【共有者の不正な登記の抹消請求の判例・裁判例の集約】

1 共有者の不正な登記の抹消請求の判例・裁判例の集約

実体上の権利を持たない者の名義の登記は無効です。真の権利者は抹消登記手続を請求できます。共有に関係するケースでは、請求する者や、請求を認める範囲など、法的な扱いは複雑になります。
詳しくはこちら|共有不動産の不正な登記の是正の全体像(法的問題点の整理・判例の分類方法・処分権主義)
このようなケースの判例は数多くあります。
本記事では、共有者が不正な登記名義を有するケースにおいて、登記上、持分を侵害された共有者(被害者)が原告となって登記の是正を求めた事例(判例)を紹介します。従来の判例の分類における乙類型とされるものです。
判決(決定)が出された時期の順に説明します。
また、事案内容の整理(表)は、新方式の判別基準を元にした判別フローに沿ったものです。『判別1〜3』と『結果1〜4』は、判別フローに記載したものと対応しています。新方式の判断基準とこれを元にした判別フローについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|共有不動産に関する不正な登記の是正方法の新方式判別基準
詳しくはこちら|共有不動産の不正な登記の是正方法の判別フローと『支障』の整理

2 大正8年大判(判例変更前)

被告は登記上、実体上の権利(共有持分権)を超えて単独所有となっていました。
他の共有者による全部抹消の請求が認められました。
権利の帰属に着目すると、持分2分の1の範囲では一致していることになります。物権変動としても、登記上の(登記原因)『家督相続』と実体の『相続』は一致していると思われます。なお、例えばこの家督相続が隠居によるものとして被相続人の生前の日付が登記されている(原因日付)とすれば、実体上の物権変動である相続の時点とは異なるので一致していないという判断もあるかもしれません。ただ、この判決の中では登記と実体の一致の有無については触れられていません。
結論として、登記と実体に一致がある(かもしれない)が、抹消登記を認めたといえるでしょう。そうすると、その後の判例の判断とは異なるということになります。

大正8年大判(家督相続)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記(単独所有) 不正な登記と実体の一致 一部あり 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)

い 事案

家督相続が適用されない相続(共同相続)が開始した
相続人A(長男)は、共有持分権を承継した
しかし、所有権移転登記(家督相続としてのAの単独所有の登記)を行った

う 裁判所の判断

ア 要点 単独所有権の登記は1所有権の1個の登記である
多数の共有持分権の集合の登記ではない
単独所有権の登記のうち、ある部分の共有持分権の登記のみを残存させて、それ以外の共有持分権の登記を抹消するということはできない
単独所有権の登記を共有持分権の登記に改めるために抹消することができる
イ 判決文引用 単独所有権の登記は一所有権の一個の登記にして多数の共有権の集合登記に有らざるを以って、単独所有権の登記中、ある部分の共有権の登記のみを残存せしめて、他の共有権の登記を抹消することを得ず。
単独所有権の登記は、共有権の登記に改めるためこれを抹消することを得べきものとす。
※大判大正8年11月3日

え その後の判例との関係

大正8年大判(当該判例)は、大正10年大判(後記の『元祖』)により変更されたものと思われる(後記※1

3 大正10年大判(原告の被侵害部分に限定・元祖)

共有持分の範囲で原告と被告が対抗関係となっており、登記を先に得た原告が優先される状況でした。
つまり実体上の権利としては、被告は共有持分権だけを有する状態だったのです。しかし被告は単独所有の登記を有していました。
そうすると、不正な単独所有登記のうち被告が有する共有持分の範囲は実体と一致しているといえます。
そこで、抹消登記ではなく更正登記により是正する状況となります。要するに登記と実体が一致している範囲の登記は維持する結果といえます。
この考え方はこれ以降の多くの判例でも共通しています。その意味で元祖ともいえる判例です。
なお、原告は実体よりも登記上の持分が少ない共有者の全員でした。そこで、この判例では原告の持分の回復を超える更正登記(原告以外の被害者の持分を回復する更正登記)を認めるかどうかという点については判断されていません。

大正10年大判(原告の被侵害部分に限定・元祖)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記(第三取得者の単独所有) 不正な登記と実体の一致 一部あり(原告の共有持分の範囲で対抗関係となり原告が優先する) 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)

い 事案

A・Bの共有であり、このとおりに登記がなされていた
AがA持分をX(原告)に譲渡し、移転仮登記を行った
A・BはY1(被告)に所有権全体を譲渡し、移転登記を行った
Y1はY2(被告)に所有権(全体)を譲渡し、移転登記を行った
XはY1・Y2に対して所有権移転登記の抹消登記手続を請求した

