【共有であるかどうか・持分割合の認定(民法250条の推定・裁判例)】

1 共有であるかどうか・持分割合の認定(民法250条の推定・裁判例)

主に不動産について、所有者は1人なのか複数人なのか(誰が所有者なのか)、共有であるとして、持分割合は何パーセントなのか、ということが問題になることがあります。
この点、民法250条は、共有持分割合について、均等であると推定すると規定しています。
本記事では、共有かどうか、持分割合はどう決めるか、ということについて、裁判例を挙げて説明します。

2 民法250条の条文

最初に、民法250条の条文を抑えておきます。条文上は相等しい推定するという言葉になっています。推定ということは、他の証拠で判断できない場合にだけ相等しいことにする(均等にする)という意味です。
持分割合が明確であるケースでは民法250条は使われないのです。不動産の場合、登記上持分割合が記録されることになっています。
民法250条が使われるのは持分割合が不明である場合だけなのです。民法250条が使われる状況はある意味特殊なケースなのです。

<民法250条の条文>

(共有持分の割合の推定)
第二百五十条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

3 単独所有登記のケース

ところで、登記と実体は一致するとは限りません。登記が単独所有でも実体は共有ということは一般論としてあり得ます。
最初に、登記は単独所有のケースについて、誰が所有者(共有者)なのか、が問題となる状況について説明します。

(1)登記は単独所有・実体は共有である財産の共有物分割(概要)

共有物分割訴訟の中で、前提問題として、所有者(共有者)の判断がなされる、ということがよくあります。結論として、登記がどうであっても、実体上共有であれば共有物分割は可能です。そのような実例もあります。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|登記は単独所有・実体は共有である財産の共有物分割

(2)夫死亡後に夫単独名義の不動産に妻の持分2分の1を認めた裁判例

次に、登記が単独所有の不動産について、共有物分割以外の訴訟で所有者(共有者)の判断がなされたものを紹介します。
最初に、ストレートに民法250条が適用された、という裁判例を紹介します。
このケースでは、登記上は(亡くなった)夫の単独所有になっていましたが、実態としてはマイホームであり住宅ローンの返済は夫の収入をあてていたので、実質的には妻の内助の功も含めると夫婦で返済したといえる状況でした。そこで、夫婦の協力の割合を判断することになりますが、明確な算定根拠がないので、民法250条を適用して、持分割合は2分の1ずつということになりました。
この裁判例で重要なところは、共有であると認めたところです。
本来、妻の内助の功を理由として妻の権利を認める理論は、財産分与で使われているものです。
詳しくはこちら|財産分与割合は原則として2分の1だが貢献度に偏りがあると割合は異なる
本件は、財産分与ではなく、(亡くなった)夫の相続人(妻も含む)の間で、(亡夫の)遺産の範囲を特定する、という状況で、この理論が使われたのです。
この点、婚姻中は、登記などの名義で権利の帰属を判断します(別産制)。
たとえば婚姻中に、妻が夫に対して、実質的には(妻も)共有持分を持っているのだから2分の1の移転登記(更正登記)をしてくれと請求しても、その持分は潜在的なものにすぎないため、認められません。
詳しくはこちら|夫婦財産制の性質(別産制)と財産分与の関係(「特有財産」の2つの意味)
そして、夫婦の一方が亡くなった(死別)のケースでは、配偶者は2分の1以上の法定相続分をもつので、前述の実質的な共有持分が具体化します。
本件では、2分の1の法定相続分とは別に(それ以前に)、当該不動産の2分の1は相続の対象から除外するという結論になっています。結果的に妻は当該不動産については4分の3相当の権利を認められたことになります。
相続人のうち妻以外の者が、この妻が産んだ子ではない(先妻との間の子であった)ということが影響したのかもしれません。
いずれにしても特殊な状況が影響しているので、一般化できないといえるように思います。

夫死亡後に夫単独名義の不動産に妻の持分2分の1を認めた裁判例

あ 判断の局面

住居(土地・建物)は夫の単独所有となっていた
夫が亡くなった(死別)
相続人は妻と(先妻との間の)子2人であった
遺産分割の前提として、遺産の範囲を裁判所が判断した
民法250条を適用し、夫婦それぞれの持分割合は2分の1とした

