【弁護士会照会×三井住友銀行|全本支店一括調査→回答|弁護士会との協定】

1 SMBC|弁護士会照会に関する協定|概要
2 SMBC|弁護士会照会に関する協定|全本支店一括回答
3 SMBC×弁護士会照会|活用場面→少ない
4 SMBC×弁護士会照会|銀行の強烈な公共性
5 強い公共性から弁護士会による別扱い解消
6 調査の効率アップ→差押可能・容易化
7 調査の効率アップ→代替・類似サービス・マーケット縮小
8 差押の攻防|想定される現象・仮説
9 レガシーサービスの不都合性→新テクノロジー促進|シオナイト現象

1 SMBC|弁護士会照会に関する協定|概要

三井住友銀行が『弁護士会照会への回答』に関する運用方法を定めました。
弁護士会との協定としてルール化されたのです。
平成26年・平成27年7月からの運用ルールについて説明します。

<SMBC|弁護士会照会に関する協定|概要>

あ 協定概要|全店照会

『弁護士会照会×回答』のルールを明確化した
『全本支店』一括での調査を行う

い 協定当事者・運用開始時期

三井住友銀行(SMBC)と次の弁護士会

弁護士会 運用開始時期
大阪弁護士会 平成26年7月1日
第2東京弁護士会 平成27年7月1日
第1東京弁護士会 平成28年10月1日(※1)

※『自由と正義2015年1月』日本弁護士連合会p17〜

2 SMBC|弁護士会照会に関する協定|全本支店一括回答

『弁護士会照会に対するSMBCの回答』としてルール化された内容をまとめます。

<SMBC|弁護士会照会に関する協定|内容>

あ 協定に基づく照会への回答

ア 調査→回答範囲 全本支店のうち該当する口座情報
イ 回答項目 本支店名・預金種別・残高

い 回答する条件

開示請求者が『債務名義』を取得している場合
ただし『執行証書』は除く

う SMBCのディフェンスへの協力

回答したことを理由にSMBCが責任追及を受けた場合
例;預金者から損害賠償請求訴訟を提起された
→弁護士会は訴訟遂行に協力する
※『自由と正義2015年1月』日本弁護士連合会p17〜

債務名義,執行証書,弁護士会照会についての基本事項は別記事で説明しています。
関連コンテンツ|債務名義の種類|確定判決・和解調書・公正証書(執行証書)など
詳しくはこちら|弁護士会照会|基本|公的性格・調査対象・手続の流れ

従前は一般的に『銀行口座の管理は支店ごと』という扱いでした。
これは『差押における特定』として,判例が蓄積されているテーマと同じです。
詳しくはこちら|預貯金の差押|特定の趣旨・範囲|支店特定不要説|特定方式

3 SMBC×弁護士会照会|活用場面→少ない

SMBCの口座の情報を取得する実務的場面を説明します。
上記協定では前提条件が『債務名義がある』ということになっています。
この場合は,直接的に預金について債権差押の申立ができる状態です。

<預金の差押|手続概要>

あ 金融機関の回答

金融機関は対象預金の情報を回答する
差押を行った債権者は把握できる

い 回答事項|概要

ア 対象口座の有無イ 残高

要するに預金差押は『情報取得』を兼ねているのです。
そこで,債務名義がある時点で『弁護士会照会を行う』状況は通常は生じにくいです。

4 SMBC×弁護士会照会|銀行の強烈な公共性

SMBCの開示ルールは『第2東京弁護士会』との協定で決められました。
他の弁護士会経由での照会ではどうなるか,という問題があります。
この扱いは,銀行の本質的・社会的立場・存在意義と関係します。
そこで銀行の『公共性』について確認します。

<銀行の強烈な公共性>

あ 銀行法による趣旨

銀行は『公共性』が高い
※銀行法1条1項

い 極度に強固な免許制

現実的に,新規に免許を取得することが非常に困難である
→合法的参入規制が強烈である
=公的独占事業
※銀行法4条1項

日本では多くの業種が強い『法律による参入規制』の対象となっています。
銀行はその中でも特に強い保護が与えられた状態です。
関連コンテンツ|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト

