1 内縁の夫婦の一方の死亡の際の共有不動産の使用貸借関係
2 不動産を共有する内縁の夫婦の一方の死亡の事案内容
3 不動産を共有する内縁の夫婦の一方の死亡の際の法的扱い
4 同居する親子のうち親が死亡した後の共有不動産の扱い(参考)
5 内縁の夫婦の一方の死亡と同居親子のうち親の死亡の比較
6 内縁の夫婦の一方の死亡の後の共有物分割
7 夫婦間の共有物分割(概要)

1 内縁の夫婦の一方の死亡の際の共有不動産の使用貸借関係

内縁の夫婦が資金を出し合って住居を購入するケースでは,通常夫婦の共有としています。このような状態で夫(または妻)が死亡すると,夫の相続人内縁の妻の共有という状態になります。夫の相続人が妻に対して明渡や金銭の請求をした場合の扱いが問題となります。本記事ではこれを説明します。

2 不動産を共有する内縁の夫婦の一方の死亡の事案内容

判例となった事案の内容を整理します。

<不動産を共有する内縁の夫婦の一方の死亡の事案内容(※1)>

あ 不動産の権利関係

男性A・女性Bは内縁関係にあった
A・Bは不動産(土地・建物)を2分の1ずつの持分で共有していた
A・Bは不動産を,居住と楽器指導盤の製造販売業のために共同で使用していた

い 相続開始

約13年後,Aが亡くなった
A持分をAの相続人Cが承継した

う 相続後の権利関係

住居はC・Bの共有となった
住居はBが単独で占有している

え 損害金請求

CはBに対し,不動産の賃料相当額の2分の1の損害金を請求した
※最高裁平成10年2月26日

3 不動産を共有する内縁の夫婦の一方の死亡の際の法的扱い

一般的に共有者には占有権原があります。
そこで明渡請求は認められません。
一方『損害金請求』は通常認められるはずです。
しかし特殊事情を反映した判断がなされます。

<不動産を共有する内縁の夫婦の一方の死亡の際の法的扱い>

あ 内縁の夫婦間の合意の認定

内縁の夫婦が,共有する不動産を居住または共同事業のために共同で使用してきた場合
特段の事情のない限り,両者の間において,その一方が死亡した後は他方が不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認できる

い 結論

Bは退去する義務はない
BはCに使用対価を支払う義務はない
※最高裁平成10年2月26日

4 同居する親子のうち親が死亡した後の共有不動産の扱い(参考)

参考として類似する事例の概要を紹介します。
『内縁の夫婦』ではなく『親子』という関係が背景にあります。

<同居する親子のうち親が死亡した後の共有不動産の扱い(参考・※2)>

あ 事案

親Aと子Bが建物に同居していた
Aが亡くなった
相続人=子はB・Cであった
建物はB・Cが共有する状態となった

い 裁判所の判断|概要

一定期間はBが無償で単独使用できる
※最高裁平成8年12月17日
詳しくはこちら|共有者の1人が不動産を占有→明渡請求・賃料相当額の請求

『無償で居住できる』という結果は内縁の事例と同じです。

5 内縁の夫婦の一方の死亡と同居親子のうち親の死亡の比較

上記の参考事例と内縁の夫婦の事案内容と法的判断は似ています。共通点・違いを整理します。

<内縁の夫婦の一方の死亡と同居親子のうち親の死亡の比較>

あ 比較

内縁・親子の事例を比較する(上記※1,※2)
次のような共通点・違いがある

い 共通点

ア 相続後・共有状態
居住者が共有持分を有する状態となった
イ 無償使用
居住者は無償で単独使用することが認められた

う 違い|相続前の状況

ア 内縁の事例(上記※1)
相続前に妻が共有持分を有していた
イ 親子の事例(上記※2)
相続前に子は共有持分を有していなかった

え 違い|裁判所の判断

ア 内縁の事例(上記※1)
無償での使用の『期限』は設定されなかった
イ 親子の事例(上記※2)
無償での使用の『期限』が設定された

6 内縁の夫婦の一方の死亡の後の共有物分割

内縁の夫婦の死別のケースに戻ります。
裁判所は無償の居住を認め,救済しました。

<内縁の夫婦の一方の死亡の後の共有物分割>

あ 前提事情=共有状態

建物が次の者の共有となった
ア 元内縁の妻B
イ 内縁の夫Aの相続人C

い リスク=共有物分割

Cは共有物分割を請求できる
Bから請求することも可能である

7 夫婦間の共有物分割(概要)

前記の事例においてBは救済されましたが,共有者Cが共有物分割請求を行うことによって,Bは居住できなくなる可能性があります。
前記の判例は,使用貸借を認めましたが,共有物分割請求を否定しているわけではありません。共有物分割では,いろいろな結果がありえますが,Cが居住できなくなる結果となることもあります。共有物分割については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|共有物分割の手続の基本(手続の種類・当事者の特定など)

本記事では,内縁の夫婦の一方が亡くなった時に共有の住居に使用貸借の関係を認める扱いについて説明しました。
実際には個別的な事情によって結論は違ってきます。
実際に内縁の夫婦が共有する(していた)住居に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。