1 土地評価額|公示価格(公示地価)|概要と趣旨
2 土地評価額|公示価格(公示地価)|由来=公的・ベーシックな参考値
3 土地評価額|公示価格|実勢価格との乖離→収束の歴史
4 土地評価額|基準地価(都道府県基準地標準価格)
5 土地評価額|相続税評価額(路線価)|概要
6 土地評価額|実勢価格と相続税評価の『差』→相続税対策へ
7 土地評価額|固定資産評価額
8 土地評価額|固定資産評価額|『課税標準額』と『評価額』は違う
9 固定資産評価額|『流用』される場面が多い
10 公的評価額の調査で使うサイト
本記事では4種類の公的な評価額について説明します。
土地の評価額算定の基本的事項・1物5価(4価)の全体像については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|土地の評価額の基本|実勢価格・時価・不動産鑑定評価|他の金額算定で使われる
1 土地評価額|公示価格(公示地価)|概要と趣旨
土地の『公的な』評価額の中で,最も代表的・ベーシックなものが『公示価格』です。
<公示価格(公示地価)|概要>
あ 定義
地価公示法に基づいて,国土交通省が毎年公表する価格
い 性質
法律上の『正常な価格』=『時価』と同じ
う 目安
実勢価格の90%
<公示価格|趣旨>
あ 根本的目的
適正な地価の形成に寄与する
い 具体的目的の例示
土地取引一般の価格の指標を提供する
公共事業用地についての『適正な補償金』算定資料を提供する
※地価公示法1条
う 結果的な『利用』
他の公的な『土地の評価』の中で用いる
2 土地評価額|公示価格(公示地価)|由来=公的・ベーシックな参考値
公示価格についてはその由来を考えると『位置付け』がよく分かります。
<公示価格の由来>
あ 発祥
もともと公共事業用地の取得価格算定の規準として誕生した
い 民間への転用
一般の土地の取引価格の検討において参考にされるようになった
→『取引の指標』としての客観的・公的な『基準値』という性格を持ってきた
う 官官転用
相続税評価・固定資産評価などの『公的評価』一般で参照される
え 現在の『公示価格』の性格
公的な基準のうち『最もベーシック』なものという位置付け
3 土地評価額|公示価格|実勢価格との乖離→収束の歴史
『公示価格』は『実勢価格』と同じように動くことが想定されています(前述)。
しかし,実際には,公示価格制度が始まった後『想定外』の経済状況の変化が生じます。
いわゆる『不動産バブル経済』です。
これにより『同一という前提』に歪みが現れます。
その後の『戻り』も含めて『歴史』の全体像をまとめます。
<実勢価格と公示価格の食い違い|変遷>
あ 昭和49年|国会答弁より
ア 議員
『市場相場(実勢価格)の7〜8割程度を政策的な目標とすることの要望』
イ 内田経済企画庁長官
『ご趣旨に沿って検討したい』
※河野正三『国土利用計画法』p32
い 平成3年頃
異常事態が発生した
『公示価格・基準地価格』は『過去の相場の影響』を受けていた
しかし,相場は下落していた
その結果『公示価格がいわゆる正常価格を上回る』状態となっていた
※浅生『地価下落時における最低売却価額』金法1311号p6
4 土地評価額|基準地価(都道府県基準地標準価格)
土地の評価額のうち公的な基準として『基準地価』があります。
<基準地価(都道府県基準地価標準価格)|概要>
あ 定義
国土利用計画法に基づいて,都道府県知事が毎年公表する価格
※国土利用計画法施行令9条
い 性質
法律上の『正常な価格』=『時価』と同じ
『公示地価』と同質である
→大雑把な位置付け=『評価実施機関・時期だけが違う』
う 目安
実勢価格の90%
え 『5価』or『4価』
基準地価を含めると公的な評価額は4種類となる(実勢価格を含めて5種類=5価)
基準地価を含めないと公的な評価額は3種類となる(実勢価格を含めて4種類=4価)
実務では1物5価や1物4価ということがある
