1 建物賃貸借の更新拒絶・解約申入|正当事由が必要な場面
2 建物賃貸借|『正当事由』の内容の概要
3 建物賃貸借の終了|『正当事由』の具体的事情の整理
4 正当事由の中の『必要性』は最も重要な要素
5 正当事由の中の『従前の経緯・建物利用状況・現況』はサブ要素
6 正当事由の中の『財産上の給付』|具体例=明渡料や代替不動産
7 正当事由・明渡料|『補完』という性格

1 建物賃貸借の更新拒絶・解約申入|正当事由が必要な場面

建物賃貸借をオーナー側から終了させるアクションには『正当事由』が必要となります。
契約終了となるアクションの具体的な内容をまとめます。

<『正当事由』が必要な場面>

あ 『正当事由』が必要な場面

ア 更新拒絶
イ 解約申入
詳しくはこちら|建物賃貸借の中途解約と解約予告期間(解約権留保特約)
詳しくはこちら|期間の定めのない建物賃貸借の解約申入・解約予告期間
ウ 使用継続への『異議を述べる』

い 『正当事由』が欠ける場合の効果

更新拒絶・解約申入・異議が『無効』となる
→借家契約終了という効果が生じない

『正当事由』の内容の基本的事項については,以下説明します。

2 建物賃貸借|『正当事由』の内容の概要

『正当事由』は借地借家法にその内訳が記載されています。

<建物賃貸借終了の『正当事由』|条文の規定>

建物の使用を必要とする事情 メイン
建物の賃貸借に関する従前の経緯 サブ
建物の利用状況 サブ
建物の現況 サブ
財産上の給付 最後の補完

3 建物賃貸借の終了|『正当事由』の具体的事情の整理

条文上の『正当事由』の各項目について,さらに具体的な事情を整理します。

<建物の使用を必要とする事情;メイン>

あ 判断の方向性

当事者双方の使用の必要性を比較衡量する
転借人の使用の必要性も考慮に入れる(借地と異なる)
※借地借家法26条3項

い 具体的な事情

ア 居住の必要性
イ 営業の必要性
ウ 第三者の必要性
エ 建物売却の必要性
オ 借地の明渡の必要性
カ その他付随的事情

<建物の賃貸借に関する従前の経緯;サブ>

ア 賃貸借契約締結の経緯・事情
好意賃貸借・雇用関係・親族関係・友人関係・取引関係など
イ 賃貸借契約の内容
ウ 賃貸借契約期間中の借家人の債務履行状況
エ 賃料の額・改定の状況
オ 権利金等の一時金・各種承諾料の授受の有無・程度
カ 借家の経過期間
キ 更新の有無・内容
合意更新or法定更新,更新料支払の有無・額
ク その他信頼関係破壊事実の有無

<建物の利用状況;サブ>

ア 借家人にとって必要不可欠の利用か
イ 建物の種類・用途に則った利用がなされているか
ウ 建物の用法違反がないか
※理論的には『必要性』に包含される(後述)

<建物の現況;サブ>

ア 建物の経過年数・残存耐用年数
イ 建物の腐朽損傷の程度
ウ 大修繕の必要性の有無
エ 修繕費用
オ 当該地域における土地の標準的使用に適った建物であるかどうか

<財産上の給付;最終の補完>

ア 明渡料
イ 代替賃貸不動産の提供
ウ 『明渡猶予+対価の免除』の提供

4 正当事由の中の『必要性』は最も重要な要素

建物賃貸借終了における正当事由の中で『必要性』は重要です。
建物を使用することについて賃借人・賃貸人の必要性を考慮します。
これについて別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|建物賃貸借終了の正当事由のうち『必要性』

5 正当事由の中の『従前の経緯・建物利用状況・現況』はサブ要素

正当事由の内容のうち,最も重要なのは,前述の『建物使用の必要性』です。
『従前の経緯・建物利用状況・現況』については比重が軽く『サブ』と言える要素です。
これらについては別にまとめてあります。
詳しくはこちら|建物賃貸借終了の正当事由のうち『従前の経緯・建物の利用状況・現況』

6 正当事由の中の『財産上の給付』|具体例=明渡料や代替不動産

正当事由の最後に『財産上の給付』があります。
典型的なものは金銭です。
一般的に『明渡料』とか『立退料』と呼ばれています。
ただし,金銭だけとは限りません。

<財産上の給付|例>

ア 明渡料
イ 代替賃貸不動産の提供
ウ 『明渡猶予+対価の免除』の提供

7 正当事由・明渡料|『補完』という性格

明渡料は『正当事由の補完』という扱いです。

<明渡料の『正当事由』における位置付け>

明渡料は『補完』である
明渡料単体では正当事由にならない
※最高裁昭和46年11月25日

あくまでも他の事情で『正当事由がある程度充足された』ということが必須の前提なのです。
なお,明渡料の相場・算定については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|借家の明渡料|算定方法・相場|借家権価格・正当事由充足割合・営業補償

なお『借地』の明渡に関する正当事由は別に説明しています。
詳しくはこちら|借地の更新拒絶・終了における『正当事由』・4つの判断要素の整理