5 強い公共性から弁護士会による別扱い解消

銀行には強い公共性があるので,弁護士会照会をする弁護士会によって異なる扱いをすることは不合理です。
そこで実際にこの弁護士会による別扱いは解消されつつあります。

<強い公共性から弁護士会による別扱い解消>

あ 基本的な考え方

同様の手続である以上『照会を行う弁護士会』による別扱いは不合理である
→他の弁護士会による照会でも同様の扱いが要請される

い 対応の統一化の動き

第一東京弁護士会からSMBCへの全店照会について
平成28年10月1日より応じるようになった(前記※1

う 他の金融機関への拡がり(参考)

第一東京弁護士会からみずほ銀行・みずほ信託銀行への全店照会について
平成29年1月4日より同様の扱いが開始された

6 調査の効率アップ→差押可能・容易化

SMBCの口座については,調査が非常に効率的になります。
これによる影響として,まずは『差押』の実現可能性アップが挙げられます。

<調査の効率アップ→差押可能・容易化>

あ 差押が可能・容易となる現象

債権者が『債務者のSMBC預金口座』を把握できる
→『差押の実現』につながる

い 既存の差押容易財産(参考)

ゆうちょ銀行の預金は『差押容易』である

詳しくはこちら|預貯金の差押における『特定』の範囲;まとめ

7 調査の効率アップ→代替・類似サービス・マーケット縮小

SMBCの口座調査が容易になることの影響は他にも考えられます。
『口座調査』の代替サービスや類似サービス・マーケットへの影響です。

<調査の効率アップ→代替・類似サービス・マーケット縮小>

あ 代替サービス|調査会社による調査

詳しくはこちら|調査会社・探偵・興信所|相手方の財産や住所の調査

い 代替サービス|財産開示手続

詳しくはこちら|裁判所による債務者の財産調査(財産開示手続の全体)

う 類似サービスによる非効率的利用→減少

当てずっぽう差押乱発作戦が減少・緩和される
関連コンテンツ|預貯金の差押における『特定』の範囲;まとめ

実務的な差押のシーンでは『債務者の預金口座が分からない』ということが多いです。
この場合『想定される銀行の支店』を当てずっぽうで設定して差押を申し立てる手法があるのです。
調査の効率が上がれば,このような『非効率な代替手法』を取る必要性が少なくなります。

8 差押の攻防|想定される現象・仮説

口座調査の効率アップの影響として,さらに想定される現象があります。
仮説をまとめます。

<差押の攻防|想定される現象・仮説>

あ 『差押を受けやすい』状態の回避

ア SMBC口座×差押容易化 顧客がSMBCへの預入を避ける現象
イ マイナンバー制導入×預貯金全般・差押容易化 顧客がレガシー金融機関への預入を避ける現象

い 差押不可財産の普及促進

ア 仮想通貨 例;ビットコイン
イ 信託(受益権)の活用

詳しくはこちら|預けた財産の権利の帰属と信託による倒産隔離の全体像
詳しくはこちら|現行法の差押・破産・再生での仮想通貨の扱い(差押ヘイブン)
関連コンテンツ|ビットコイン『返還請求権』の差押|基本|ウォレットを預貯金と同じ方式で差押
詳しくはこちら|ウォレット内ビットコインの差押|SPVクライアント型は可能性あり

9 レガシーサービスの不都合性→新テクノロジー促進|シオナイト現象

銀行預金の特徴が仮想通貨を後押しする現象に着目します。
このような現象は多くのイノベーションで構造的・普遍的に生じるものです。

<シオナイト現象(に類似する現象)>

あ 預金の制度が仮想通貨を促進する現象

レガシーな銀行預金の不都合・不便性
→仮想通貨の普及を促進する

い 普遍的法則|シオナイト現象

『レガシーサービス』の不都合性
→『新テクノロジー』の普及を促進する
→サービスのリプレイスにつながる

う 注意;純粋シオナイト現象ではない

本来の『シオナイト現象』は要因が『法規制による不都合性』である
→預金のリプレイス現状(『あ』)にはこの点が該当しない

関連コンテンツ|ネオ・ラッダイト討伐|3権・テクノロジー・グレーゾーン=ベンチャーの聖域

<参考情報>

2弁フロンティア15年7月号
外部サイト|第2東京弁護士会|二弁フロンティア

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