お 名称
法律上の正式名称 | 都道府県地価調査(価格) |
実務上の俗称 | 基準地価 |
性質としては『公示価格と同じ』という位置付けです。
5 土地評価額|相続税評価額(路線価)|概要
土地の評価額でよく登場するのが『路線価』です
正式には『相続税評価(額)』のことです。
<路線価(相続税評価額)|概要>
あ 定義
国税庁が毎年発表する,相続税・贈与税算定専用の基準額
具体的な内容は『2つの方式』による
い 路線価方式
主要な市街地の路線
→路線に『単価』を設定する
う 倍率方式
『路線価』の設定されていない地域
→『固定資産評価額』に『一定倍率』をかける
この『一定倍率』を地域ごとに設定する
え 目安
公示地価の80%
6 土地評価額|実勢価格と相続税評価の『差』→相続税対策へ
<実勢価格と相続税評価の『差』が産み出すもの>
あ 『国民の権利』視点
金銭を不動産に換えることによる『相続税節税効果』
=相続税評価額として20〜30%の減額(圧縮)効果
い 『ビジネス・社会経済』視点
『税理士+不動産仲介業者』によるセールスの一環
→弁護士も加わることもある
※『セールス』は『見かけ上の現象』である
→本来は 『顧客への価値提供(の提案)』である
7 土地評価額|固定資産評価額
(1)固定資産評価額の概要
不動産の評価額で『固定資産評価』は法律実務上,使用頻度が高いです。
<固定資産評価額|概要>
あ 定義
固定資産税算定専用の基準額
※地方税法388条1項
い 目安
公示地価の70%
う ネーミング
ア 法律上の記載
『固定資産の評価』
イ 一般的呼称
呼称 | 流派 |
『固定資産評価(額)』 | 格式的 |
『固定資産税評価(額)』 | 実務的 |
え 固定資産評価額を調べるサイト
公式表現では,通常『税』が入っていません。
ただ『固定資産税算定のために使う評価額』という趣旨ものです。
実務上,広く『固定資産税評価(額)』という語法も普及しています。
8 土地評価額|固定資産評価額|『課税標準額』と『評価額』は違う
以上のように,固定資産評価額は,固定資産税の金額を算定するために使われます。ところで,固定資産税の金額の算定では,課税標準額というものが出てきます。これは,固定資産評価額と同じというわけではありません。注意が必要です。
<『課税標準額』と『評価額』の混同=誤解に注意>
あ 『固定資産税の納付通知書』
不動産所有者に毎年春頃送付されてくる
い 『納付通知書の記載』
『課税標準額』が記載されている
→『固定資産評価額』とは違う
これを混同=誤解することが多いので注意
9 固定資産評価額|『流用』される場面が多い
『固定資産税評価』は,本来『固定資産税』専用のはずです。
しかし『事務的な算定』で広く使われるようになっています。
<固定資産評価額が『流用』される場面>
・固定資産税の算定
・不動産取得税の算定
・提訴時の手数料(貼付印紙額)の算定
・登記申請時の登録免許税額算定
※土地・建物で共通である
このように『流用』が多くなっているので,逆に『取引での価格=実勢価格』との混同・誤解も生じやすいです。
不動産の固定資産税については別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|固定資産評価は1月1日時点で算定され,3年に1回評価替えがある
10 公的評価額の調査で使うサイト
実務上『公示地価』や『相続税評価額(路線価)』を調べることは多いです。
調査の際によく使うサイトを紹介しておきます。
外部サイト|国土交通省|土地総合情報ライブラリー|土地の価格
外部サイト|国税庁|路線価図・評価倍率表
本記事では,4種類の土地の公的な評価額について説明しました。
実際には,いろいろな手続の中でこのような評価額が使われています。
土地の評価額に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。