1 共有者間の占有強奪×明渡請求→肯定
2 共有物の『変更』×原状回復請求→肯定|基本
3 単独占有・農地の宅地化×原状回復請求→肯定
4 単独占有・建物建築×明渡請求→否定
5 共有物の使用妨害×妨害排除請求→肯定

1 共有者間の占有強奪×明渡請求→肯定

共有者の1人が共有不動産を占有するケースは多いです。
この場合に共有者間での明渡請求は通常否定されます。
詳しくはこちら|共有者自身の1人による使用|基本|原則・例外=相続・内縁関係
しかし,特殊事情があると明渡請求が認められます。
判例における特殊事情を認めた事例を紹介します。

<共有者間の占有強奪×明渡請求→肯定>

あ 長年の単独占有

不動産をA・Bで共有していた
長年,Aが平穏に建物を占有していた

い 実力行使的な強奪

Bが『実力で排除するに等しい方法』で占有を取得した
例;強い反対を押し切って強引に入居した

う 明渡請求

Bの行為は共有持分権の濫用である
→Aによる明渡請求を認めた
※仙台高裁平成4年1月27

2 共有物の『変更』×原状回復請求→肯定|基本

共有物の『変更』行為という概念があります。
文字どおり対象物を大規模に変えてしまうという意味です。
共有者の一部が無断で行ってしまうケースもあります。
この場合の,他の共有者の対応に関する判断をまとめます。

<共有物の『変更』×原状回復請求→肯定|基本>

あ 共有物の変更→原状回復請求

一部の共有者が無断で共有物を『変更』した場合
→他の共有者は次の請求をすることができる
ア 『行為の全部』の差止請求
イ 原状回復請求
※最高裁平成10年3月24日

い 『変更』行為|例|概要

ア 物理的な損傷を生じる行為
イ 土地への土盛り工事
ウ 建物の建築
建築中と建築完了後で扱いの方向性が異なる(※1,※2)
詳しくはこちら|共有物|『変更』『処分』行為

3 単独占有・農地の宅地化×原状回復請求→肯定

共有の土地に共有者の1人が建物を建築するケースがあります。
他の共有者の同意がない場合は熾烈な利害対立が生じます。
他の共有者は差止・原状回復を請求します。
この請求についての判例の判断をまとめます。

<単独占有・農地の宅地化×原状回復請求→肯定(※1)>

あ 事案

農地をA・Bで共有していた
Bが無断で『非農地化』の施工をした
その上で土地上に建物を建築しようとしている
AはBに対して『原状回復』を請求した

い 原状回復請求

『農地の非農地化』は重大な事実行為である
→共有物の変更に該当する
→土地の使用収益権を侵害する結果を招く
→Aの原状回復請求を認める

う 正確な判断内容

原審=妨害排除請求を排斥した
→これは法令解釈の誤りであると判断した
※最高裁平成10年3月24日

4 単独占有・建物建築×明渡請求→否定

前記と似ている他の判例があります。
共有の土地上に建物を建築したというものです。
結論として明渡請求が認められていません。

<単独占有・建物建築×明渡請求→否定(※2)>

あ 単独占有・建物建築

土地をA・Bで共有していた
Bが土地上に建物を建築した
=占有している

い 建物収去・土地明渡請求→否定

Aが建物収去+土地明渡を請求した
→裁判所は認めなかった

う 金銭請求→肯定

AからBに対する金銭請求は認めた
内容=持分割合に応じた地代相当の損害金
※最高裁平成12年4月7日

このように前記※1の判例とは結論が逆になっています。
事案の大きな違いは『建築途中か完了後か』というところです。
このことで判断が分かれたと考えられます。
もちろん,他の事情でも違いはいろいろとあります。
一般化しても再現可能性はあまり高くはないと思います。

5 共有物の使用妨害×妨害排除請求→肯定

共有者の『占有』以外での『妨害』もあり得ます。
共同通路の通行を物理的に妨害したケースを紹介します。

<共有物の使用妨害×妨害排除請求→肯定>

あ 共同通路

通路がA・Bの共有となっていた
A・Bが共同で通行のために使用していた

い 妨害禁止請求

BがAの通行を妨害している
今後も妨害するおそれがある
→裁判所はBに対して妨害禁止を命じた

う 枝切除請求

Aの竹木の枝が通路に侵入=越境していた
→枝を切除する請求が認められた
※横浜地裁平成3年9月12日

積極的な妨害行為は違法性が高いと言えます。
そこで妨害禁止・排除の請求が認められるのです。