【借地上の建物の増改築・建替えのトラブルの解決方法(弁護士ガイド)】

1 増改築・建替えのトラブルの解決
2 不動産鑑定士の鑑定は役立つがブレがある
3 増改築許可の裁判による解決
4 借地条件変更の裁判による解決
5 承諾を得ないで増改築・建替えをする強行作戦
6 借地のトラブルに詳しい弁護士へ相談の推奨

1 増改築・建替えのトラブルの解決

借地上の建物の増改築・建替えに関して,地主と借地人の交渉がまとまらないというトラブルはよくあります。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築・建替えの承諾で起こるトラブル(弁護士ガイド)
実際にそのような状況で,弁護士が依頼を受け,解決を実現するケースは多いです。
本記事では,増改築や建替えのトラブルの解決の方法について説明します。

2 不動産鑑定士の鑑定は役立つがブレがある

承諾料の算定の元になる更地(土地)の評価額について意見が食い違うトラブルがあります。
この点,更地の評価額については,不動産鑑定評価基準という公的な算定基準があります。
さらに,不動産鑑定士という公的資格を持つ者が鑑定評価を行っています。
そこで,不動産鑑定士が鑑定評価をすれば正しい評価額がはっきりすると思ってしまうかもしれません。
しかし,不動産鑑定士によって違いが出る評価事項がいろいろとあります。
そのため,複数の不動産鑑定士が鑑定しても,実際に鑑定結果には違いが出ます。
不動産鑑定士の鑑定評価は,交渉での手がかりとなり,合意(解決)に至ることもあります。
しかし,地主と借地人のそれぞれが依頼した不動産鑑定士の評価額が大きく開くこともよくあります。
不動産鑑定士の鑑定評価によって合意(解決)に至るとは限りらないのです。

3 増改築許可の裁判による解決

地主と借地人のいろいろな要望が合致して合意しない限り,増改築や建替えの承諾は成立しません。
このような時のために,地主に代わって裁判所が許可する制度があります。
増改築許可の裁判というものです。借地非訟の裁判の中の1つです。
老朽化したために現在の建物と規模が変わらない建物を建築するのであれば,裁判所は通常許可します。
後は承諾料の算定が主な判断事項となります。
承諾料の金額は,相場を元にして算定されます。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築・建替えの承諾料の相場(弁護士ガイド)
裁判所の審理では鑑定委員会が実質的に細かい判断や算定を行います。
具体的には,弁護士・不動産鑑定士・一級建築士のことです。
詳しくはこちら|借地非訟の裁判における鑑定委員会とその意見
ここで,鑑定委員会の不動産鑑定士が現実には更地の評価額を算定します。
この評価額を含めた鑑定委員会の意見は,そのまま決定に使われることが多いです。

4 借地条件変更の裁判による解決

木造をRC(鉄筋コンクリート)に変えるような改築では,増改築の許可の裁判は使えません。
借地条件変更の裁判を利用することになります。
詳しくはこちら|借地条件(変更)と増改築禁止特約(許可の裁判)の包含関係
借地条件変更は一般的な増改築よりも規模が大きいです。
そこで,裁判所が認めるハードルは高めです。
例えば,周辺に木造建物がほとんどない防火地域であれば,木造は時代遅れ・ふさわしくないといえるでしょう。
このような状況があれば裁判所は借地条件変更を認めます。
詳しくはこちら|借地条件変更の裁判の実質的要件(判断基準)
借地条件変更を認める場合,承諾料(財産上の給付)の金額も定めます。
相場を元にして算定されます。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築・建替えの承諾料の相場(弁護士ガイド)
裁判所の審理では,現実には鑑定委員会の判断が重要です。前記の増改築許可の裁判と同じです。

5 承諾を得ないで増改築・建替えをする強行作戦

増改築や建替えを地主が承諾しない場合,借地人側の選択肢として,承諾がないまま増改築や建替えを強行するというものもあります。
もちろん,地主は増改築禁止特約違反を理由に解除を主張します。
これに対して,解除を認めないで借地人を保護するという判断の傾向があるのです。
詳しくはこちら|借地契約の増改築禁止特約の有効性と違反への解除の効力
しかし,当然ですが,事情によっては解除が認められます。
詳しくはこちら|増改築禁止特約の違反による解除の効力(裁判例集約)
借地人は非常に大きなリスクを負います。地主にとっては大きなチャンスといえます。
理論的にはあり得ますが,実際に借地人がこの選択肢を取ることは少ないです。

6 借地のトラブルに詳しい弁護士へ相談の推奨

以上の説明は,多くの法律の規定や解釈論のごく一部です。
個別的な事情によっては,原則とは違う扱いとなることもよくあります。
また,交渉や裁判手続については(当然ですが),1つ1つのアクションが,最終結果に影響します。
借地のトラブルに詳しい弁護士であれば,スピーディーに適切なアドバイスを差し上げることができます。
具体的なトラブルに関しては,具体的なアクションを行う前に,まずは法律相談で弁護士から正式なアドバイスを受けることをお勧めします。

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