1 借地非訟の裁判における鑑定委員会(総論)
2 鑑定委員会の意見
3 鑑定委員会のメンバー
4 鑑定委員会の意見と当事者の陳述
5 鑑定委員会の意見の扱い

1 借地非訟の裁判における鑑定委員会(総論)

借地非訟の審理では,一般的な訴訟とは異なるルールが適用されます。
詳しくはこちら|借地非訟の裁判に共通する手続のルール
独特の審理の手法の1つに,鑑定委員会の意見を聴く,というものがあります。
本記事では,借地非訟手続における鑑定委員会のメンバーや判断(裁判)への影響について説明します。

2 鑑定委員会の意見

借地非訟手続のすべてに共通して,鑑定委員会の意見が必要とされています。

<鑑定委員会の意見>

あ 条文規定

借地非訟手続のすべてについて
本裁判・付随的裁判をする場合
特に必要がないと認める場合を除いては
鑑定委員会の意見を聴かなくてはならない
※借地借家法17条6項,18条3項,19条6項,20条2項

い 鑑定委員会の意見の要否

付随的裁判の判断においては鑑定委員会の意見が必要である
本裁判については必ずしも必要ではない
※星野英一『法律学全集26 借地・借家法』有斐閣1969年p184
※幾代通ほか『新版注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣1996年p490
※有力説
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第2版』日本評論社2003年p125

3 鑑定委員会のメンバー

鑑定委員会のメンバーには,専門家が選任されています。

<鑑定委員会のメンバー>

あ 構成に関する規定

鑑定委員会として
裁判所が3人以上を指定する
※借地借家法47条1項,2項

い 実務の運用

次の3名を選任するのが通例である
メンバー=弁護士+不動産鑑定士+一級建築士
※東京地裁(民事22部)の一般的な運用
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p212

4 鑑定委員会の意見と当事者の陳述

借地非訟の審理では鑑定委員会の意見が必要です(前記)。
ただし,その前に当事者の陳述が必要です。
実務では,当事者(の代理人弁護士)は積極的に,事実に関する資料や主張と,法律解釈に関する主張を適切に行う必要があります。

<鑑定委員会の意見と当事者の陳述>

鑑定委員会に意見を求める前に
裁判所は当事者の陳述を聴かなくてはならない
※借地非訟事件手続規則17条2項

5 鑑定委員会の意見の扱い

鑑定委員会の意見は,理論的には裁判所を拘束しません。
これは当然のことですが,実情としては尊重されます。
つまり,鑑定委員会の意見に沿った内容の判断(裁判)がなされることが多いのです。
当事者(代理人弁護士)が事前に説得的な主張・立証を行うことが,鑑定委員会が当方に有利な見解を持つことにつながります。
鑑定委員会の意見が出た後に裁判所を説得するのは最適な戦略とはいえません。

<鑑定委員会の意見の扱い>

あ 理論面

鑑定委員会の意見について
できるだけ尊重すべきである
裁判所は鑑定委員会の意見に拘束されない

い 実務の傾向

実務では鑑定委員会の意見の全部or大部分に沿った裁判が多い
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第2版』日本評論社2003年p125
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p212