い 裁判例の引用

ア 単独所有名義にした理由 各不動産を総て被相続人名義にした理由は、相手方等夫婦は家屋建築の目的で別紙目録の土地を順次購入し次いで家屋を建築したのであるが、その建築資金の一部を、住宅金融公庫からの融資に仰ぐ関係上、建築主を収入の多い被相続人とし、土地所有者を建築主と同一にする方が融資額も多く、また優先的に融資を受けられる点で有利と考えたからである。
イ 結論 別紙第一目録記載の不動産はすべて被相続人と相手方との共有に属しその持分を各二分の一とすべきである。
ウ 当事者意思による所有権の帰属の判断(共有) ・・・第一にこれらの不動産は被相続人と相手方とがいわゆる共働きをして得た収入によつて入手したものであり、被相続人の単独所有名義にしたのは上記四の末段に認定した事由によるものであるから、特段の事情のない限り両名の共有に属すると解するのが当事者の意思に添う所以である・・・
エ 持分割合の合意の有無 第二にこれらの不動産購入資金の内一六パーセントを被相続人が、三四パーセントを相手方が現に支出しているが、全資金に対する両者の分担率は、住宅金融公庫からの借入金に対する負担の割合をどう定めるかによつて変動するものであり、その割合を定めた形跡もないから、結局両者の間に分担率について明確な取りきめはなかつたものと考えられ、このことは取りも直さず持分の割合についても取りきめがなかつたことを意味する。
オ 均等推定の適用 他方両者の収入額は前記二に認定した通りであるところから婚姻後の取得財産に対する相手方の寄与の度合は通常の家庭の主婦と異りとりわけ高いことが認められるのであつて、このような場合金銭的寄与額の差に拘泥し民法第二五〇条の推定を破つてまで両者の持分に差等をもうけることは、夫婦共同体の本質に照し妥当でない・・・
※大阪家審昭和40年3月23日

なお、この理論を前提とすると、妻の持分2分の1相続人全体の持分2分の1は物権共有であり、(登記は亡夫の単独所有のままで)共有物分割ができるということになります。このことについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|単独所有登記だが実質的な(元)夫婦共有の不動産の共有物分割

(3)離婚後の夫単独名義の不動産に妻の持分3分の1を認めた裁判例

これも、(元)夫の単独所有の登記がある不動産について、(元)妻との共有であると判断した裁判例です。この事案では夫が亡くなったわけではありません。
すでに離婚した後であったけれど、離婚の際の財産分与で、この不動産は無視された(夫の単独所有のままとされた)という事情がありました。というのは、オーバーローンである場合は財産分与の対象とはしないのが一般的なのです。
そこで、離婚から時間が経過してから、実質的に財産分与と同じ処理がされたといえます。具体的には、不動産の取得のために支出した金銭の割合は、夫2、妻1と計算できたので、妻の持分が3分の1となったのです。
結論として、明渡請求が否定され、家賃相当額の3分の1の金額の請求が認められました。
いずれにしても、登記は夫の単独所有であるが実体は夫婦の共有と判断されたのです。ということは仮に元妻が共有持分の移転登記(所有権一部移転登記)を請求すれば認められたかもしれません。(本件は違いますが)離婚成立から2年後までに財産分与の請求をしていなかったケースでその後に共有持分の移転登記請求を認めると、財産分与の期間制限を潜脱できたような状態になります。
また、実体上共有と認めたということは、元夫(または元妻)が共有物分割を請求していれば、裁判所はこれを認める、とも考えられます。

離婚後の夫単独名義の不動産に妻の持分3分の1を認めた裁判例

あ 判断の局面

建物は夫の単独所有となっていた
離婚訴訟の判決により離婚が成立した
この際、建物はオーバーローンであったため、財産分与の対象財産としては扱われなかった
=離婚後も夫の単独所有のままとなった
(元)妻が建物に居住していた
その後、元夫が元妻に対して建物の明渡と金銭(使用料相当損害金)を求める訴訟を提起した

