【民事訴訟・保全手続における日本国外への送達(方法・所要期間)】

1 民事訴訟・保全手続における日本国外への送達
2 日本国外への送達の規定
3 日本国外への送達に関する条約など
4 日本国外への送達のルートと所要期間
5 日本国外への送達における翻訳文添付
6 保全手続(仮差押・仮処分)の送達の特例
7 日本国外への送達に関する公示送達(概要)
8 国際的な法律問題における準拠法・裁判管轄(概要)

1 民事訴訟・保全手続における日本国外への送達

民事訴訟や保全手続では送達が必要となります。
詳しくはこちら|送達の種類(通常送達・就業先送達・補充送達・付郵便送達・公示送達)
この点,被告(相手方)が外国に居住しているために,外国に送達することになるケースもあります。
本記事では,外国への送達の方法や特徴について説明します。

2 日本国外への送達の規定

日本の裁判所が行う送達は,原則的に郵便を使います(民事訴訟法99条)。
日本国外への送付については,日本の郵便局は直接扱っていません。
この点,民事訴訟法上,外国政府の協力を得て送達を実施することとされています。

<日本国外への送達の規定>

(外国における送達)
外国においてすべき送達は、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してする。
※民事訴訟法108条

3 日本国外への送達に関する条約など

実際に,外国の政府が日本からの送達に協力する体制が作られています。具体的な取り決めにはいろいろな種類のものがあります。

<日本国外への送達に関する条約など>

あ 多数国の取り決め

ア 民訴条約イ 送達条約

う 2国間の取り決め

特定の2国間の条約や協定など

え 個別案件ごとの取り決め

個別の案件ごとに任意の協力を得る

4 日本国外への送達のルートと所要期間

日本国外への送達は,外国政府を通して行ないます。具体的な送達(送付)のルートは長いです。そのため,結果的に送達が実現するつまり相手に届いて証明書が戻ってくるのに数か月以上,場合によっては1年以上かかることもあります。

<日本国外への送達のルートと所要期間>

あ 送達のルート

受訴裁判所(事件が継続している裁判所)

最高裁判所

(外務省→日本国領事官)

外国の指定当局or中央当局(司法大臣・外務大臣)

い 所要期間の目安
送達先の国 領事送達 中央当局送達
米国 約3か月 約12か月
フランス 約4か月 約6か月

※高桑・道垣内編『国際民事訴訟法(財産法関係)』青林書院2002年p207
※『月報司法書士2015年1月』p14〜参照

5 日本国外への送達における翻訳文添付

日本国外への送達を行う場合に,申立人(原告)は,外国の政府(などの機関)が分かるように翻訳文を用意する必要もあります。

<日本国外への送達における翻訳文添付>

日本国外への送達において
申立人は翻訳文・翻訳者の証明書などを添付する必要がある

6 保全手続(仮差押・仮処分)の送達の特例

仮差押・仮処分の手続では,送達に関する特例があります。前記の正式な手続(外国政府を通す)よりも簡略化できるので送達の時間が大幅に短縮できます。
なお,仮差押・仮処分の内容によっては,相手方への送達の前に保全執行を行うものも多くあります。その場合は送達が実現するまで待たずに目的が達成することになります。

<保全手続(仮差押・仮処分)の送達の特例>

あ 規定(条文引用)

民事保全の手続における口頭弁論又は審尋の期日の呼出しは、相当と認める方法によることができる。
※民事保全規則3条1項『相当と認める方法』

い 具体的な送付方法

国際スピード郵便(EMS),国際航空郵便を使える
※東京地裁民事46部大鷹一郎判事稿/『判例タイムズ1390号』p30

外国への送達,の場合は『通常の送達』と比べて大幅な期間短縮が実現します。

7 日本国外への送達に関する公示送達(概要)

前記のような原則的な日本国外への送達は,外国政府の協力が大前提です。
逆に,外国政府の協力が得られない場合は,送達できないということになります。当然救済措置が用意されています。

<日本国外への送達に関する公示送達(概要)>

あ 条件

外国政府の協力による送達ができない場合

い 救済措置

公示送達が可能
※民事訴訟法110条1項3号

う 公示送達のメリット

送達の到達までの長期間の待機,を回避できる(前述)

外国への送達に関する公示送達については,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|民事訴訟における公示送達の要件(公示送達を使える状況)

8 国際的な法律問題における準拠法・裁判管轄(概要)

国際的な法律問題に関しては,以上のような送達以前に,どの国の法律が適用されるか(準拠法)やどの国の裁判所に申し立てるべきか(裁判管轄)も問題となります。
これらについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|国際的法律問題まとめ(準拠法・国際裁判管轄・内容証明・強制執行)

本記事では,民事訴訟や保全手続での外国への送達について説明しました。
実際には個別的な事情によって扱いが違ってくることもあります。
実際に国際的な法律問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【民事訴訟における公示送達の要件(公示送達を使える状況)】
【利害関係者・敵対当事者が受領した送達の有効性(再審・追認など)】

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