1 差押対象財産の典型例
2 給与は4分の3,公的年金は全額が差押できない|差押禁止
3 合意・特約などの私的な『譲渡禁止』→債権・株式で扱いが違う
4 個別事情によって『差押禁止』の範囲を裁判所が変える|差押禁止範囲の変更申立
5 債務者の財産を包括的に差し押さえるものが『破産申立』である
6 『財産開示手続』によって債務者の財産を把握することができる

1 差押対象財産の典型例

金銭の強制執行=差押,の対象として典型的なものは次のとおりです。

<差押の対象財産としての典型例>

あ 不動産
い 給与等の賃金
う 預貯金

詳しくはこちら|預貯金の差押|特定の趣旨・範囲|支店特定不要説|特定方式

え 生命保険

詳しくはこちら|生命保険の解約返戻金の差押(特定の程度や事前の調査内容)

お 売掛債権

取引先の財産状況を把握していることが前提となる

他にも差押の対象となる財産は多くあります。
ただし,換価が困難である,など類型的に実効性が高いものはあまりありません。

2 給与は4分の3,公的年金は全額が差押できない|差押禁止

一定の給付,つまり『債権』については,差押が禁止されています。
債権の種類と『差押禁止の範囲』をまとめます。

<差押禁止債権・差押禁止の範囲>

債権の種類 条文(民事執行法) 差押禁止の範囲 扶養請求権未払いによる差押(※4)
民間の個人年金給付 152条1項1号 4分の3・33万円の小さい方 2分の1・33万円の小さい方
給料・賃金・賞与・退職年金(※1) 152条1項2号 4分の3・33万円の小さい方 2分の1・33万円の小さい方
退職金・退職手当 152条2項 4分の3 2分の1
恩給・生活保護・老齢年金・児童手当 (特別法;※3) 全額 全額
破産法・民事再生法・会社更生法関係 (←の各法律) 全額 全額
一身専属権(※2) (解釈) 全額 全額

<給料等の算定の細かいルール(上記※1)>

あ 算定の基準

↓のいずれも通常同じになるはず
ア 『名目額』−(所得税・住民税・社会保険料等+実費(通勤手当))
イ 『手取額』−実費(通勤手当)

い 含む/含まない,の整理

ア 含む
歩合・超過勤務手当・扶養手当等の手当金
イ 含まない
実費=交通費・旅費等

<一身専属権(上記※2)>

あ 『権利行使前』の次の債権
い 扶養請求権

例;婚姻費用分担金・養育費・扶養料の請求
※民法881条

う 財産分与請求権
え 遺留分減殺請求権
お 慰謝料請求権

『権利行使後』は,『一身専属性』が解消される→通常の債権として『差押可能』となる

<差押禁止を定める特別法(上記※3)>

ア 生活保護法58条
イ 児童扶養手当法24条
ウ 国民年金法24条
エ 厚生年金保険法41条
オ 児童手当法15条

※4 扶養請求権不払いによる差押
この場合,『差押側』が強化されています。
別項目;扶養に関する債権のための差押については金額,将来分の差押が優遇される

詳しくはこちら|前借りや損害賠償を給料から相殺できない|賃金・損害賠償債権=差押禁止債権
詳しくはこちら|ゼロや極端に低い養育費の合意は無効,養育費変更請求,相殺禁止
詳しくはこちら|年金は差押禁止,年金入金後の預金は差押禁止範囲変更が可能

3 合意・特約などの私的な『譲渡禁止』→債権・株式で扱いが違う

以上とは別に,私的な『譲渡禁止・制限』を設定する制度もあります。
債権や株式です。
これらについては『差押→買受け』ができるかどうか,判例の理論でルールができています。
別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|譲渡禁止特約付債権・非公開・譲渡制限株式の差押|租税滞納→株式公売は多い

4 個別事情によって『差押禁止』の範囲を裁判所が変える|差押禁止範囲の変更申立

差押禁止とされる債権=給付の多くは,実際には『預貯金口座』に入金されます。
例えば,年金が入金され,『預貯金になった』瞬間に『差押禁止』のガードが外れた状態になります。
しかし実質的には『本来差押が禁止される財産』と言えます。
このような場合,『差押を受けない』ことにできる個別的な手続があります。
別に説明しています。
別項目|預金口座に入金された年金は差押禁止とされることがある|差押禁止範囲の変更

5 債務者の財産を包括的に差し押さえるものが『破産申立』である

破産の手続は申立人が誰か,によって自己破産債権者破産があります。
いずれの方式でも,破産手続において,破産者の財産を,破産管財人が債権者に配当します。
このように債務者の全財産の差押→換価→配当という機能があるのです。
ただし,債務者の財産が乏しく,配当がゼロか,低い配当率になりることも多いです。
別項目;債権者破産の申立は『支払不能』の疎明が必要,配当率は低い傾向

6 『財産開示手続』によって債務者の財産を把握することができる

裁判所が債務者に財産内容を明かすよう命じる制度があります。
民事執行法の改正により平成16年から始まった制度です。
詳しくはこちら|裁判所による債務者の財産調査(財産開示手続の全体)