い 裁判例の要点

ア オーバーローン不動産の財産分与からの除外(前提) 不動産がオーバーローンである場合、離婚の際の財産分与から除外する方法が採用されることもある
詳しくはこちら|財産分与におけるオーバーローン不動産の扱い(全体で通算か清算対象からの除外)
イ 離婚後に共有関係を判断する構造(前提・引用) ・・・夫婦の一方がその特有財産から不動産売買代金を支出したような場合には、当該不動産が財産分与の計算においてオーバーローン又は残余価値なしと評価され、財産分与の対象財産から外されたとしても、離婚訴訟を担当した裁判所が特有財産から支出された金員につき何ら審理判断をしていない以上、離婚の際の財産分与とは別に、当該不動産の共有関係について審理判断がされるべきである。
ウ 共有の判断 建物の購入・建築費用のうち、元妻の固有財産が負担した割合は3分の1である
3分の1については元妻の持分に属する
エ 明渡請求の判断 元妻は共有持分を有している→明渡請求は認めない
オ 金銭請求の判断 賃料相当額の3分の2の金額の請求(使用料相当損害金)を認める
※東京地判平成24年12月27日

(4)建物に同居する者の間の共有を認めなかった裁判例

次の裁判例は、建物を建築した時にはAの単独所有であったというケースです。その後、AとB(のそれぞれの世帯)がこの建物に同居し、増改築工事の際にはAとBが費用を出し合いました。ただ、登記はA単独所有のままでした。
この点、動産であれば、加工をした者が所有権を得る可能性がありますが、不動産ではこのルールは適用されません。
詳しくはこちら|民法の添付(付合・混和・加工)の規定(民法242〜248条)
本件でBは、AとBが共有とする合意をしたと主張しました。法的には、いったん単独所有となっていても、その後に合意があればその時から共有に変わります(所有権の一部が移転するのです)。
そこで、共有とする合意があったと認められるかどうかが問題となります。
裁判所は、その建物が2世帯住宅ではないというような事情から、Bの世帯が半永久的に居住する(Aと同居する)ことを想定していたわけではないと判断し、共有とする合意を否定しました。
結局、持分割合以前に、共有であること自体が否定されました。

建物に同居する者の間の共有を認めなかった裁判例

あ 判断の局面

Aが、借りた土地の上にA名義の建物を建てた
A夫婦と娘Bの家族が建物に同居していた
建物の増改築工事を行った
その際の費用をAとBの夫が折半して負担した
その後Bが亡くなり、Aも亡くなった
Aの妻子は、Bの夫・子らが建物及び土地賃借権の共有持分を有しないことの確認を求めた
Bの夫は、増改築後の建物につき、Aとの間に共有の合意があったと主張した
裁判所は、共有の合意を認めなかった

い 裁判例の引用

ア 事実認定(前提) 本件建物は、昭和47年7月14日付けで、Aを所有者として所有権保存登記がなされている。
イ 結論 被告らは、Aと被告Y1との間で、本件増改築工事によって完成した本件建物を共同所有とする旨の合意があった旨主張する。
しかしながら、前記の認定事実を総合しても、Aと被告Y1との間でそのような合意があったとは認められない
ウ 共有合意の有無 被告Y1は、昭和63年に住宅修築費用として、200万円を借り入れ、これが本件増改築工事に充てられたことは認められ、また、本件増改築工事の前後や平成14年ころに被告Y1が、本件増改築工事に伴う費用や本件建物のために一定の支出をしたこと、本件建物の固定資産税や地代の一部を負担していたことを認めることができる・・・。
そうすると、少なくとも被告Y1夫婦としては、ある程度の期間本件建物に居住するつもりであったことは推認することはできる。
しかしながら、前記1の事実によれば、平成4年ころには、A夫婦と被告ら家族との間では衝突が起こるようになっていて、A夫婦は同居の不満を漏らすようになっていたこと、その後、平成21年にはAが被告らに対して本件建物の明渡しを求める訴訟を起こすまでに至っていること、本件建物の床面積は合計80平方メートル程度しかなく、二世帯6人で生活するには手狭であり、また、その間取りも、今後二世帯でずっと生活するのに適したものとは言い難い(玄関、台所、風呂及びトイレは1つずつしかなく、二世帯住宅として独立性をもった形ではない)ことからすれば、A及び被告Y1の双方ともが、相当程度長期にわたって二世帯で生活することが前提になっていることを認識・了解していたとは認めがたい
エ 建物所有権の帰属 被告Y1が本件増改築工事に一部費用を負担したとしても、増増改築部分は明らかに本件建物の一部として付合しており、当時の所有者であるAに帰属する(民法242条
※東京地判平成23年8月22日

