1 権利能力なき社団×財産の所有|基本
2 権利能力なき社団×財産の所有
3 権利能力なき社団の総有権確認請求の当事者適格

1 権利能力なき社団×財産の所有|基本

複数の人の『団体』が不動産を所有することがあります。
会社などの法人であれば形式は単純になります。
法人ではない場合は法的扱いが複雑になります。
『権利能力なき社団』とか『権能なき社団』と呼ばれます。
権利能力なき社団の財産所有についてまとめます。

<権利能力なき社団×財産の所有|基本>

あ 権利能力

権利能力なき社団による所有について
実質的には法人所有に近い
しかし社団自体が権利主体とはなれない

い 構成員による所有|基本

構成員に総有的に帰属する

う 総有|内容

構成員の持分権がない
脱退に際しての財産分割請求ができない
※最高裁昭和32年11月14日

え 他の学説

権利能力の解釈については他の見解もある
※『論点体型判例民法6契約2』第一法規p99

共有の中の特殊な『総有』という状態とされているのです。

2 権利能力なき社団×財産の所有

権利能力なき社団の財産に関する訴訟もあります。
判例の判断を紹介します。
まずは前提部分の財産所有に関する判断をまとめます。

<権利能力なき社団×財産の所有>

あ 事案(※1)

権利能力なき社団が不動産を所有していた
登記上は代表者4人の共有名義であった

い 裁判所の判断|共有の分類

共有の中で『総有』に分類される

う 裁判所の判断|代表者の権限

代表者の権限について
→構成員から信託的に財産管理権限を与えられている
※最高裁昭和46年10月7日

3 権利能力なき社団の総有権確認請求の当事者適格

前記の続きが総有権確認訴訟の当事者に関する判断です。

<権利能力なき社団×総有権確認請求|当事者>

あ 事案

(前記※1)と同じ事案である

い 総有権確認請求の当事者適格

総有権確認請求訴訟の性質
→土地の総有権そのものを失うリスクがある
→構成員全員の特別の合意が必要である
→代表者のみによる提訴はできない
※最高裁昭和55年2月8日

う 通常の共有の確認訴訟(参考)

通常の共有における共有権確認訴訟は、共有者全員が原告となる必要がある(固有必要的共同訴訟)
※最判昭和46年10月7日
詳しくはこちら|共有物に関する確認訴訟の当事者適格・共同訴訟形態