1 物権共有+一部が遺産共有|事案
2 物権共有+一部が遺産共有|分割手続の種類
3 相続人グループの獲得財産
4 物権共有+一部が遺産共有|2重の入れ子
5 金銭保管義務×不合理性
6 『保管義務』に関連する規定

1 物権共有+一部が遺産共有|事案

遺産共有と物権共有で分割手続の種類が異なります。
詳しくはこちら|遺産共有/物権共有|基本・法的性質・分割手続の種類
実際には遺産共有と物権共有が混ざっているケースもあります。
本記事では一部に遺産共有が含まれる場合の扱いについて説明します。
まずは事案だけをまとめます。

<物権共有+一部が遺産共有|事案(※1)>

あ 事案・概要

一般的な共有=物権共有であった
その後,共有者の1名に相続が生じた
物権共有と遺産共有の両方が含まれる状態になった

い 具体的事案

共有者=A・B・C
Cが亡くなった
Cの相続人=C1・C2・C3

う 最終的共有者

共有者=A・B・C1・C2・C3
※最高裁平成25年11月29日

2 物権共有+一部が遺産共有|分割手続の種類

前記事案の分割手続の種類についてまとめます。

<物権共有+一部が遺産共有|分割手続の種類>

あ 事案

前記※1の事案を前提とする

い 分割手続の種類

『共有物分割』によるべきである
当事者は次の『う・え』のように扱う

う 元々の共有者

A・Bのことである

え 相続人グループ

C1・C2・C3を1グループとして扱う(後記※2)

3 相続人グループの獲得財産

相続人グループは一体として扱います。
具体的な内容をまとめます。

<相続人グループの獲得財産(※2)>

あ 獲得財産の扱い|基本

相続人グループが得た財産について
→相続人間で『遺産分割の対象』となる
→遺産分割により帰属が確定する
C1・C2・C3において遺産分割をすることになる

い 価格賠償金|保管義務(※3)

相続人グループが価格賠償金を得た場合
→賠償金の分配・金額は裁判所が指定できる
→受領者は金銭を保管する義務を負う
保管期限=遺産分割完了時まで
※最高裁平成25年11月29日

4 物権共有+一部が遺産共有|2重の入れ子

前記の判例の理論は,ちょっと複雑で理解しにくいです。
不動産の所有権全体を『2重の入れ子』と考えると分かりやすいです。

<物権共有+一部が遺産共有|2重の入れ子>

あ 物権共有

不動産全体がA・B・Cの3つの箱で分けられている
→これは『相続とは関係ない共有=物権共有』である
→『共有物分割』の対象となる

い 遺産共有

Cの箱の中には,小さい箱が3つ入っている
C1・C2・C3の3つ
→これは『相続による共有=遺産共有』である
→『遺産分割』の対象となる

5 金銭保管義務×不合理性

前記の判例では『金銭の保管義務』を課しています。
理論的な不合理性が指摘されています。
これについてまとめます。

<金銭保管義務×不合理性>

あ 批判対象

判例では相続人に金銭の保管義務を課している(前記※3)
次のような不合理性が指摘されている

い 保管義務の法的根拠が不明

制度・規定として似ている保管義務は存在する(後記※4)
しかしいずれも前記判例の保管義務には適用されない
結局判例の保管義務は法的根拠が不明である

う 債権の可分性との矛盾

相続財産の金銭債権は可分と解釈されている
価格賠償金の請求権は各相続人に分割承継される
詳しくはこちら|一般的金銭債権の相続(分割承継・相続分の適用・遺産分割の有無)
→遺産分割の対象ではないことになる
前記判例はこの理論と整合しない
※『月報司法書士2014年4月号』日本司法書士会連合会p64〜

え 平成28年判例変更の関係

預貯金債権の相続に関して判例が変更された
→これと比較すると保管義務(前記※3)は整合的である
詳しくはこちら|平成28年判例が預貯金を遺産分割の対象にした判例変更の理由

6 『保管義務』に関連する規定

実際に存在する『保管義務』の規定をまとめます。

<『保管義務』に関連する規定(※4)>

あ 相続人の保管義務

相続承認・相続放棄に関連して
相続人に保管義務が課されることがある
注意義務の程度=固有財産におけるのと同一の注意
『保管の対象物』についての明確な規定はない
※民法918条

い 財産管理人の保管義務

遺産分割審判事件に伴う保全処分として
財産管理人が選任されることがある
『審判前の保全処分』の1つである
遺産の管理をする制度である
※家事事件手続法201条1項
別項目;家事調停,審判では,事前に仮差押や仮処分ができる