【民法上の組合の解散後の組合財産の分配(共有物分割など)】

1 民法上の組合の解散後の組合財産の分配(共有物分割など)

民法上の組合は、複数人(組合員)が協力して事業を行うというものです。この契約が終了する場面、つまり解散した後には、組合財産を組合員で分けることになります。残余財産の分配(分割)といいます。具体的な方法として、共有物分割(訴訟)を使うこともあります。
本記事ではこのような、組合解散後の組合財産の分配について説明します。

2 条文規定→残余財産は「分割」する

最初に、民法の条文を確認しておきます。組合の解散の後には、清算人残余財産分割することになります。

条文規定→残余財産は「分割」する

(清算人の職務及び権限並びに残余財産の分割方法)
第六百八十八条 清算人の職務は、次のとおりとする。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の引渡し
2 清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。
3 残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割する。
※民法688条

3 「残余財産」の意味→組合債務弁済後の積極財産(前提)

前記の条文をみると分かりますが、残余財産とは組合として負っていた債務を弁済した後に残っている財産、という意味です。出資の返還(償還)の原資となるものです。

「残余財産」の意味→組合債務弁済後の積極財産(前提)

残余財産とは、組合財産をもって組合債務を弁済した後に残存する積極財産の全部であって、出資を償還した残りではない(鳩山・下720、我妻・中II848、我妻=有泉433)。
※菅原菊志稿/鈴木禄弥編『新版 注釈民法(17)』有斐閣2003年p190

4 金銭以外の残余財産の分配の基本→清算人が現物分割

残余財産が金銭など、単純に組合員に支払える(分配できる)ものであれば、原則どおり清算人が行います。金銭以外であっても分け方に迷うことなく単純に分けられるものであれば清算人が行えます。

金銭以外の残余財産の分配の基本→清算人が現物分割

残余財産の分配率が確定しており、かつ残余財産が金銭である場合、また現物であっても分配率に従って分割することが容易である場合には、清算人はこれをなしうるこというまでもない。
※菅原菊志稿/鈴木禄弥編『新版 注釈民法(17)』有斐閣2003年p191

5 金銭以外の残余財産の分配が単純ではない場合

問題となるのは、残余財産が金銭ではなく、単純に分けることができない場合です。古い判例で、その場合でも清算人の判断だけで分けられる(分配、分割できる)という解釈があります。
しかし、それでは不公平になることを防げません。そこで、組合員全員の同意が必要である、という見解もあります。この見解は、組合員全員の同意に至らない場合は最終的に、共有物分割訴訟として裁判所が分け方(分割方法)を決めるということになります。ここでの共有物分割は組合財産の清算として分割する、ということになるので、共有物分割(民法258条)がストレートに適用されるわけではなく類推適用(準じる)ということになります。

金銭以外の残余財産の分配が単純ではない場合

あ 古い判例→清算人独断可能

・・・判例は、清算人が清算のため組合財産を処分するには、共有物分割請求の手続(256・258)によることを要せず、したがって、組合員全員の同意または裁判所の許可を要せずして、清算人独断でこれを処分することができる、と解している(大判大12・7・14民集2・491、前掲長崎控判大11・7・10)が、賛成できない(同旨:末弘厳太郎・判民大正12年度〔大14〕93事件評釈)。

い 菅原菊志氏見解→全員同意または共有物分割訴訟

ア 原則→組合員全員の合意 労務出資や信用出資を改めて評価して分配率を確定すべき場合や、異なる種類の現物をそれぞれ各組合員に分配する場合などには、組合契約において清算人が特にこれをする権限を与えられている場合のほかは、清算人は任意に定めることができないのはもちろん、清算人の過半数をもって決することもできず、組合員全員の合意によるべきである。
それは、分割方法をいかにするかは各組合員にとって重大な利害関係を有する事項であり、清算の目的を超えることだからである。
イ 合意不成立の場合→共有物分割訴訟 そしてその点について合意が成立しなければ、共有に関する258条を類推し、裁判所に分割を請求すべきである(末弘859、我妻・中II849。反対?:鳩山・下720)。
※菅原菊志稿/鈴木禄弥編『新版 注釈民法(17)』有斐閣2003年p192

6 残余財産の分割として共有物分割をした裁判例(概要)

実際に、残余財産について、清算人が分配、分割をしなかった事例で、裁判所が共有物分割を実施したものがあります。

残余財産の分割として共有物分割をした裁判例(概要)

従つて、残るは、原・被告各二分の一の割合による残余財産の分配であるところ、これについては、原告は民法第二五八条(共有物分割請求の訴)に準じて、裁判所に対し、個々の財産につき分割の請求をすることができると解するのが相当である。
けだし、組合財産は組合目的達成のための経済的手段であるから、組合員の共有に属し(民法第六六八条)、清算前にその分割を求めることはできない(同法第六七六条)が、既に組合が解散し、組合の債権債務の整理を完了した後の残余財産はもはや組合目的に拘束されず、分割の対象としての共有財産であるから、その分割については、清算人による分配の手続がなされない以上、共有物分割の規定を類推してこれを行うのが相当であるからである。
※横浜地判昭和59年6月20日
詳しくはこちら|病院経営への組合認定・解散後の共有物分割を認めた裁判例(横浜地判昭和59年6月20日)

7 組合財産の共有物分割の禁止(参考)

ところで、民法上の組合の財産は、通常であれば共有物分割が禁止されています。
詳しくはこちら|民法上の組合の財産の扱い(所有形態・管理・意思決定・共有の規定との優劣)
しかし、解散後は分割(分配)すべき状態なので、この共有物分割禁止ルールは適用されないことになるのです。

本記事では、民法上の組合の解散後の組合財産(残余財産)の分配について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に組合財産(共有不動産など)や共有物分割に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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