う 裁判所の判断(実体(前提))

A持分については二重譲渡であり対抗関係となる
→先に(仮)登記を得ているXが優先となる
=実体上はXとY2の共有となる

え 裁判所の判断(結論)

ア 要点 所有権移転登記の(全部)抹消は、被告が正当に取得した権利についての登記を失うことになる
一部抹消(更正)登記の手続により共有名義の登記に改めるべきである
登記上Xの共有持分を回復する登記という意味である
※大判大正10年10月27日
イ 判決文引用 一個の不動産上に共有持分権を有する者がその不動産につき単独所有権取得の登記を為したる第三者に対しその持分権を対抗しうる場合において所有権取得の登記の抹消によりて第三取得者の正当に取得したる権利を喪失せしむる恐れあるときは登記の抹消を許容すべきものにあらずして登記更正の手続により共有名義の登記に改めるを相当とす。
ウ 判例変更 大正10年大判(当該判例)は、従前の判例(大正8年大判・前記)を変更した
※能見善久ほか編『論点体系 判例民法2物権 第3版』第一法規2019年p358

お 登記手続に関する現行法との違い(参考)

現在の不動産登記法では
Xの本登記の申請の際、Yの承諾が必要である
→(承諾があることを前提として)Yの登記(のうちXの本登記と抵触する部分)は職権抹消される
→現在では前記の判例のような状況は生じない

4 昭和37年最高裁(元祖と同様)

前記の元祖の判例と同じような判断内容です。ただし、対抗関係による優劣は生じず、単純に被告が実体を超える不正な登記を得ていたというケースです。以下の元祖と同様の判例も対抗関係が生じていない単純な実体を超える不正な登記が生じたケースです。

昭和37年最高裁(元祖と同様)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記(相続による単独所有) 不正な登記と実体の一致 一部あり 判別1 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)

い 裁判所の判断

抹消登記は認めない
更正登記手続請求への変更を求めるよう釈明すべきである
※最高裁昭和37年5月24日

5 昭和38年最高裁(元祖と同様)

前記の元祖の判例と同じような判断内容です。

昭和38年最高裁(元祖と同様)

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記(相続による単独所有) 不正な登記と実体の一致 一部あり 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)
い 事案

Cが死亡した
遺産の不動産を相続人A・Bが承継した
Bが不法に所有権移転登記(単独所有)をした
AはBに対し抹消登記手続を請求した

う 裁判所の判断

登記の一部のみを抹消することは登記手続上不可能である
登記上表示されていなかった者の名義が新たに表示される点に着目した
実質において一部移転登記でもあるということができる
→A持分を回復する範囲についてのみの一部抹消(更正)登記のみを認める
所有権移転登記の全部抹消登記は認めない
※最高裁昭和38年2月22日
※藤井正雄『登記請求権』/『香川最高裁判事退官記念論文集 民法と登記(中)』テイハン1993年p331
※滝澤孝臣編著『最新裁判実務大系 第4巻 不動産関係訴訟』青林書院2016年p369、370

6 昭和39年1月最高裁(元祖と同様)

前記の元祖の判例と同じく、(部分的に)無効な登記の名義人無効な登記の名義人からの譲受人の両方が被告となったケースです。判断内容(結論)も元祖の判例と同じです。

昭和39年1月最高裁(元祖と同様)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記(相続による単独所有) 不正な登記と実体の一致 一部あり 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)

い 事案

Aが死亡した
遺産の不動産を相続人B・Cが承継した
Cが不法に所有権移転登記(単独所有)をした
Cは不動産(全体)をDに譲渡し、Dへの所有権移転登記をした
BはC・Dに対して抹消登記手続を請求した

う 裁判所の判断

B持分を回復する範囲についてのみの一部抹消(更正)登記のみを認める
各登記の全部抹消登記は認めない
※最高裁昭和39年1月30日

7 昭和39年4月最高裁(元祖と同様)

前記の元祖の判例と同じ判断です。

昭和39年4月最高裁(元祖と同様)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権保存登記(単独所有) 不正な登記と実体の一致 一部あり 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)

い 事案

Aが死亡した
遺産の不動産を相続人B・C・D・E・Fが承継した
Bが不法に所有権保存登記(単独所有)をした
C・D・E・FはBに対して抹消登記手続を請求した

う 裁判所の判断

C・D・E・Fの各自の持分を回復する範囲についてのみの一部抹消(更正)登記を認める
所有権保存登記の全部抹消は認めない
※最高裁昭和39年4月17日

8 昭和43年大阪高裁(原告の持分回復を超える更正登記を認めた・参考)