(5)婚姻中の夫名義の預金に民法250条を適用した裁判例(参考)

不動産ではなく預金(債権)について、名義は単独でも実質的には共有かどうかが問題となることがあります。
預金が夫単独でも、夫婦間では実質的な共有であり、その共有とは(財産分与がされるまでは)潜在的なものにとどまります。しかし、財産分与がなされていないのに、共有持分が具体化したと読める解釈を示した裁判例もあります(横浜地判昭和52年3月24日)。この裁判例では、共有持分割合の判定に民法250条を適用しました。
一般的には夫婦共有財産の共有持分割合(分与割合)は、民法768条2項を適用し、単に貢献度によって判断します。
このように2つの点でマイナーな解釈が採用されたのです。実務では通常採用されない見解ですが、参考にはなります。別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|妻による夫名義の預金の引き出しを不法行為と位置づけた裁判例

4 登記は共有のケース(持分割合の認定)

(1)離婚後に登記とは異なる持分割合を認定した裁判例(概要)

次に、登記は共有となっているケースでも、裁判所が登記とは異なる共有持分割合を認定する、ということがあります。
離婚後に、元夫婦間で共有物分割をしたケースで、裁判所が、購入資金の負担の状況を元にして、登記とは異なる持分割合を認定したものがあります(東京地判平成26年10月6日)。すでに離婚から2年が経過していたので財産分与請求ができないところ、共有物分割訴訟の中で、夫婦間の清算(実質的な財産分与)をしたような結果となっています。この裁判例については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|離婚後の元夫婦間の共有物分割(経緯・実例)

(2)共同購入の不動産の持分割合を登記どおりとした裁判例

民法250条が使われるのは、持分割合が不明というケースだけです。
次に紹介するケースは、2人でお金を出し合って不動産を購入したというものです。このように、合意によって共有が形成された(始まった)場合には、持分割合も合意で決まります。
前述のように、不動産登記では、共有とする場合には持分割合を明記する必要があります。このケースでは、登記上、持分割合はそれぞれ2分の1としていました。
そこで、裁判所は、2人は持分割合を2分の1ずつとするという内容の合意をした(意思であった)と判断しました。
結果的に均等ではありますが、民法250条の推定を使ったわけではありません。

共同購入の不動産の持分割合を登記どおりとした裁判例

あ 判断の局面

交際関係にあった男女が共同生活を営むための不動産を共同購入した
共有割合はそれぞれ2分の1ずつとする登記をした
関係解消後、共有物分割協議をしていた
男性が死亡したが、その相続人が分割協議に応じなかった
女性が不動産の共有物分割請求訴訟を提起した
男性の相続人は、不動産の取得等のために双方が負担した金額の割合での分割を主張した
裁判所は、男女間に持分を2分の1とする合意があったと認めた
本件不動産の共有物分割は、各2分の1の持分割合に従って行うとした

い 裁判例の引用

ア 不動産の取得経緯 原告は、Bとの婚姻を前提に、共同生活を営むべき本拠として、・・・Bとともに本件各不動産を共有取得した(持分は各2分の1)。
イ 結論 本件各不動産取得時において、原告とBの本件各不動産についての持分は各2分の1とする合意があったものと認められる。
ウ 持分割合の判断基準=当事者の意思 本件の共有は、本件各不動産を購入した当事者(原告及びB)の意思により生じたものである。
そうすると、共有における各共有者の所有の割合が持分であるから、持分(割合)も当事者の意思によって決定されることとなる。
エ 登記による当事者意思の認定 ・・・不動産を共有する者は、登記を申請する場合、必ず持分を記載しなければならない(不動産登記法59条4号)とされているところ、本件各不動産においては、原告とBの持分は各2分の1(本件土地3は、各4分の1)と記載されており、原告とBの間においては、登記申請時(本件各不動産取得時)において、本件各不動産についての持分は相等しいものとする意思であったものと推認される
オ 推定の反証の有無 その後、上記両者の間で、持分割合の変更合意をしたことを窺わせる証拠はない。
・・・更に、B死亡後において、原告と、Bの持分を相続した被告との間で、上記持分割合を変更する合意が存在した事実は認められない。
カ 負担額による認定の否定 被告は共有物の取得・維持に関わる当事者の出捐額によって分割割合を決めるべきであると主張するが、・・・独自の見解を主張するものであって採用できない。
キ 財産分与の類推適用の否定 なお、・・・原告とBとの間で本件各不動産の分割協議を開始したのは、同居生活を解消してから4年以上経過した時点であること(前記1(2)ア参照)、本件は当事者の一方が死亡した後の特定の不動産に関する共有関係の解消を行うものであることを考慮すると、準婚的内縁関係の解消と捉えて財産分与請求権の趣旨を類推適用できると解することはできない
※東京地判平成21年3月27日

