1 貸金庫契約の法的性質・解釈|内容物を一体として引き渡す請求権
2 『貸金庫の内容物』の差押|対象物=内容物引渡請求権
3 『貸金庫の内容物』の差押|手続=執行官が内容物を把握・売却する
4 遺言執行者×貸金庫開閉権|相続分の指定,部分的包括遺贈→権限あり
5 遺言執行者×貸金庫開扉|内容物確認の具体的方法

1 貸金庫契約の法的性質・解釈|内容物を一体として引き渡す請求権

貸金庫契約についての基本的な法律の規定・解釈をまとめます。
この解釈論が別の問題の扱いにつながります(後記)。

<貸金庫契約の法的性質・解釈>

あ 法律の規定

金融機関の『貸金庫』
→法律上『保護預かり』として規定されている
※銀行法10条2項10号
※信用金庫法53条3項9号
※信託業法21条2項

い 解釈|判例

内容物全体について1個の包括的な占有がある
利用者と金融機関が共同して民法上の占有をしている
利用者は銀行に対して『内容物全体を一括して引き渡すこと』を請求できる
※最高裁平成11年11月29日

2 『貸金庫の内容物』の差押|対象物=内容物引渡請求権

債務者が銀行の貸金庫を有していることもあります。
この場合,法律上,差押・換価が可能です。

<『貸金庫の内容物』の差押|対象物>

あ 差押の対象物|適法な方法

『貸金庫契約上の内容物引渡請求権』を差し押さえる

い 差押の対象物|ありがちな誤解

『貸金庫の中にある動産そのもの』
→これが差押の対象物になるわけではない
※最高裁平成11年11月29日

3 『貸金庫の内容物』の差押|手続=執行官が内容物を把握・売却する

貸金庫の内容物の差押の手続の概要をまとめます。

<『貸金庫の内容物』の差押|手続>

あ 申立×内容物の特定

内容物について個別具体的に特定した目録を提出する必要はない

い 執行手続

執行官が保管機関(銀行)から貸金庫内容物の引き渡しを受ける
→執行官が内容物のうち,売却できるものを選別する
→執行官が売却=換価する
→代金を配当する
※最高裁平成11年11月29日

4 遺言執行者×貸金庫開閉権|相続分の指定,部分的包括遺贈→権限あり

被相続人が,貸金庫に財産を預けているケースもあります。
遺言執行者が選任されている場合に,その権限の解釈が問題となります。

<遺言執行者×貸金庫開閉権>

あ 遺言執行者×貸金庫開閉権

被相続人が財産を貸金庫に保管していた場合
→遺言執行者は『貸金庫開閉権』が認められている
遺産の管理の一環として位置付けられる
※神戸地裁平成11年6月9日

い 遺言の種類

ア 包括遺贈
上記判例の事案
イ 相続分の指定
『承継先が確定的ではない』という趣旨は同様
→同じ解釈と考えられる

5 遺言執行者×貸金庫開扉|内容物確認の具体的方法

当然,内容物は金融機関も把握していません。
開けた後から『◯◯があったはずだ』『いや,開けた時にはなかった』という争いになるリスクがあります。
内容物の確認では慎重な配慮が求められます。
通常は,次のような方法が取られます。

<貸金庫開扉時の工夫・方法|例>

あ 相続人全員が立ち会う
い 相続人全員の同意を取り付ける
う 公証人が立ち会う

『事実実験の公正証書』の作成業務の依頼内容となる
※『月報司法書士11年9月』日本司法書士会連合会p103

一般的な遺言執行者の権限については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺言執行者の権限|預金払戻・遺言無効確認訴訟・登記抹消請求訴訟