大阪高裁昭和43年12月11日は、登記と実体の一部が一致しているため、抹消登記はできず、更正登記により是正するというケースです。そして、以上の判例と異なり、登記上侵害を受けている共有者の一部”だけが原告となっていました。
結論として裁判所は、原告以外の共有者の持分を回復する更正登記を認めました。
他の判例の考え方では原告以外の共有者の持分を回復する更正登記は認められていません。そのため、この裁判例は主流となっている理論とは違う判断をした異例のものといえます。下級審裁判例でもありますし、実際のケースに適用されることはない判断(理論)だと思います。本記事では、参考となるものとして紹介しました。
この裁判例の内容については別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|原告の持分回復を超える更正登記を認めた昭和43年大阪高裁の分析

9 昭和44年最高裁(元祖と同様)

前記の元祖の判例と同じ判断内容です。

昭和44年最高裁(元祖と同様)

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権保存登記(単独所有) 不正な登記と実体の一致 一部あり 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)
※最高裁昭和44年5月29日

10 昭和59年最高裁(元祖と同様)

前記の元祖の判例と同じ判断内容です。

昭和59年最高裁(元祖と同様)

原告 侵害あり・被害者の一部 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記 不正な登記と実体の一致 一部あり 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)
い 事案

Dが死亡した
遺産の不動産をA・B・Cが承継した
Cが不法に所有権移転登記(単独所有)をした
AはCに対して抹消登記手続を請求した

う 裁判所の判断

Aの持分を回復する範囲についてのみの一部抹消(更正)登記を認める
所有権移転登記の全部抹消は認めない
※最高裁昭和59年4月24日

11 昭和60年最高裁(登記上の侵害者の一部を被告から除外)

原告が登記上侵害を受けている範囲で一部の抹消を認める、という意味では前記の元祖の判例と同じです。
このケースでは、登記上侵害している共有者(加害者)が4名存在しました。しかし、原告はこの4名のうち1名だけを被告にしていました。つまり、加害者のうち3名を意図的に除外したのです。
この点、共有名義人が被告となる不当な登記の抹消の請求の共同訴訟形態については見解が別れています。この判例では必要的共同訴訟ではないと判断しました。つまり、加害者の一部が訴訟の当事者から除外されていても問題ないという結果です。

昭和60年最高裁(登記上の侵害者の一部を被告から除外)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者・後記『う』) 不正な登記 所有権移転登記・所有権保存登記(共有・真実の持分割合と異なる・人物は一致している) 不正な登記と実体の一致 一部あり 第1判別 一致あり→是正方法は一部抹消(更正登記)となる→結論1=原告の持分を回復する範囲の一部抹消(更正登記)

い 事案(一部)

ア 経緯 Eが不動産を所有していた
Eが亡くなった
相続人はX(原告)・Y(被告)・D・F・Gであった
遺言による相続分の指定がなされていた
しかし指定相続分(割合)と異なる内容の登記(X・Y・D・F・Gの共有)が行われた
Xだけは真の共有持分割合よりも登記上の持分割合が少なかった
他の相続人(共有者)は、真の共有持分割合よりも登記上の持分割合が多かった
イ 実体と登記の比較 D X(原告) Y(被告) F G 実体(指定相続分) 12分の2 12分の7 12分の1 12分の1 12分の1 登記(法定相続分) 12分の4 12分の2 12分の2 12分の2 12分の2

う 訴訟(請求)の当事者

XはYに対して一部抹消(更正)登記手続を請求した
=登記上侵害している共有者の一部(D・F・G)を被告から除外した

え 裁判所の判断(抜粋)

ア 共同訴訟形態 自己の持分を登記上侵害されている共有者(共同相続人)が侵害している他の共有者(共同相続人)に対して妨害排除としての実質を有する一部抹消(更正)登記手続を請求する訴訟は、固有必要的共同訴訟ではない(他の共有者(共同相続人全員)を被告とする必要はない)
けだし、共同相続人間における相続財産の持分に関する紛争は、侵害された者と侵害している者との間の個別的な紛争解決が可能であるからである。
(参考)共有名義人が被告となる登記請求手続訴訟の共同訴訟形態を説明している記事
詳しくはこちら|共有名義人が被告である登記手続請求訴訟の共同訴訟形態の全体像
イ 是正する範囲 原告は、被告に対し、被告が原告の持分を登記上侵害している限度において妨害排除としての実質を有する一部抹消(更正)登記手続を請求することができる
※最高裁昭和60年11月29日
ウ 相続により登記義務を承継した共同相続人を被告とする登記手続請求訴訟の共同訴訟形態(参考) 当該判例は、『ア』とは別に、相続による登記義務の承継の場合の共同訴訟形態についても判断している
詳しくはこちら|相続による登記義務の承継(不可分性・共同訴訟形態)