5 登記なしのケース

(1)準共有借地権の持分割合を建物の床面積で算定した裁判例

準共有の借地権について、共有持分割合が問題となった裁判例を紹介します。
広い土地を対象とする借地権を複数人で持っていたというケースです。この借地上に複数の建物があり、建物ごとに所有者が違っていました。
素朴な感覚だと、各建物所有者がその敷地部分の借地権を持っている、と考えたくなります。しかし、賃貸借契約(借地契約)は全体の土地について1つです。1個の賃貸借契約なので、借地権も1つです。1つの借地権を複数の者が持っているということになります。借地権の準共有です。
賃借権の登記は通常されることはなく、本件でも登記されていませんでした。登記をみれば持分割合が分かる、ということはありません。
では、ここで民法250条の出番が来たと思うかも知れませんが、仮にそうだとすると共有持分割合は均等になります。3人がそれぞれ3分の1ということになります。
ところで、3人がそれぞれ所有している建物の敷地部分の広さは均等ではありません。持分割合を3分の1とするとこの実情に合致しません。
そこで裁判所は、民法250条の推定を使わず、それぞれの者が有している建物の(合計の)床面積の割合を(借地権の)持分割合とする、と判断しました。
なお、この判断は、共有物分割における現物分割を採用することを前提として、分割する基準となる割合として持分割合を算出したというものです。
準共有の借地権の現物分割については否定する見解もありますが、本件では特殊な事情があったのでこの問題は表面化しないで済みました。
詳しくはこちら|借地権の共有物分割(現物分割・換価分割に伴う問題)

準共有借地権の持分割合を建物の床面積で算定した裁判例

あ 判断の局面

YらがAから借りた土地上に7棟の建物を所有していた
Bがそのうち5棟の建物(と借地権)を取得した
Bは土地(貸地の全体)を取得した
BはYらに対し、土地の準共有賃借権の分割請求訴訟を提起した
Bは建物と土地をXに売却した
Xが訴訟に承継参加し、Aは訴訟から脱退した
裁判所は、借地権の現物分割を認めた
分割割合は、それぞれ所有する建物の面積の割合に従って算定するとした

い 裁判例の引用

ア 借地権の準共有 脱退前原告は、本件借地権につき、被告らと準共有者の地位にあったことが認められ、参加人は、脱退前原告から本件建物を取得し、本件借地権も併せて取得したものと認められるから、参加人と被告らは、本件借地権に関して準共有者の関係にあるものと認められる
イ 持分割合の特定(基本部分) (現物分割に関して)
その分割の基本的基準は、本件借地権の準共有持分割合であると解される。
その持分の割合は、民法上、均分が推定されているが(民法二六四条、二五〇条)、本件では、参加人が本件借地権の対象となる地上建物の大半を所有しており、被告らは件外建物のみを所有していることに照らすと、上記均分推定が破られる特段の事情が存在するといえ、本件では、参加人と被告らの本件借地権の準共有持分割合は、参加人と被告らがそれぞれ所有する本件建物の面積(物件三及び物件六については、物件一上の面積を除く、本件土地上の面積)と件外建物の面積の割合に従って算定するのが合理的である。
オ 持分割合の特定(建物面積のあてはめ) ・・・参加人の借地面積が六三四・四二m2、被告らの借地面積が三七二・一八m2であると認められるから、この比率を原則的基準として本件借地権を分割すべきである
※東京地判平成20年10月9日

本記事では、共有であるかどうか、共有である場合に持分割合をどのように判定するか、ということについて、裁判例を挙げて説明しました。
実際には、個別的事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
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