条

なお,相続に関する財産の承継などの『手続』に関する法律の適用は上記『準拠法』とは異なることがあります。
詳しくはこちら|海外資産の相続→承継|準拠法と手続法|海外の遺言・プロベート・共有名義口座
また,『刑事事件』についての準拠法はこれとは別です。
別項目|刑法の適用範囲|準拠法|条例の適用範囲→属地主義が原則

3 家族法(夫婦・相続)はどの国の法律が適用されるか|準拠法

夫婦や相続に関するマターについても,『法の適用に関する通則法』で準拠法が定められています。

<『親族』の準拠法>

あ 婚姻の成立・方式

当事者の本国法(原則)
※法適用通則法24条1項

い 離婚・婚姻の効力(原則)

次のうち,上が優先的なルールとなる
ア 夫婦の本国法(一致の場合)
イ 夫婦の常居所地の法律(一致の場合)
ウ 夫婦に最も密接な関係がある地の法律

う 離婚(のうち例外)

夫婦の一方が『日本人かつ日本に常居所を有する』→日本法
※法適用通則法25条,27条

参考コンテンツ|国際的な離婚の準拠法は夫婦の居住地国,国際的裁判管轄は被告の居住地国

<『相続』の準拠法>

対象 準拠法の選択 法適用通則法
相続 被相続人の本国法 36条
遺言 遺言作成(成立)当時の遺言者の本国法 37条1項

4 国際裁判管轄|原則=被告の居住国

(1)日本国内の裁判管轄

『どの裁判所が扱うか』『どの裁判所に申し立てれば良いか』ということを『裁判管轄』と呼びます。
当事者が日本と日本国外,と『国をまたいでいる』場合の『国際裁判管轄』については明確なルールがありません。
解釈上,『日本国内の裁判管轄』が参考にされています。
日本国内の裁判管轄については条文でしっかりと規定されています。

<法律上の一般的な裁判管轄の規定>

あ 一般的な民事訴訟

被告住所地(を管轄する裁判所)
※民事訴訟法4条1項,2項

い 人事訴訟(夫婦・親子など)

当事者の住所地or死亡時の住所地(を管轄する裁判所)
※人事訴訟法4条1項

なお,個別的な案件内容や,手続の種類によって細かい規定があります。
とにかく『大原則は被告住所地』ということが重要です。

(2)国際裁判管轄の原則

<国際裁判管轄の大原則(※2)>

あ 被告が個人

被告の住所・居所の所在地(国)

い 被告が社団・財団(法人)

被告の主たる事務所・営業所の所在地(国)
※民事訴訟法3条の2第1,3項
※最高裁昭和39年3月25日

日本国内の裁判管轄の大原則がそのまま流用された解釈です。
民事訴訟法上,例外的な国際管轄も規定されています。

<民事訴訟法上の例外的な国際管轄>

管轄の種類 民事訴訟法
契約債務履行地管轄 3条の3第1号
財産所在地管轄 3条の3第3号
業務関連管轄 3条の3第4,5号
不法行為地管轄 3条の3第8号
消費者契約・労働契約関連事件管轄 3条の4第1,2項
合意管轄 3条の7第2,3項

5 国際裁判管轄|『被告が日本国外』でも日本に管轄が認められることも多い

国際裁判管轄については,明文はない一方,判例による個別的な判断はいくつかあります。
以下,判例によるルールを集約してまとめます。

<共通する前提>

原告=日本居住
被告=日本国外居住
原告が訴訟を提起する

<被告が過去に日本に在住したことがない場合>

あ 原則

被告居住地(国)

い 例外

原告居住地(国)=日本
《条件》
ア 原告が遺棄された場合
イ 被告が行方不明である場合
ウ その他これに準ずる場合
※最高裁昭和39年3月25日
※最高裁平成8年6月24日

<被告が過去に日本に居住していた+現在外国に居住している>

被告の日本国内の最後の住所地
※家事事件手続法4条
※民事訴訟法3条の2第1項,3項,4条2項
※『基本法コンメンタール民事訴訟法1』p27
※『家事事件手続法ハンドブック』新日本法規出版

実際の提訴などの場面では,次のような記録が要請されます。

<『被告が海外にいる』ことの確認>

入国管理局への弁護士法23条照会結果として『出国記録』が要求される
※『東京家裁における人事訴訟の審理の実情 第3版』判例タイムズ社

6 日本国外への送達(概要)

裁判管轄が日本である場合,日本の裁判所に申し立てることになります。訴訟の手続に関しては日本の法律(民事訴訟法など)が適用されます。
ここで相手(被告)が外国に居住している場合には送達をどのようにするか,という問題が出てきます(※3)。
送達とは,訴状などの書類を送付する手続のことです。
基本的には外国の政府の協力を得て,送る(送達する)ことになります。これについては,別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|民事訴訟・保全手続における日本国外への送達(方法・所要期間)

7 日本国外への『内容証明』の通知|『受取通知』付郵便

一般的に,(裁判所を通さない)『通知』を行う場合,記録化その他の理由で『内容証明郵便』が必要となることが多いです。
正確には『内容証明』+『配達記録』→『通知内容と配達の記録化』ができる,という仕組みです。
ところが,『送付先が日本国外』という場合には,『日本の郵便局による送付』の対象外です。
この点,『内容証明郵便』と同等の送付方法もあります。

<日本国外への送付物の記録化方法(※4)>

内容証明郵便+『受取通知』

『受取通知』については,日本の郵便局からの送付物を受け取った外国の郵便局が対応することが前提です。
『受取通知』が可能な国は次のように決まっています。

<『受取通知』扱い国>

アフガニスタン
インド
インドネシア
ウェーキ・北マリアナ諸島・グアム・サイパン及びミッドウェイ諸島
カンボジア
北朝鮮
シンガポール
スリランカ
タイ
大韓民国
台湾
中華人民共和国
ネパール
パキスタン
パラオ
バングラデシュ
東ティモール
フィリピン
ブータン
ブルネイ
ベトナム
香港
マーシャル
マカオ
マレーシア
ミクロネシア
ミャンマー
モルディブ
モンゴル
ラオス

外部サイト|海外の送達条件|日本郵便

本記事では国際的な法律問題に関して適用される法律や裁判の管轄について説明しました。
実際には,具体的な状況によって適用される法律や裁判の管轄は違ってくることがあります。
実際に国際的な法律問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。