お 補足説明

裁判所が認めた是正方法について
登記上の被告の共有持分を減らすという意味では、『一部抹消』ということになる
登記手続上の『一部抹消』という概念(必要的承諾型の更正登記)とは異なる

12 平成8年東京高裁(実体との重複があるが登記原因が異なる)

前記の元祖の判例は登記と実体が一致している部分については抹消を認めない(登記を維持する)というものでした。
ここで、登記と実体の一致は、単に共有持分だけで判断するものではありません。登記原因(やその日付)も含めて一致しているかどうかを判断します。
このケースでは、所有権(共有持分)については登記と実体に部分的な一致がありました。しかし、登記上の登記原因を見ると、登記と実体が一致していません。
そこで全部抹消を認めました。結果的に被告の有する共有持分に相当する登記も解消されることになりました。

平成8年東京高裁(実体との重複があるが登記原因が異なる)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記(贈与による単独所有) 不正な登記と実体の一致 完全になし(後記『お』) 第1判別 一致は完全になし→是正方法は全部抹消(抹消登記)となる 第2判別 (原告は)侵害あり→結論2=全部抹消(抹消登記)を請求できる(当然範囲の限定なし)

い 事案

不動産について
AからB(子)に贈与による所有権移転登記がなされた
これは実体のない不正な登記であった
Aが死亡した
Aの相続人B・Cが法定相続により承継した

う 実体と登記の異同の整理

所有権移転登記自体は無効である
ただし、実体上Bは共有持分権を有する
共有持分権の存在という意味では実体と登記が一致(重複)している
登記原因(原因日付)はまったく異なる

え 裁判所の判断

共有持分権に基づき、保存行為として、法律上無効な登記原因であり、真実の実体的権利関係の変動の過程を反映していない不実の本件登記について、その全部の抹消を請求することができる
抹消登記手続請求を認めた
※東京高裁平成8年5月30日
※東京地裁平成6年2月16日(同趣旨)
※東京高裁平成7年5月31日(同趣旨)
※最判平成11年3月9日(更正登記請求を否定した、参考)

お 更正登記の可否(補足)

更正登記により登記を実体に合致させたと仮定すると
相続前の登記原因日付において相続により所有権が移転したことになる
完全に理論的に成り立たない
=登記と実体が完全に一致しない
→更正登記による是正は不可能である
※能見善久ほか編『論点体系 判例民法2物権 第3版』第一法規2019年p360、361参照

13 平成17年最高裁(数次相続の中間省略登記)

これも、登記と実体が共有持分の範囲では一致しているというケースです。
しかし、この不正な登記は、数次相続の中間省略登記という特殊なものでした。
そのため、登記と実体が登記原因の点で一致していないことになります。
そこで、全部抹消を認めました。

平成17年最高裁(数次相続の中間省略登記)

あ 主要事項の整理

原告 侵害あり・被害者の全員 被告 実体上の権利あり(共有者) 不正な登記 所有権移転登記(数次相続による中間省略) 不正な登記と実体の一致 完全になし(後記『お』) 第1判別 一致は完全になし→是正方法は全部抹消(抹消登記)となる 第2判別 (原告は)侵害あり→結論2=全部抹消(抹消登記)を請求できる(当然範囲の限定なし) 法律構成 保存行為の指摘なし

い 相続の発生(事案)

Aが不動産を所有していた
Aが亡くなった
Aの相続人X(原告)・Bが承継した
Bが亡くなった
Bの相続人Y(被告)が承継した

う 実体上の権利の状態(事案)

A→X+B
B持分→Y
最終的状態=X+Yの共有

え 登記された内容(事案)

AからYに対して直接所有権移転登記がなされた
登記原因=A→B→Yという数次相続

お 裁判所の判断

Yには共有持分権がある
共有持分権の範囲では登記と実体が一致(重複)する
しかし数次相続登記のため登記と実体の同一性がない
更正登記ができない
→全部抹消(抹消登記手続請求)を認めた
※最高裁平成17年12月15日
※能見善久ほか編『論点体系 判例民法2 物権 第2版』第一法規2013年p343参照

本記事では、共有者が有する不正な登記名義の抹消を求めたケースの判例を紹介しました。
前述のように、判断の内容となる理論は複雑です。
実際に不正な登記に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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