【裁判所による債務者の財産調査(財産開示手続の全体)】
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1 裁判所の財産開示手続(総論)
2 財産開示手続の申立要件
3 財産開示手続の記録開示と申立制限
4 財産開示手続の管轄
5 財産開示手続の流れ
6 開示する財産の範囲と内容(概要)
7 財産目録の提出
8 財産開示期日における手続
9 財産開示手続の過料の制裁と実効性(概要)
1 裁判所の財産開示手続(総論)
債権者が債務者の財産を差し押さえる際には,財産を把握していることが必要です。
債務者の財産を包括的に差し押さえるのは,破産という特殊な手続以外では制度がないのです。
通常は,債務者の財産を債権者が特定して差押の申立を行わないといけないのです。差し押さえる財産の種類は別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|差押の対象財産の典型例・債権者破産・差押禁止・範囲変更申立
債権者が債務者の財産を把握するために調査会社を利用する方法もあります。
詳しくはこちら|調査会社・探偵・興信所|相手方の財産や住所の調査
また,預貯金について,弁護士会照会による調査ができることもあります。
詳しくはこちら|弁護士会照会による預貯金に関する情報開示(対応の傾向・実情)
これについて,裁判所が主催する債務者の財産開示に関する手続があります。
本記事では,財産開示手続の基本的なことを説明します。
2 財産開示手続の申立要件
どのような場合に財産開示手続を利用できるのか,についてまとめます。
<財産開示手続の申立要件>
あ 基本的事項
『い・う』の両方に該当する場合
→財産開示手続を利用できる
い 債務名義を持っている
債権者が債務名義を取得している
詳しくはこちら|債務名義の種類|確定判決・和解調書・公正証書(執行証書)など
う 回収不能の状態である
『ア・イ』のいずれかに該当する
ア 強制執行を行ったが回収できなかったイ 強制執行を行っても回収の見込みがない
※民事執行法197条
え 利用できない事情
債務者が過去に財産開示をしている場合
→一定の範囲で新たな財産開示手続は認められない(後記※1)
財産開示手続の申立がなされた後,裁判所が申立書や添付書類を確認します。その上で,裁判所が実施決定を出します。
裁判所は債務者に,財産目録の提出を命じます。そして,債務者が出頭する財産開示期日も定めます(後記)。
3 財産開示手続の記録開示と申立制限
過去の財産開示手続の記録を開示する制度があります。このことから,記録の開示を受けられる場合は,一定の範囲で新たな財産開示手続はできないこととなっています。
<財産開示手続の記録開示と申立制限(※1)>
あ 記録開示
債務名義を有する債権者について
→過去の財産開示手続の記録を閲覧・謄写できる
※民事執行法201条2号
い 新たな申立の制限
債務者が3年以内に財産開示制度において財産開示をした場合
→新たな財産開示手続は原則としてできない
※民事執行法197条3項
4 財産開示手続の管轄
財産開示手続を行う裁判所,つまり管轄は,債務者の住所地がベースとなります。仮に遠くても,実際に債権者が出席しなくてもよいという運用が一般的です。
<財産開示手続の管轄>
あ 管轄(基本)
債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所
※民事執行法196条,民事訴訟法4条
い 専属管轄
専属管轄である
※民事執行法19条
う 出席の要否
申立人(債権者)の出席について
→出席しなくても期日の手続を実施することができる
※民事執行法199条5項
え 債権者の出席に関する実情
実務上,申立人の出席なしで行われている
過料の制裁に影響が生じることもある
詳しくはこちら|財産開示手続の過料の制裁と債権回収としての実効性
※『月報司法書士2016年11月』p24
5 財産開示手続の流れ
財産開示手続が進む大きな流れをまとめます。
6 開示する財産の範囲と内容(概要)
財産開示手続で開示義務のある財産の内容は幅広いです。詳しい内容は別の記事で説明しています。
<開示する財産の範囲と内容(概要)>
あ 開示する財産の範囲(概要)
債務者に属するすべての積極財産
い 開示する情報の内容(概要)
強制執行or担保権の実行の申立をするのに必要となる事項
詳しくはこちら|財産開示手続における開示する財産の内容と範囲
7 財産目録の提出
財産開示手続では『期日』が設定されます。債務者が裁判所に出席して財産を陳述することになっています。しかし,口頭で説明するのは合理的ではありません。そこで,事前に書面で提出ことになっています。
<財産目録の提出(※2)>
あ 財産目録の提出期限
裁判所は財産目録の提出期限を定める
財産開示期日よりも前の日を設定する
い 提出義務
債務者は,財産開示期日の陳述の対象となる財産を記載する
提出期限までに執行裁判所に提出する
※民事執行規則183条
8 財産開示期日における手続
財産開示手続のメインイベントは財産開示期日です。宣誓や質問などのリアルタイムならではの手続が行われます。
<財産開示期日における手続(※3)>
あ 宣誓義務
債務者は宣誓をする
宣誓拒否は過料の制裁の対象となる
※民事執行法199条7項,201条1項
詳しくはこちら|財産開示手続の過料の制裁と債権回収としての実効性
い 裁判所・債権者の質問権
執行裁判所・申立人について
債務者に対して質問をすることができる
う 質問事項
債権者の質問(『い』)について
債務者の財産の状況の把握に必要なものに限られる
執行裁判所の許可を得た事項に限られる
※民事執行法199条3項,4項
9 財産開示手続の過料の制裁と実効性(概要)
財産開示手続は,実際に債務者が開示などに応じないというケースが多いです。そこで,あまり意味がないと考える傾向もあります。しかし,工夫と努力で回収の実現につなげた実例もまた多いです。
<財産開示手続の過料の制裁と実効性(概要)>
あ 過料の制裁と一般的な実効性
債務者が財産開示手続に応じない場合
→30万円以下の過料の制裁の対象となる
裁判所が発動しないことも多い
※民事執行法206条1項
詳しくはこちら|財産開示手続の過料の制裁と債権回収としての実効性
い 財産開示手続の活用の工夫と回収実現
債権者の工夫により財産開示手続を有効活用する
→債権回収を実現する実例もある
詳しくはこちら|債権回収での財産開示手続の工夫や活用の実例