1 内縁の夫婦の死別×共有の住居|事例
2 内縁の夫婦の死別×共有の住居|判断
3 類似事例|同居の親子→子が相続|概要
4 類似事例との比較
5 夫の相続人・内縁者×共有物分割

1 内縁の夫婦の死別×共有の住居|事例

内縁の夫婦間で共同で住居を購入するケースは多いです。
通常夫婦の共有となっています。
このような状態で夫が死亡するとちょっと面倒なことになります。
『夫の相続人』と『内縁の妻』の共有という状態になるのです。
判例となった事案を紹介します。

<内縁の夫婦の死別×共有の住居|事例(※1)>

あ 建物|共有

内縁の夫Aと妻Bが建物を共有していた
A・Bは建物を居住・事業のために使用していた

い 相続

Aが亡くなった
A持分をAの相続人Cが承継した

う 権利関係

住居はC・Bの共有となった
住居はBが単独で占有している

え 損害金請求

CがBに対して損害金請求の提訴をした
※最高裁平成10年2月26日

一般的に共有者には占有権原があります。
そこで明渡請求は認められません。
一方『損害金請求』は通常認められるはずです。
しかし特殊事情を反映した判断がなされます。

2 内縁の夫婦の死別×共有の住居|判断

上記事案について裁判所の判断内容をまとめます。

<内縁の夫婦の死別×共有の住居|判断>

あ 共有者間の合意

内縁の夫婦間で『無償で相互に使用させる』合意があった
→『共有物の使用方法の意思決定』として扱われる
※民法252条
別項目;共有物;使用方法;典型例

い 合意の承継

この合意は『夫の相続人』に対しても効力を持つ
→相続は包括承継なので『合意』も承継する

う 栽培書の判断|結論

Bは退去する義務はない
BはCに使用対価を支払う義務はない
※最高裁平成10年2月26日

3 類似事例|同居の親子→子が相続|概要

参考として類似する事例の概要を紹介します。
『内縁の夫婦』ではなく『親子』という関係が背景にあります。

<類似事例|同居の親子→子が相続|概要(※2)>

あ 事案

親Aと子Bが建物に同居していた
Aが亡くなった
相続人=子はB・Cであった
建物はB・Cが共有する状態となった

い 裁判所の判断|概要

一定期間はBが無償で単独使用できる
※最高裁平成8年12月17日
詳しくはこちら|共有者の1人が不動産を占有→明渡請求・賃料相当額の請求

『無償で居住できる』という結果は内縁の事例と同じです。

4 類似事例との比較

上記の類似事例と『内縁の夫婦』の事例は似ています。
共通点・違いを整理します。

<類似事例との比較>

あ 比較

内縁・親子の事例を比較する(上記※1,※2)
次のような共通点・違いがある

い 共通点

ア 相続後・共有状態
居住者が共有持分を有する状態となった
イ 無償使用
居住者は無償で単独使用することが認められた

う 違い|相続前の状況

ア 内縁の事例(上記※1)
相続前に妻が共有持分を有していた
イ 親子の事例(上記※2)
相続前に子は共有持分を有していなかった

え 違い|裁判所の判断

ア 内縁の事例(上記※1)
無償での使用の『期限』は設定されなかった
イ 親子の事例(上記※2)
無償での使用の『期限』が設定された

5 夫の相続人・内縁者×共有物分割

内縁の夫婦の死別のケースに戻ります。
裁判所は『無償の居住』を認め,救済しました。
しかし,まだ危機は残っています。

<夫の相続人・内縁者×共有物分割>

あ 前提事情=共有状態

建物が次の者の共有となった
ア 元内縁の妻B
イ 内縁の夫Aの相続人C

い リスク=共有物分割

Cは共有物分割を請求できる
Bから請求することも可能である

共有物分割によって,Bは居住できなくなる可能性があります。
共有物分割までは阻止できないのです。
共有物分割となっても,Cの権利は保護されます。
不動産を取得する可能性もあります。
取得できないとしても一定の対価を得ることになります。
共有物分割については別に説明しています。
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