1 相続放棄の申述の家裁の手続と審判の効果
2 相続放棄の申述の審判に関する基本的規定
3 相続放棄の申述書の記載内容
4 相続放棄の申述の審判の効果
5 相続放棄の手続の規定は審査の内容や程度の解釈につながる

1 相続放棄の申述の家裁の手続と審判の効果

相続人は,相続放棄によって,相続人ではない扱いを受けることができます。
詳しくはこちら|相続放棄により相続人ではない扱いとなる(相続放棄の全体像)
実際に相続放棄をするには,家庭裁判所の手続が必要です。
相続放棄の申述の審判という手続です。
本記事では,この家裁の手続について説明します。

2 相続放棄の申述の審判に関する基本的規定

相続放棄の申述の手続の種類は別表第1事件として分類されます。
要するに敵対する当事者が存在しないカテゴリです。
裁判所の判断結果(審判)に不服がある当事者は即時抗告をすることができます。

<相続放棄の申述の審判に関する基本的規定>

あ 審判の種類の分類

別表第1事件として分類されている
詳しくはこちら|家事調停・審判の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

い 不服申立

申述却下の審判に対して即時抗告をすることができる
※家事事件手続法201条9項

3 相続放棄の申述書の記載内容

相続放棄の申述の申立の際には,一定の事項を書面(申述書)に記載して提出する必要があります。

<相続放棄の申述書の記載内容>

あ 当事者・法定代理人
い 相続の放棄をする旨

※家事事件手続法201条5項

う 被相続人の氏名・最後の住所
え 被相続人との続柄
お 相続開始があったことを知った年月日

※家事事件手続規則105条1項

4 相続放棄の申述の審判の効果

裁判所の審理の結果,相続放棄の申述を受理する審判となった時の法的な効果は少し複雑です。
後から別の裁判で改めて審査・判断することが想定されているのです。

<相続放棄の申述の審判の効果>

あ 既判力

相続放棄の申述受理の審判について
既判力は生じない
後日の民事訴訟における相続放棄の有効性の判断を拘束しない
※最高裁昭和29年12月24日

い 現実的な効果

相続放棄の申述を受理する審判がなされたとしても
相続放棄が実体要件を備えていることが確定されるものではない

う 別の訴訟の審理との関係

相続放棄の有効性について
別の民事訴訟で審理・判断することができる
※東京高裁平成22年8月10日
※遠藤隆幸『相続放棄申述受理審判における熟慮期間の審査とその程度』/『金融・商事判例1436号』2014年3月p76
※松田享『相続放棄・限定承認をめぐる諸問題』新日本法規出版p400
※『月報司法書士2015年2月』日本司法書士会連合会p87〜

5 相続放棄の手続の規定は審査の内容や程度の解釈につながる

相続放棄の申述の審判については,法的性質や審査の内容や程度についての解釈論があります。
前記のように,家裁の審判ですから,当然,家庭裁判所が一定の審査と判断をします。
申述書の記載事項からも,熟慮期間などの判断をすることが想定されていることが分かります。
一方,審判の効果として,相続放棄の効力が確定するわけではありません。
そこで,審理の内容や程度はある程度粗い(低い)と解釈されているのです。
詳しい解釈論は別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|相続放棄申述の審理での家裁の審査の程度は低い(明白性基準)