1 全面的価格賠償×オーバーローン|概要
2 事案|建物新築
3 事案|不動産に関する権利関係
4 事案|離婚→共有解消
5 裁判所の判断|賠償額の算定
6 裁判所の判断|個別・特殊事情
7 裁判所の判断|便宜的金額設定

1 全面的価格賠償×オーバーローン|概要

全面的価格賠償では担保の負担の扱いの問題があります。
詳しくはこちら|全面的価格賠償|賠償金算定|担保負担額の控除
この点,担保負担額が共有物の評価額を上回ることもあります。
いわゆる『オーバーローン』と呼ばれる状態です。
全面的価格賠償に関して,この扱いが問題となります。
以下,判例の判断を紹介します。
個別的事情を大きく反映したものです。

2 事案|建物新築

まずは,事案をまとめます。

<事案|建物新築>

夫A・妻Bがマイホームを新築することとなった
建物建築資金は次のように分担した
ア Aが支出した現金
イ 妻の妹Cが借り入れたローン

3 事案|不動産に関する権利関係

<事案|不動産に関する権利関係>

あ 建物の共有者

A・妻の妹C
→建築資金を負担した者である

い 建物の負担する担保権

建物にはローンの担保権が設定されていた
ローンの債務者=Cだけ

う 土地の共有者

B・C+その母D
→妻側の親族である

え 土地の利用権原

土地の利用権原は使用貸借であった

4 事案|離婚→共有解消

<事案|離婚→共有解消>

あ 離婚

A・Bは離婚した
Aが退去し,Bが居住を続けることとなった
共有を解消することとなった

い 共有物分割訴訟

Aが共有物分割訴訟を提起した
Cが取得する全面的価格賠償となった

5 裁判所の判断|賠償額の算定

以上の事案について,裁判所が判断を示しています。
以下,裁判所の判断の内容をまとめます。

<裁判所の判断|賠償額の算定>

あ オーバーローン

ローン残額が建物評価額を上回っていた

い 被担保債権残額の控除

被担保債権の残額について
→個別的な特殊事情を考慮した(後記※1)
→控除する

う 便宜的金額設定

単純計算ではマイナスになってしまう
→便宜的に100万円とした(後記※2)
※東京地裁平成18年6月15日

6 裁判所の判断|個別・特殊事情

上記の個別事情の内容を展開します。

<裁判所の判断|個別・特殊事情(※1)>

あ 土地の利用権原

使用貸借である
→弱い権利である

い 持分を失う共有者の利益

Aは持分を失うことになる
Aが居住することは考えられない
→Aにとって共有持分の価値は低い

う 財産分与の仮想

仮に『AB夫婦間』の財産分与として考えた場合
→一般的にローン残額を控除する
→Bが取得しても代償金は発生しない

7 裁判所の判断|便宜的金額設定

最終的な便宜的金額設定の内容をまとめます。

<裁判所の判断|便宜的金額設定(※2)>

あ 単純計算

評価額からローン残額を控除すると
→単純計算ではマイナスになってしまう

い 失う共有者の持分の価値

Aの共有持分の価値について
一般的抽象的には一定の利用権原がある
→ゼロではない
→ゼロではない金額を決めるべきである

う 便宜的金額設定

Cは100万円を主張していた
→便宜的な最低限の金額として妥当である
→裁判所は100万円と定めた
賠償金=100万円