1 不動産の『評価額』で『見解対立=トラブル発生』ということが多い
2 不動産の評価・算定の種類|不動産自体の評価額→地代・更新料・承諾料・明渡料
3 『土地の評価額』→官庁同士の利権争いの見本市
4 土地の評価額|『1物5価(4価)』の全体像
5 土地評価額|『実勢価格』は厳密的には『時価』と異なる
6 土地評価額|実勢価格の算定・評価方法|不動産鑑定評価基準
7 売買市場における各種『価格』|査定価格・売出価格・成約価格(参考)
8 土地の評価|公的評価だけで4種類がある

本記事では土地の評価額算定の基本的事項を説明します。
4種類の公的な評価額については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|土地評価額|公的評価=公示価格・基準地価・路線価・固定資産評価|1物5価(4価)

1 不動産の『評価額』で『見解対立=トラブル発生』ということが多い

不動産に関しては,当事者間で『評価』が大きく食い違う,ということがよく生じます。
逆に,トラブルの原因が『評価額』ということは非常に多いのです。
当然,トラブルの有利な解決として役立つ『必須の前提』と言えます。
しかし不動産を扱う弁護士の中にも,しっかりと理解していない人がいるようです。
本記事では不動産の『評価(額)』の基本部分についてまとめます。

2 不動産の評価・算定の種類|不動産自体の評価額→地代・更新料・承諾料・明渡料

(1)不動産自体の評価額

不動産の『評価』としてはまず『評価額』つまり『純粋な価値』があります。

<不動産に関する根本的な『評価』>

あ 不動産の評価額

ア 土地の評価額=『更地評価』
イ 建物の評価額→『建物買取請求権』の行使時など

い 借地権価格

『更地価格』の一部(一定割合)という考え方

(2)派生的な金額算定|地代・賃料・更新料・承諾料・明渡料

不動産自体の評価額,以外にも『金額で対立する』というものは多いです。
評価額以外の『金額の評価』の種類を整理しておきます。

<不動産の評価から派生する『金額の評価』>

あ 地代・賃料

ア 土地の地代・賃料の金額
イ 建物賃貸借の賃料額

い 更新料
う 承諾料

借地上の建物の増改築・再築などの対価

え 明渡料

3 『土地の評価額』→官庁同士の利権争いの見本市

『土地の評価額』は,価値が大きく,また借地関係など『算定の元』となることも多いです。
以下『土地の評価額』について詳しく説明します。
民間でも利害が大きく衝突するだけではありません。
『官庁同士の利権争い』の見本のような感じにもなっています。
土地の評価額という同一概念に対して5つの金額が付くのです。
『1物5価』という業界用語化により『不合理』『不便』という批判をかわしたような錯覚が醸しだされています。

4 土地の評価額|『1物5価(4価)』の全体像

(1)1物5価(4価)の内容

『1物5価』の『5つ』は何か,をまとめます。

<土地の評価額『1物5価(4価)』|全体像>

あ 実勢価格

実際に取り引き(売買)される価格

い 公示地価
う 基準地価

これを除外して『4価』という整理もある

え 路線価(相続税評価)
お 固定資産評価

(2)土地の『公的評価』のまとめ

土地の評価額のうち『実勢価格』以外,つまり『公的』な評価額を整理します。

<土地の評価額のうち『公的評価』>

種類 公示地価 基準地価 路線価(相続税評価) 固定資産評価
根拠(法律) 地価公示法 国土利用計画法 相続税法 地方税法(固定資産評価基準)
実施機関 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村
実勢価格との比率 90% 90% 70〜80% 60〜70%
基準時点 毎年1月1日 毎年7月1日 毎年1月1日 (毎年)1月1日
公表時期 毎年3月下旬頃 毎年10月上旬頃 毎年8月上旬 3年ごとの4月上旬
方式 特定の標準地 特定の基準地 路線価方式・倍率方式 不動産ごとに算定

それぞれの内容については後述します。

5 土地評価額|『実勢価格』は厳密的には『時価』と異なる

(1)実勢価格|厳密な意味

土地の評価額のうち『実勢価格』について説明します。

<『実勢価格』|厳密な意味>

あ 『実勢価格』の意味

実際に取引がなされる金額
『正常な価格=時価』とは同一ではない(後述)

い 『正常な価格=時価』との違い

『個別事情の影響』を含む
《個別事情の例》

売主・買主の思惑・事情 異常値(ブレ)
『売り急ぎ』 低くなる方向
『買い進み』 高くなる方向

一般的には『実勢価格』と『時価』は同じ意味の言葉として使われています。
日常用語としては特に問題は生じないでしょう。
ただし,厳密な意味では違いがあります。

(2)『時価』の厳密な意味

法律上の『時価』と『実勢価格』とはちょっと異なります。

<『時価』|厳密な定義>

あ 『実勢価格』との違い

『個別要素』を反映していない

い 『時価』と同一の意味の用語

ア 法律上の『正常な価格』
イ 『公示価格』(後述)
ウ 『基準価格』(後述)

(3)中古マーケット×『実勢価格』→ブレが大きい

中古物件の流通では実勢価格,つまり相場が曖昧な傾向にあります。
実際の成約価格が理論的な推定値よりもブレることが多いのです。
これは流通業界の構造的な事情が原因となっています。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|不動産流通業界の基礎知識|3つの『価格』|買取業者・下取業者の活用

6 土地評価額|実勢価格の算定・評価方法|不動産鑑定評価基準

(1)実勢価格の算定・評価|不動産鑑定評価基準

『実勢価格』は本来『公的な基準で算定される』ものではありません。
とは言っても,裁判所が『不動産鑑定士』に『評価』を発注することもあります。
不動産鑑定士は不動産鑑定評価基準により算定・評価します。
その内容は複雑です。
ここでは,ベースとなる『評価方法』をまとめておきます。

<『実勢価格』の算定・評価方法>

ア 取引事例比較法
イ 原価法(積算法)
ウ 収益還元法

(2)実勢価格の算定は『公示価格・基準地価格』を規準とする

不動産鑑定評価基準では土地の評価について細かい基準が定められています。
前述の『算定方法』とは別に『規準』,つまり参考とすべき『他の評価額』も規定されています。

<土地の鑑定評価額(正常価格)の『規準』>

地価公示法2条1項の土地計画区域の場合

あ 原則

『公示価格を規準』とする

い 例外

公示価格がない場合
→『基準地価格』を規準とする
※藤田耕三ほか『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p733

7 売買市場における各種『価格』|査定価格・売出価格・成約価格(参考)

不動産の売買(取引)の中ではプロセスによって3つの『価格』が登場します。
『評価の方法』とは違います。
混同・誤解が多いので整理しておきます。

<不動産売買のプロセスにおける『価格』>

ア 査定価格
イ 売出価格
ウ 成約価格

この中では『成約価格』が『実勢価格』の評価で直接使う金額となります。
詳しくはこちら|不動産流通業界の基礎知識|3つの『価格』|干す→値こなし→囲い込み→両手実現

8 土地の評価|公的評価だけで4種類がある

土地の評価のうち,公的なものだけで4種類があります(前述)。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|土地評価額|公的評価=公示価格・基準地価・路線価・固定資産評価|1物5価(4価)